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「Twitterで知り合った相互フォロワーが支えてくれた」うつ病・無職から漫画家デビュー。ファン経済の成功事例クリエイターに聞く

Twitterで毎日、その日起こった出来事を絵日記漫画にしてアップしているハンバーガーさん。

本人は30代の男性ですが、オリジナルの女子高生キャラ「ハンバーガーちゃん」をアバターのように使って絵日記漫画を描いています。

漫画ではJKの日常に見えるけど中身はおじさんというギャップや、「分かる!」とつい共感してしまうあるあるネタ、不憫な目に遭っていてかわいそうだけどかわいい様子など、魅力がいっぱいです。

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*ハンバーガーさんのTwitterアカウントより引用

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*ハンバーガーさんのTwitterアカウントから引用

作者であるハンバーガーさんの柔和な人柄がにじみ出ているところも、愛されるポイントかもしれません。

2019年4月から投稿を始めるとどんどん話題になり、毎日の投稿が数千回、時には数万回もRTされる人気ぶりです。

絵日記を描き始めた当時、ハンバーガーさんは趣味で絵を描いていただけだったそうですが、今や漫画雑誌「青騎士」と「コミック電撃だいおうじ」で連載を持つ漫画家になりました。

*『ハンバーガーちゃんのまんが道。』を連載中の雑誌「青騎士」の宣伝漫画*

そんなハンバーガーさんが絵日記を描き始めたきっかけの一つは、精神面の不調で仕事を辞めたことだったそうです。

なかなか新しい仕事が見つからない中、Twitterの相互フォロワーを中心としたファンが、各種サービスで金銭的な支援をしてくれたおかげで、生活を維持しつつ作品を描くことができたのだとか。

SNSでの発信がきっかけで名前が知られ、ファンからの支援によって創作活動を維持し、今をときめくクリエイターになるまでの経緯を、インタビューしました。

ハンバーガー
Twitterユーザー / 漫画家 / イラストレーター。2019年4月より個人のTwitterアカウントで、自身を女子高生化したキャラ・ハンバーガーちゃんの日常を描く絵日記漫画を毎日投稿している。漫画雑誌「青騎士」で『ハンバーガーちゃんのまんが道。』、「コミック電撃だいおうじ」で『忍者と殺し屋のふたりぐらし』を連載中。

無職の日々が辛くて、達成感を求めて絵日記を描き始めた

ーーなんで毎日Twitterで絵日記漫画、それも自分を女子高生化したキャラクターで描いているんですか?

ハンバーガー:もともと絵は趣味として描くくらいで、今の仕事を始める前は接客業をやっていたんですが、うつ病になってしまって辞めることになったんです。

しばらくは県の就職サポートセンターに通ったりしつつ、仕事を探しながら無為な日々を過ごしていたんですが、そうやって時間がただ過ぎていくのって、何も達成感が得られないのが辛くって。

それで、もともとブログを描くのも好きだったので、絵の練習も兼ねてその日あった出来事を絵日記漫画にして毎日Twitterに載せることにしたんです。

女子高生のキャラクターにしたのは、Twitterで見つけた「あなたを女子高校生化してみたー」という診断メーカーの結果を絵にしてみたら意外に可愛く描けて、「このキャラで絵日記を描いたら絵の練習になるかも」と思ったからですね。

ハンバーガー:就職サポートセンターでは良い感じの職場がなかなか見つからなくて、変なところばかり勧められてやだなーと思いながら、毎日絵日記を描いていました。

ーー毎日漫画を描いて載せるって、想像してみるとかなり大変そうです。

ハンバーガー:結構、気楽に描いていましたよ。

それまで僕が描いていた絵は二次創作がメインで、同人誌を作ったりしていたんですが、二次創作って難しい部分が多くて。

誰かが作ったキャラを描くときって、見た目は資料とにらめっこして描かないといけないし、中身もそのキャラがしないようなことをさせてはいけないから、すごく気を使うんです。

その点、自分のオリジナルキャラは自由に描いていいし、性格とかもどんなに酷くしても誰からも怒られませんしね。

ーーじゃあ、オリジナルキャラを描くのも初めてだったんですか?

ハンバーガー:中学生のときの、黒歴史と呼ばれるようなノートの落書きでは描いていたかもしれませんが、ちゃんとキャラとして完成させて動かしたのは初めてだと思います。

描き始めた頃から、自分を知っている周りの人からしたら面白いかな、くらいの気持ちで描いていて、今も身内ノリがそのまま続いているような感覚ではあります。

ーーそうやって描かれた絵日記漫画が、今や毎日数千回もRTされているのは面白いですね。

ハンバーガー:最近は絵の仕事も増えてきて、僕が一緒に仕事をする人って大体絵日記を見てくれているので、見られている意識からちょっと固くなっちゃっている感じはするんですが……。

Twitter外での露出が増えると、仕事の依頼も増加

ーーハンバーガーちゃん絵日記は、どういうふうに広まっていったんですか?

