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渚じゃない所にて

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黒岡衛星による不定期更新エッセイ。
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39歳にて

39になった。早生まれなので同学年の友人などは今年40になる。

いろいろあった。あって欲しいことは殆ど無く、無くてもいいことばかりあった。まあ、それしか覚えていないというのはあるだろうが、覚えていられるような、人生の転回点となるような良いことは無かったといえる。

少し前まで、そのことが耐えられなかった。自分にはもっと良いことがあってよい。けして良い人間では無いとはいえ、もう少し幸不幸のバランス

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37歳になってSyrup16gにハマった話

37歳になってSyrup16gにハマった話

なんとなくサブスクで『HELL-SEE』を聴き始め、「イエロウ」から「不眠症」と流れてきた衝撃はちょっとしたものだった。

もともとSyrup16gに関しては、10代の頃に『coup d' Etat』をレンタルして聴いたことがあり、しかし熱心にハマることもなく、『HELL-SEE』も買ったもののなんかよくわからんなとスルーしていた。

当時はナンバガなど、インディー色の強いギターロックというものが

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クラウドファンディングにて

クラウドファンディングにて

札幌にある、SOUND CRUEというライブハウスのクラウドファンディングに参加した。

chikyunokiki / 喃語 / the hatch / Discharming man『unevenus』
KIWIROLL『Demo』
KIWIROLL『キウイロール ラストショウ 迷子の晩餐』

予算上の都合もあり、ザ・実利、みたいなチョイスになってしまったが、ちょっと無理して出して良かったな、と

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夜、暗殺者の夜にて

夜、暗殺者の夜にて

裸のラリーズ。
そのショッキングなバンド名は伝説としてずっと耳にしていた。

最初に気になったのはムック『目かくしプレイ』を読んだときに出てきたから、だっただろうか。単体で気になった、というよりは面白そうなバンドがたくさん載っているムックだな、ぐらいの中の一つ、だったように思う。

ある日、JOJO広重のコラムを読んでいてその名前に再会する。アルバム『Mizutani』。名前ばかりが伝説化していく

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つまんねえ人生が怖い

つまんねえ人生が怖い

人生がつまらないままだと認めるのが怖い。

何者かになりたがりすぎると人生を棒に振るよ、みたいなアドバイスをよく見かける。

確かにその『なりたいもの』がわからないままただ『特別』になりたがって搾取されていく若者などを見ていると心が痛むのだが一方で。

僕は36歳で創作を続けているが、一向に芽が出る気配はない。一切のバズというものを経験せず、しかし黙々とマイペースに続けている。

ブルーハーツの歌

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ツタヤにて

ツタヤにて

または、(大げさに言うのならば)ものを知る、ということ。

ツタヤに用がなくなって久しい。本も、CDも、ビデオも、そこに欲しいと思うものが限りなく少なくなって、ほとんど必要がなくなってしまった。

僕は趣味人として、ツタヤに育てられた人間だと思う。もともと父がやや文化的な趣味であったとはいえ、ツタヤでCDやビデオを借りることで(サブカル的にとはいえ)賢くなり、学校には行けなくなってもツタヤにだけは

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Big-O

Big-O

20年近く前のことである。
僕はB-BOYとほど遠いオタクであり、その日も友達の家でアニメを観ていた。
「よせあつめブルース」と名付けられたその回は『カウボーイビバップ』というアニメにとっての鬼子であり、当時『録画済みのVHSでしか手に入らない伝説』の一つだった。この共有の時代にあってビデオファイルに姿を変えても状況はあまり変わっていない。

テレビ局と作品スタッフが揉めた結果できあがった『質の悪

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OK、余裕、未来は俺等の手の中

OK、余裕、未来は俺等の手の中

小説を書いている。
今書いているのは百合文芸3用の原稿で、いちおう今月中には仕上げる予定である。おかげで週一の連載が止まっているが、しょうがない。

アリとキリギリス、だ。アリもキリギリスもどちらの生き様にケチをつけることなんてできない。ただ、自分はキリギリスの側に立っていて、いつか餓死するまでこの怠惰とボアダムに付き合い続けるのだろう、という予感がある。

少し余裕を持てよ、と人に言うことは難し

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DJコントローラを買った

DJコントローラを買った

ヘッダそのまま。

なぜいきなりDJなのかといえば、友人が部屋をDJブースにしたという話とか、twitterフォロワーがMIXの音源を放流していて羨ましかったりだとか、あと今回通販したオタレコさんというところの記事で見て一目惚れした、といういくつかの要因が重なったということになる。

かわいい。そして安い。

もう少し根本的なことを言うと、実際、DJがどういう動きをしているのかが知りたかった。そ

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米津玄師「海の幽霊」を聴きながら

米津玄師「海の幽霊」を聴きながら

北海道、十勝にも少し遅い夏が来た。

米津玄師は『STRAY SHEEP』というアルバムを出し、その中には「海の幽霊」という曲も含まれている。

シンプルに解釈すると、まあ、盆の歌だ。帰ってくる魂とのひとときの邂逅。米津玄師というひとの言葉に多い、『喪ってしまったひとへの歌』だろう。

この曲を聴くと思い出すひとがいる。

EMMA "HAZY" MINAMI。

ほんの少しだけ存在した、もういな

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ライジングサンロックフェスティバル'19にて(後編)

8/17、ライジングサンロックフェスティバル'19 2日目。1日目は存在しないのだがまあそこはそれだ。ぽっかりと開いた穴のことはあとでチケットの返金とともに思い出せばよい。

友人B氏は初参加で、僕は10年以上のブランクがあった。たとえば昔の僕が感じたような楽しみを、いまでも得られるだろうか。
シンプルに、イベントそのものが変わってしまっているとかそれだけの話ではなく、この10年で鍛えるでもない身

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ライジングサンロックフェスティバル'19にて(前編)

できの悪い青春映画みたいだ、と僕は言った。
友人はいつもの表情で、ははは、と笑った。

事の起こりをどこから書くべきだろうか。まあ、まずはやはり、ライジングサンロックフェスティバル'19、出演アーティスト第一弾発表から、なのだと思う。

NUMBER GIRL復活。

今だからものすごく正直に言うと、ぶっちゃけ僕は吾妻光良 & The Swinging Boppersの方に興味を惹かれていた。

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34歳にて

※これは随分と故人への敬意を欠く話であり、また障がいについて揶揄するような表現を用いているが、そこに同胞(と、敢えて書かせていただく)に対する悪意がないことだけは信じて欲しい。

先日誕生日を迎え、34歳になった。心の中にとどめていた、書きたい物事がいくつもあるので、連ねていこうと思う。

2年前に祖父が、去年は父が、それぞれ亡くなった。それぞれ闘病の末の死であり、本人の苦しみのみでなく、母や祖母

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北海道にて

最近、Spotifyでプレイリストを公開するのにハマっている。基本的にはTwitterで流して終わり、なのだが、今回はとても良く、また意義あるリストができたと思ったので、せっかくだから記事にする。

『北海道らしい音楽』とは、なんだろう。

それは考える人の数だけあるだろう。北海道が産んだ偉大な音楽家、というのはメジャー/マイナーを問わず数多くいるし、その中で何が、誰が、強く印象に残っているか、と

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