2016年の映画、私の27本ランキング

2016年の映画マイベスト27です。自分勝手に設定した10項目+「特別な思い入れ」で、採点しています。海外で見たものは、タイトルをアルファベットで綴っています。

1位 『キャロル』 トッド・ヘインズ監督 《心揺り動かされる恋の憧れとパッションの物語が、完璧な映画に結実している。対照的な二人のヒロインの一挙手一投足から目が離せない、》

2位 『Ma Loute』 ブリュノ・デュモン監督 《聖なる狂気に満ちた映画。不寛容と疎外的価値観の水位がみるみる上昇するこの時代に溺れないための、力強い浮力を与えてくれる。》

3位 『ハッピーアワー』 濱口竜介監督 《身体と心との関係、生活と空間との関係を見据えることで、映画は人間を発見する。その確信の、圧倒的な説得力。》

3位 『この世界の片隅に』 片渕須直監督 《日常に流れる平穏な時間を無残に切り裂かれながら、それでも日常を生き続けようとするヒロインに、ひとのあるべき姿が現れる。》

3位 『湯を沸かすほどの熱い愛』 中野量太監督 《真っ直ぐな心を真っ直ぐに映画として描き切るほどの熱い映画愛、それを支えるアイデアの豊かさ。》

6位 『知らない、ふたり』 今泉力哉監督 《ミニマルな語り口から生み出される、クリスタルのような硬度と輝きをもった愛の世界。どの場面も、空間の表現力が素晴らしい。》

6位 『退屈な日々にさようならを』 今泉力哉監督 《へたれ男の周囲のおなごたちの「生きる力」に、絶句。彼女らの「愛」が「死」を軽々と受け止める様に、呆然!》

6位 『或る終焉』 ミシェル・フランコ監督 《介護士の主人公がクライアントの身体を洗う場面や、彼がジムで身体を鍛える場面、それらの意味が爆発的に結びつくラストシーン!》

6位 『マジカル・ガール』 カルロス・ベルムト監督 《色彩(白と黒も含めた)と、フレーミングと、タイミングの「ため」とが、サスペンスあふれる一瞬一瞬を作り出す。》

10位 『ヘイトフル・エイト』 クエンティン・タランティーノ監督 《この時代の映画館で上映不能な70㎜で映画を撮る偉大な時代錯誤が、マカロニウェスタンを鮮やかに更新。》

10位 『ふきげんな過去』 前田司郎監督 《二階堂ふみと小泉今日子が、何とも言えない身体と仕草で、何やら神話的な空間になっちゃってる北品川の街を闊歩する。》

10位 『アブラハム渓谷』 マノエル・デ・オリベイラ監督 《ポルトガル映画の真の傑作を再びスクリーンで見られる幸福!ソクーロフの映画と双璧をなす「ボヴァリー夫人」。》

10位 『オーバー・フェンス』 山下敦弘監督 《オダギリジョーと蒼井優に加えて、函館の街が、映画のもう一人の主役として、崩壊と再生の物語を爽やかに語る。》

14位 『クリーピー 偽りの隣人』 黒沢清監督 《『悪魔のいけにえ』以来のホラー語法で、ミステリーやホームドラマなどのジャンルを破壊していく、その映画的パワー!》

14位 『オルエットの方へ』 ジャック・ロジエ監督 《海辺の狂騒とその果ての寂寥の両方を描き切った、真にフランス的なヴァカンス映画の傑作。乗馬やヨットの疾走感が凄い。》

14位 『オーソン・ウェルズのオセロ』 オーソン・ウェルズ監督 《天才的としか言えないカメラアングルが、この物語を純度の高い「視線の悲劇」として造形する。》

14位 『夕陽のガンマン/地獄の決斗』 セルジオ・レオーネ監督 《これも「視線」が、マカロニ・ウェスタンを壮大な生の欲望のみなぎるドラマに、仕立て上げてしまう。》

18位 『ジョギング渡り鳥』 鈴木卓爾監督 《ジョギングとエイリアンと日本のサバービアと映画作りという4つの要素が、一つの世界で渾然と息づく、メタ映画の力業!》

18位 『ハドソン川の奇跡』 クリント・イーストウッド監督 《最近のこの監督の、水に対する強迫的な恐怖という不穏なモティーフが、前面にせり上がって来る。》

18位 『ダゲレオタイプの女』 黒沢清監督 《見ること見られること、動くこと動かないことという対比が、サスペンスを作り出してるいくプロセスに感動。》

21位 『満月の夜』 エリック・ロメール監督 《ダンスとアパルトマンとバイクとパスカル・オジェとロメールが、パリを完璧な恋愛映画の舞台として出現させる。》

22位 『イレブン・ミニッツ』 イエジー・スコリモフスキ監督 《水平の空間と垂直の空間、急速な時間と緩慢な時間とを自在に駆使する魔法みたいな手際に、酔わされます。》

22位 『アスファルト』 サミュエル・ベンシェトリ監督 《団地があっけにとられる驚きの空間に!今年は洋の東西を問わず、「団地の映画」の年でしたなあ。》

24位 『死霊館 エンフィールド事件』 ジェームズ・ワン監督 《ホラー映画とは死角の映画なり。見えない空間に視線が導かれる恐怖。ベラ・ファーミガの崇高な悲劇性にも注目。》

24位 『Black Stone』 ロ・ギョンテ監督 《謎めいた情景と物語が、言葉を拒絶するような身体の言葉で語られていて、そこから人間の不可思議な実存が現れてくる。》

24位 『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』 スティーヴン・スピルバーグ監督 《小さな少女と巨人とが、一つの画面の中で驚きの活劇場面を作り出す。『ジョーズ』以来の、この監督の超絶技巧。》

24位 『淵に立つ』 深田晃司監督 《見える場面と見えない場面とに弄ばれる観客は、浅野忠信に翻弄される家族を追体験させられる。》


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