スイカ直売のオンランショップ3年目の振り返り。農産物EC直販の戦い方。
毎年、夏の終わりは「福賀すいか」のオンラインショップの成果と気づきの振り返りをしているので、今年もちゃんと振り返っておこう。
農業は作る品目によって色々と事情が変わってくるから全てを網羅するノウハウなんてないけれど、「農作物のネット直販」のアプローチのひとつとして間違いなく参考になることがあるので興味ある人にはぜひ読み進めてほしい。
ただ、基本的なことは昨年の振り返りでかなり厚めに書いてあるので、読むならまずはこっちから。
2022年度の販売成績。
まず結果から言うと、注文件数は昨年比で20%アップ、そして販売金額は30%アップで着地した。
注文件数と販売金額の伸び率が違うのは、後述するけどひとつは値上げの影響がある。
でも何より大きかったのは、これまで以上により大きいサイズの注文が増えたこと。
一般的なスイカのサイズを考えると、7〜8kgサイズや9〜10kgサイズが買いやすいのが当然の話だけど、「福賀すいか」は11kg以上が当たり前で、今年は特に13kg以上のサイズが出荷の半分以上を占めていたのではないかと思われるほど大きいサイズを中心に回っていた。
むしろ7〜8kgサイズが畑からほとんど出てこなかったので、オンラインショップでは急遽出品を停止する対応をとったほど。
そんな中で、決して買いやすいとは言えない11kg以上の大きなサイズの販売が伸びたのは、「大きいからこそ、大切な人たちと感動を分けあえる」と言うメッセージが少しずつ浸透してきたからなんじゃないかと思う。
「冷蔵庫に入らなくて買えない」「もっと小さいのないの?」と散々言われながらも、あえて大きなスイカにこだわってきた福賀すいかのコンセプトがちゃんとお客さんに届いてきているのは本当に嬉しいことだった。
ここからは、今年の成績を踏まえながら、スイカのオンライン直販で「今年からの変更点」と「昨年に引き続き継続したこと」についてそれぞれ紹介していく。
【変更点⑴】値上げしたけれど売上げは伸びた
今年はスイカの価格を全て一律に200円上げた。
大きな理由は、やはり資材費の高騰。
農業に限らずあらゆる生産コストが高くなってしまったので、世間では「値上げ疲れ」なんて言葉もあるほどいろんな商品が値上げしていた。
その中でのスイカの値上げに抵抗が全くなかったわけではないけれど、そもそもここで農家として生き残らなければどうしようもないので、値上げの決断は生産者全員の同意のものとなった。
そんなわけでオンラインショップでも値上げのお知らせを出したうえで販売したわけだけど、結果は冒頭にも書いた通り、注文件数は昨年を20%も更新できた。
全く不安がなかったわけではないけれど、値上げについてきてもらえるだけの品物を作り、届けてきた自負はあった。それが結果にきちんと出たのでより自信につながった。
【変更点⑵】価格表示の形式を変えた
これまで慣例として、スイカの販売価格は「送料込み」で表示してきた。
でもこれだと、お客さんが支払う金額のうち、どれだけがスイカの価格で、どれだけが送料なのかが一目では分かりにくい。
お客さんからは決して安くない金額をいただいている以上、スイカの本体価格と送料とを明確にした方が誠実だろうと考えて「送料別表示」に変更した。
福賀すいかは全てのスイカに一律1000円の送料がかかっているので、価格表示としては1000円安く表示されるようになった。
これがスイカの売れ行きに影響したのかどうかは…正直よくわからない!笑
もともと「安く見せる」ことが目的ではないし、あくまで売り手としてのけじめみたいなものだったし。
この送料別表示にしたことについては別の記事を書いてあるのでそちらもぜひ読んでくださいまし。
【継続したこと⑴】予約販売機能は今年も好調
昨年から予約販売機能を取り入れて今年も継続してきたけれどやっぱりあるのとないのとでは全然違う。
今年は注文件数の19%、2割近くが予約注文によるものだった。
昨年も同じことを書いたけど、栽培の様子、生産過程を常に発信しているので、応援してくれる人からすると「いつから買えるの?」と当然気にするようになる。
事実、Twitterでも「今年はいつから買えますか?」「販売始まったら絶対買います!」と言った声はご新規さん、リピーターさん問わずいただいていた。
こういうお客さんの嬉しい反応を、絶対に蔑ろにしてはいけない。
