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なかなか決断されないお客様の話

何度も通って商品やサービスの説明をしても、
ずーっと検討中のままYESともNOとも決めてくれないお客様。
あなたのまわりにもいませんか?

「買いたい気はあるんだけど、もうちょっと詳しく聞いてから…。」
とか、
「私は始めたいけど、主人が…。」
とか。

特に個人のお客様では、「主人が…」「妻が…」と
配偶者を引き合いに出されるパターンが結構あります。

直接お断りするのは申し訳ないから
「私はやりたいんだけど、配偶者がダメっていうから仕方なく」
と口実にお使いになる場合も多いのですが、

やっかいなのは、
「断るわけでもなく、なかなか決断されない」場合。

昔、こんなことがありました


まだ長男が2歳くらいの頃。
幼児用英会話教材の販売外交員をしていたのですが、
どれだけお宅に通っても
なかなか決断されないお客様がいらっしゃいました。

そのお客様は最初、
奥様が教材にご興味をお持ちになり、
何度かご自宅に伺っては
お子様と一緒に教材の体験をしていただいていました。

そのたび奥様は、
「私はやりたいんだけど、主人が…。」
とおっしゃいます。

ある日、
「主人がいるときに来てもらって、説得してくれませんか?」
とリクエストをいただいたので、
私は意気揚々と
ご主人のいらっしゃる日曜日にご訪問しました。

「ご主人に教材の素晴らしさをご理解いただければ、
 契約してもらえるかもしれない!」と。

そして何度も何度も、日曜日に通いました。
真摯にご説明すればきっと分かっていただけると、がんばった。
自分の子供は夫に預けて。

でも結局、このご夫婦は最後まで決断されませんでした。
購入のご決断に至らなかっただけでなく、
「購入しない」のご決断もされなかったのです。

買う気がないのに断らないのは


ご主人は、私が訪問するたび、
「これを使ったら子供は親の英語レベルを超えるのか。」
「この教材はTOEIC何点のレベルまで対応できるのか。」
なんて細かく1つずつ質問しては、私の回答にまた突っ込む。

クロージングに入りそうになると、
「俺がお金をかけて子供に英語をさせても、
 本人が将来英語を使うかは分からないしなぁ。」
と、また別の理由をつけては決断を遠ざける。

これ、今なら分かります。
このお客様は、そもそも買う気がなかった。

買う気がないなら断ればいいのに、
なぜ何度も営業マンをよこすのか。

だれかを論破したいだけの人って、リアルにいるんです。
このご主人は、今思えばそれでした。
営業マンを通わせて、トークの端から折っていくのが好きな人。

士業のお客様でもあると思います。
法律家を打ち負かしたい、という人はいらっしゃいます。

なにが間違っていたのか


さてこのご夫婦の場合、
そもそも私の対応が間違っていました。

奥様からご主人を引き合いに出されたとき、
奥様ご自身にきちんと確認すべきだったんです。

「ご主人のご意見は別にして、『あなたは』どうされたいんですか。」

と、聞くべきでした。

本気で始めたい人は、配偶者を引き合いに出しません。

本気の人は、
ご自身で配偶者を説得されるし、
説得できなくても毎月の家計をやりくりしたり
独身時代の貯金やへそくりを使って契約される人もいるし、
ご実家に契約してもらう人だっている。

「主人はこういうの、絶対要らないって言う人なんです。
 でも私は、子供にはどうしても英語をさせてやりたい。
 だから、自分で決めました。
 独身のときの貯金があるから、それで買います。」
とおっしゃって始めたお客様もいらっしゃいました。

もちろん家計の都合もあるから、
自分のお金だけでなんとかできる場合ばかりではないだろうけど。

だけどお金の話はいったん抜きにして、
本気で検討しているなら、
始めたいのか始めたくないのかの意思決定は自分でするはずです。

冒頭の奥様は、そこがあいまいでした。
本気で検討されているわけではなかったのです。

そして、それは私のせいです。
商品の魅力を十分に伝えられなかったのもあると思うけど、
奥様ご自身の本心を確認できなかったことが
私の大きな失敗でした。

興味はあるけど自分では決断できず
話を聴いてくれる誰かをそばにおいておきたいだけ、
という人もリアルにいます。
奥様は、そういう状況だったのかもしれません。

それが、当時の私には分からなかった。

今ならわかる、お伝えしたいこと


私はこのお話で過去の愚痴を言いたいわけでも、
同情してほしいわけでもありません。

昔の自分ではわからなかったことが、今ならわかる。

ーーー 営業は、断ったっていい。ーーー


これをお伝えしたくて、過去の話を思い出しました。

私たちが商品やサービスをお客様にお伝えする理由。

それは、「お客様の未来に幸せをご提供したいから」。

英会話教材はそれを使って子供たちが幸せになってほしいからだし、
今の仕事である労務サービスは、
それによって顧問先企業の発展に寄与したいからやっているんです。

だから、私たちは忙しい。
幸せをご提供したい人がたくさんいるから。

がんばってもがんばってもどうしても伝わらないお客様に、
自分の時間と心をすり減らしてしまう必要はないと思います。

大切な時間と心の余裕は、
今のお客様や未来のお客様のために守らないと。

だから営業は、ときに断ったっていいと思うんです。

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