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【全編ネタバレ】女性にモテない「変態ウルトラマン」?―「シン・ウルトラマン」レビュー

こんにちは、烏丸百九です。

話題の映画「シン・ウルトラマン」を見てきましたので、ジェンダー論的な視点からレビューを試みようと思います。バーチャル評論家(設定)なので映画レビューもたまにやります。よろしくお願いします。

尚、何を言ってもネタバレになる類いの作品なので、タイトル通り、未鑑賞の方はネタバレにご注意ください。本記事は全文無料です公開から時間が経過し、レビューも出そろってきたので後半を有料化致しました。マガジンに入れば他の記事と合わせて読めます。

1.強くてイケメン、華麗でセクシー―憧れのモテ、シン・ウルトラマン

α.美麗な造形と強さで魅せる、新しいウルトラマン像

ネットでは賛否両論作品と見なされている(?)本作ですが、個人的には(あんまり期待せず見たためか)作品としてはとても面白かったです。なので、まずは良かった点から書いていこうと思います。

最初に自分の立場を明らかにしておくと、私は日本特撮は圧倒的にゴジラシリーズ支持で、「ウルトラマン」は初代と「セブン」くらいしか見ておらず、最近のシリーズはぜんぜんわからない……という程度の、「ウルトラマンファン」とはとても言い難い人間です。

なので、本作でパゴス・ネロンガ・ガボラが同時に登場しても「バラゴンとゴジラのミックスみたいな奴らやなあ」程度の感想しかなく、長年シリーズを追ってきたであろう方々のような感慨や、「そう来たか」な驚きは特に感じず、出番自体も割と淡々と処理されている印象を持ってしまいました。(3怪獣の関係についてはこの辺を参照)

しかしそんな私の目から見ても、シン・ウルトラマンの造形は大変良かったです。
原作の「ぴったりスーツ感」を残しつつ、筋肉や皮膚の感触も伝わってきそうなリアルで柔軟な造形、オミットされたカラータイマーではなく体色でダイレクトにピンチを伝えるアイディアの巧みさ、チカチカとしておらず生物的な優しさを強く残す大きな瞳……などなど、流石は往年のファンが原点回帰を狙って創造しただけはあると思える出来でした。
リブートされたメフィラス星人や、大量破壊兵器ゼットンのデザインも(設定には賛否あるようですが)理屈抜きに格好良かったです。

シン・ウルトラマン(公式サイトより)。背中のうねりと光沢がセクシー

スペシウム光線やウルトラスラッシュ等の必殺技演出も、いちいちスタイリッシュで「見せ所」を理解した描かれ方をしており、邦画特有の低予算を感じさせません。「大画面で美しいウルトラマンと怪獣の戦いが見たい」というファンの方は、それだけのために劇場に足を運んでも料金の元は取れるんじゃないでしょうか。

β.特定の人々(特に男)からモテモテのウルトラマン

ウルトラマン人間形態こと主人公・神永を演じる斎藤工は当たり役で、「絶妙に何を考えているかわからない宇宙人」をわかりやすく・内面の純粋さを表現しながら演じています。

彼の魅力に惹かれたのか、とにかくこの神永、作中人物から(理由もなく)モテるのが特徴で、禍特対班長の田村、特撮オタクでチームメイトの、そして地球征服を目論むメフィラス星人こと山本耕史にはやたらと信頼を寄せられる描写があり、山本氏の巧みな演技も相俟って、二人で酒を飲むシーンは殆どデートの趣です。

女性ファンによるファンアートまで作成されています。(劇中でピザは食べていませんが……)

「モテ」の文脈で言うと、米津玄師作のテーマソング「M八七」は作品内容を補完する名曲と評されており、歌詞の内容は「ウルトラマンに憧れる人間」の視点で描かれています。

遥か空の星が
ひどく輝いて見えたから
僕は震えながら
その光を追いかけた
割れた鏡の中
いつかの自分を見つめていた
強くなりたかった
何もかもに憧れていた

米津玄師 - M八七より

純朴な宇宙人・ウルトラマンの(ある種ナイーブな)人類種への愛情と、そんなウルトラマンに魅せられる人々の感情がマッチしたとき、このエンディングテーマはよりエモーショナルな響きをもって聞こえることでしょう。

こうした「ウルトラマンへの憧れ」は作中人物を通じて、作品を鑑賞している我々に訴えかけてくるものであり、その「呼びかけ」に応えられた人が、ファン/非ファンやジェンダーの別なく、本作を賞賛しているのではないか、と思います。

2.不気味で変態チックでストーカー気質?―成人女性にモテないシン・ウルトラマン

α.「セクハラ」以前に無味乾燥でステレオタイプなヒロイン・浅見弘子の問題

一方で、本作が非難されている主な原因は、殆どヒロイン・浅見弘子の描写に集約されているように思います。

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