ハンバーガー:絵日記の投稿は2019年4月から始めたんですが、載せ始めて3ヶ月くらい経った頃から結構見てもらえるようになった気がします。

『リングフィット アドベンチャー』(※編注:Nintendo Switchのフィットネスゲーム)の絵日記を描いたあたりからすごく広まったんですが、今見てみたらこれを描いたのは2019年11月ですね。

フォロワーもかなり増えて、絵日記を始める前は1,200人くらいだったんですが、今は9万人くらいが見てくれているみたいです。

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*ハンバーガーさんのTwitterアカウントより引用

ーーすごくたくさんの人が毎日の絵日記を楽しみにしているんですね。

ハンバーガー:あとは、いろんな人がハンバーガーちゃんのファンアートを描いてくれて広まったのもあると思います。

最初は相互フォロワーの絵描きの人たちがイラストを描いてくれていたんですが、そのおかげで自由に描いてもいいキャラクターとして認知されたんじゃないかなと。

ーー絵を描く人たちのコミュニティが起点になったということですね。そこから、どのように絵の仕事につながっていったんでしょうか?

ハンバーガー:知り合いから「描いて」と言われることはちまちまあったんですが、ちゃんとした仕事の依頼がすぐに来るようになったわけではなかったです。

多分、ハンバーガーちゃんを始めて丸1年後くらいからTwitter以外での露出が増えて、仕事が増えていった感じですね。

2020年5月に、今も担当してくれている編集さんに声をかけてもらって、ハンバーガーちゃんの合同誌(複数人が集まって共同制作する同人誌)を作ったのが大きかったと思います。

*『ハンバーガーちゃん合同誌 HDC-ハンバーガーちゃん大好きクラブ-』は今も「メロンブックス」で紙の本を、ハンバーガーさんの「BOOTH」トップページで電子版を購入できます*

ハンバーガー:その後、6月には「コンプティーク」(アニメ・ゲーム誌)にインタビューが載り、それがきっかけでコンテンツを作る仕事をしている人たちに知ってもらえた実感がありますね。

あとは8月にはお酒のPR漫画を描かせてもらったり、10月にはネットメディアの「ねとらぼ」にハンバーガーちゃん絵日記を載せてもらったりで、見た人とかから仕事を依頼してもらえることが増えました。

ーーTwitterの外での露出が多くなるにつれて、仕事の依頼も増えていったんですね。

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活動を支えてくれたのは、ネットで繋がった相互フォロワー

ーー少し答えづらい質問かもしれないんですが、絵日記を描き始めてから、絵の仕事の依頼が来るようになるまでは無収入だったんでしょうか?

ハンバーガー:ちまちまアルバイトをしたりはしていたんですが、結局、ちゃんとした転職はしませんでしたね。

ただ、「Skeb」(編注:クリエイターと個人がイラストや漫画などのコンテンツを受発注できるサービス)や「pixivFANBOX」(編注:ファンがクリエイターを継続的に支援できるサービス)からの収入が多少あって。

僕は配偶者がいて死なない程度には助けてもらえるというのもあり、節約すればなんとか生活できるくらいにはなったんです。

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*ハンバーガーさんのSkebトップページ

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*ハンバーガーさんに絵をリクエストすることができます(今はリクエスト受付停止中)*

ーーいつから、どれくらい支援してもらえていたのでしょうか?

ハンバーガー:どちらもとりあえずやってみるかという感じで、日付を見てみると、Skebは絵日記を始める前の2019年1月に、pixivFANBOXは絵日記を始めた後の2019年12月にアカウントを開設していますね。

絵の依頼をしてくれている人は、Twitterの相互フォロワーが多くて……「ハンバーガー、Skeb始めたなら俺が好きなキャラ描いてよ」みたいに言ってお金を払ってくれるので、本当にいいのかなと思いながらやっていました。

苦しかった時期にお金をもらえたのですごく助かったし、本当に嬉しかったです。

僕は10年くらいTwitterをやっていて、職場での繋がりみたいなものもないので、仲が良い人はほとんどみんなTwitterで知り合った人なんです。

Twitterで相互フォロワーになって、仲良くなるとDiscord(音声通話ソフト)で集まって一緒にゲームをしたりするんですよ。

ーーネットで繋がった友人に支えてもらったという感じなんですね。

ハンバーガー:そうですね、Twitterでの付き合いが結構長い人が依頼してくれることが多かったです。

Skebのアカウントがあることで、有償で描いてもらおうみたいになるのかもしれないですね。今は単純に忙しいから、リクエストの受付を止めているんですけど。

ーー月額課金で支援してくれるのも、同じく相互フォロワーの方が多かったんでしょうか?

