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カスタマーサクセス的な業務を実践するコールセンター事例(1)

月刊コールセンタージャパンは、コールセンターやCRM実践のための専門誌という位置づけなんですが、2022年の冬から「カスタマーサクセス」に特化した新コーナー「CSMedia」を開始しています

僕はコーナーの担当者じゃないんで取材経験も限定的なんですが、それでも話を聞いたり記事書いたり読んだりしてて、ずーっと感じていた違和感があります。それは、「この目的のための取り組み、昔、書いたことあるよな」という既視感でした。

カスタマーサクセスの目的は、「顧客の成功」だと思いますが、そのプロセスとしてオンボーディングにおける定着(アダプション)、離反(チャーン)抑止、そして拡大・継続利用(エクスパンション)という取り組みですよね?これ、ことごとく実践しているコールセンター(カスタマーサポート部門)がすでに存在しています。コールセンターは、たしかに受け身という性格の印象が強い組織ですが、一部では10年以上前から、こうしたミッションをセンターに課しています。さらにいうと、カスタマーサクセスの皆さまが最も重視しているはずの「顧客理解」についても同様です。

カスタマーサクセス部門の設置企業は、主に「BtoBのサブスク」という、比較的新しいビジネスモデルで、しかもスタートアップがむっちゃ多いので、あんまり過去事例が認識されていないのも無理ないんですが、客観的に見ると、「これ、もっと効率的に実施している事例とか手法があったな」みたいな感想を持つことが少なくないです。
とくに、これから先のカスタマーサクセス市場拡大のカギを握るのは、「Non-SaaSの業種、とくにBtoCでの導入」というベンダーさんや識者さんが多いのですが、ならなおさらですよね。すでに実践されていて、成功、あるいは失敗事例から学ぶ、取り入れる、連携する価値は高いのでは、と思う次第です。

ということで、今回から2〜3回に分けて、「カスタマーサクセス的な取り組みをしているコールセンター事例」を紹介します。ちなみに誌面ほど詳しくは書きません。というか、書けません^^;

まず、アダプションに関する事例です。
ある大手のクレジットカード会社では、「最初の90日間(の体験)」をものすごく重視していました。長年に渡る顧客の行動分析によって、「カード作成後の90日以内の利用傾向で、その後の定着、離反、拡大利用の傾向が概ねわかる」という結果が出たためです。そこで、90日間の行動である一定の利用に満たない顧客に対し、アウトバウンドでカードの利用メリットを訴求するという取り組みを実践していました(今も実施しているかは定かではありません)。
これ、マニュアルトークでオススメするという、ありがちなテレマーケティングではありません。そもそも、同社のコールセンターはオペレータも正社員でした。厳密な評価制度に基づき、かつインセンティブも設定されています。言ってみれば、現在のカスタマーサクセスとかインサイドセールスの皆さまに近い取り組みということです。
他にも、これに近い取り組みをしている保険会社のコールセンターはかなり多いです。国内の代理店系生保は、職員やチャネル人員の入れ替わりも激しいので担当者がいなくなって引き継ぎがうまくできないケースは少なくありません。それをコールセンターが巻き取ってフォローのコンタクトを定期的に行う。もちろん、契約内容や過去の履歴データは必須なので、まずはチャネルや支店の外交員、営業マンが使うDBとの一元化は必須です。

保険会社でのコールセンター利用例。インサイドセールスやカスタマーサクセス業務と類似しています。

ちなみにさっきのカード会社の顧客理解に基づく取り組みは徹底しています。コンタクトリーズン(顧客が電話してきたりメールしてくる理由)を徹底的に分析し、最適なチャネルを設計。例えば、住所変更という、いかにもWebで自動対応しやすそうな問い合わせに対し、「住所が変わるということは、その人のライフステージが変わるということ」と定義し、他の用件は自動化しても、必ず有人対応して顧客理解をさらに進める、というような取り組みでした。

そして現在、実施されているBtoBのカスタマーサクセスにおけるアダプション事例の元祖的な取り組みは、90年代末から展開されていたIBMのCRMだと思います。
いわゆる「20%の顧客が80%の利益を創出している」というパレートの法則に照らし合わせ、80%の顧客のフォローや対応をコールセンターに集約した、というものです。クラウドもサブスクもない時代の取り組みだっただけに、まさに先進的だったといえるでしょう。サクセスもサポートもリソース(人員)不足の現在、改めて見直すべきベストプラクティスだと思います。

90年代末から実施されていたコールセンターでの利用定着施策

いずれにせよ、カギは「顧客理解」を進めるためのデータベースです。この扱いについては、コールセンターはおそらく一日の長があります。
ちなみにこのような事例は、弊社主催の「コンタクトセンター・アワード」では毎年のように報告、共有されています。

次回は「離反(チャーン)抑止」の事例について書きますね。もっとたくさん、ありますので。

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