ハンバーガー:そうですね、もちろんそうじゃない人もいるんですけど、古くからの友人はずっと支援してくれています。

pixivFANBOXは、一緒に同人活動をしていたVTuberのマシーナリーとも子が先にやっていたから、どんな感じなのか聞きつつ、やらないよりもやったほうがいいかと思って始めてみたんです。

始めてすぐの頃から毎月2〜3万円くらいの収入になって、すごく助かりました。今はもうちょっと増えているんですが、本当にありがたいです。

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*ハンバーガーさんのpixivFANBOXトップページ。ハンバーガーコース(500円/月)、チーズバーガーコース(1,000円/月)、ダブルチーズバーガーコース(2,000円/月)の3つのプランから支援が可能*

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*支援額に応じて、支援者限定の有料コンテンツを閲覧できます*

ーー有料コンテンツは、どのようなものを投稿しているんですか?

ハンバーガー:限定の絵日記とか、絵とかですね。支援者しか見れないということは、僕の活動に好意的な人しか見ないわけで、自信を持ってアップできるんですよね。

不特定多数に見られるTwitterだと、見たくない人にも届いちゃうわけですが、そうならないので更新する分にも気が楽です。

仕事が忙しいから更新は不定期なんですが、一応週1では何か出そうと思っています。

何もしないでお金をもらうのは苦しいというか、申し訳ないので、それなりに更新しなきゃなという気持ちでいます。

漫画家ではなく、Twitterで絵日記をアップするプロ

ーーハンバーガーさんを支援している人は、どんな人が多いのでしょう?

ハンバーガー:高額の支援をしてくれている人は、やっぱりほとんどが相互フォロワーですね。

ただ、ハンバーガーちゃんをたくさん広めてもらえたおかげですが、pixivFANBOXでしか読めない漫画を見るためにお金を支払ってくれている人も多いみたいです。

そういう人たちは僕の更新ペースが落ちると当たり前に離れちゃうんですが、そういう人にまで届くコンテンツになったのは、とても嬉しいことですね。

ーーハンバーガーちゃん絵日記をお金を払ってでも読みたいという人がたくさんいるということですね。

ハンバーガー:pixivFANBOXをコンスタントに更新していた時期は、やっぱりたくさんの人が登録してくれましたね。

あとは、絵日記まとめの同人誌を出したとき、数をあまり刷らなかったので、支援者限定で取り置きできるようにしたときも、たくさん登録してもらえました。

自分としては、支援者になってもらいたいから支援者限定にしたというよりは、いつも支援してくれている人に何か返さないと申し訳ない気持ちがあって、やってみたという感じです。

入るタイミングを伺っていた人とかが、限定の特典があると周知したときに一気に何十人も入ってくれたりするみたいですね。

ーーそうやって支援してもらったお金は、絵日記を描くのに活かされていたりするんですか?

ハンバーガー:あ、まさにそうです。最近は生活費というより、絵を描くための機材や絵日記のネタになるようなものを買うことが多いですね。

結構前からなんですが、絵日記を描くのにiPad Proを使っていて、これはpixivFANBOXの支援金で買ったものです。

やっぱり十何万円とかするものだから、そういうものを買うことができると、それだけの作品を描けたんだなという気持ちになれて嬉しいですね。

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*最近はiPad miniも購入されたそうです。ハンバーガーさんのTwitterアカウントより引用

ーーこうしてお聞きしていると、ハンバーガーさんは絵日記を描いてTwitterに載せることが仕事の核になっているみたいですね。

ハンバーガー:今や漫画の連載もさせてもらっていますが、漫画家になるために絵日記を描いていたわけではないですからね……。

連載を取るための活動ではなかったし、「漫画が忙しくなったので絵日記を辞めます」ということはあまりしたくないです。

漫画は力不足な部分を感じているから、もちろん上手くなりたいんですがど、絵日記は続けたいです。

ーーそれは、ハンバーガーさんのファンの方たちが求めるものを考えてのことなのでしょうか?

ハンバーガー:確かに絵日記を続ける上で、見てくれている人たちの存在はあるかもしれないです。

いつまで続けるかは決めていないんですが、やっぱり絵日記が止まったら寂しいんじゃないかと思います。

さっき言ってもらったように、自分の仕事の中心にあるのは絵日記だから、そこはなかなか辞めるわけにはいかないですね。

ーー漫画家やイラストレーターというよりは、Twitterで毎日絵日記をアップするプロということなんでしょうか。

ハンバーガー:そうなのかもしれないです。漫画も描きつつ、やっぱり絵日記が中心にあって、声をかけてもらえるのであれば、できる限り期待に応えていきたいと思っています。

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ハンバーガーさんが絵日記を更新しているTwitterはこちらから。
https://twitter.com/HundredBurger

pixivFANBOXでハンバーガーさんの支援者になり、限定コンテンツを見るにはこちらから。
https://hundredburger.fanbox.cc/

『ハンバーガーちゃん絵日記』書籍版はこちらから。
https://www.amazon.co.jp/dp/B094V1F6HC/

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