発信と販売を組み合わせるなら「さっさと売る」が吉。
それと大事なことがもうひとつ。
農作物の生産・販売において「収穫・出荷する前から売り上げが発生する」ことはメンタル面に凄まじい好影響を及ぼす。
だいたいいつも7月初旬、どんなに早くても6月末から収穫が始まるうちのスイカの特性上、約ひと月遡った6月初旬は管理の忙しさのピークにあたる。
クソ暑いハウスの環境に悶えながら、それでもなんとか管理が遅れないように慌ただしく仕事をする日々の中で、スイカを予約してくれた人がいることを確認するたびにどれだけ疲れが吹き飛んだか。
この予約販売のおかげで1番きつい時期を乗り越えられると言っても過言ではない。
【継続したこと⑵】SNSでの立ち回り方
今年もスイカの栽培期からTwitterを中心に発信を続けてきたけれど、ここで僕が言わなければならないことは昨年からほとんど変わっていないので、とにかく昨年の記事も読んでほしい。
一応、今年も押さえ直しという意味で書いておく。
まず、大前提となるのが僕のSNSを使った宣伝のスタンス。
僕はSNSを、不特定多数の人に情報をばら撒く道具ではなく、「この人になら!」と感じた人たちひとりひとりに情報を手渡しする道具として使っている。
理由は大きく2つ。
バズったところで…
まずひとつ目は、バズったところで売り上げはたいして伸びないという実体験があるから。
昨年も今年も、発信を続ける中でちょいバズくらいの規模でツイートが拡散されることがあった。
昨年の例は昨年の記事を読んでもらうとして、
今年はテレビ番組の取材でタレントさんと絡みがあったときのこと。
大変失礼なことに僕は取材でご一緒するまで全く知らない方だったけれど、いま勢いがものすごいEXILEグループのメンバーさんということで、ファンの方の熱量が凄まじかった。
これでツイートはかなり拡散されたし、一時的にスイカ農家としての僕自身のことも、ファンのみなさんに認知していただいたと思う。
でもそもそも、ファンのみなさんはあくまでタレントさんのことが見たいのであって、たまたま一緒に画面に映ってる顔のでかいスイカ農家のことなんて興味はない(厳密には向こうの顔が小さすぎるだけ)。
1000を超えるいいね!や数百ものリツイートがあったとしても、捌けなくなるような注文が舞い込むことはまずないので、「売り上げを伸ばすために発信をバズらせよう!」みたいなことは考えない方が良い。
それよりももっとやるべき大切なことがある。
売り上げを伸ばすには「リピーター」が不可欠。
それがまさに2つ目の理由で、売り上げを伸ばして安定させていくためにはリピーターさんを増やすことが必要不可欠だから。
そのために僕がオンラインショップ開設初年度から続けているのが「お客さんになってもらえそうな人をTwitter上で血眼になって探す」というもの。
ネット販売の戦略としてSEO対策して「検索されやすくする」というのがあるけど、僕のは真逆。
こっちからお客さんを検索する。
そしてコミュニケーションをはかる。
ひとりひとりとちゃんと向き合って、お客さんとしてひとりずつ捕まえるという作業を地道にやってきた。
結果どうなるかというと、リピーターが増える。
お客さんがリピーターになるのはもちろんスイカそのものがアホほど美味しいからなのはいうまでもない。
そこにプラスアルファ、コミュニケーションをしっかりとることでお客さんとの継続的なつながりを作る。
お客さんとして招き入れるところからしっかりコミュニケーションをとっていると、注文したことや食べたことをツイートで報告してくれる人がたくさんいた。これがむちゃくちゃ嬉しい!
それにもひとつひとつしっかりリアクションして、つながりを継続していく。
その作業の積み重ねがリピーターを増やすことにつながっている。
結果、昨年のリピート率は28%、そして今年のリピート率は44%に上がってきた。
新規客の開拓にかかる労力はとてつもないので(もちろんそれでもやるけど)、リピーターさんの基盤が厚くなればなるほど売り手としては安心感がある。
今後もSNSの宣伝はこのスタンスを貫いて、リピーターさんをもっともっと増やしていきたい。
全ては強い商品であってこそ。
そんなわけで、今年のスイカのオンライン直販の成績と合わせてどんなことに取り組んできたかを振り返ったけど、
ここまで書いてきた全てのことに共通するのは、「売りたい商品に"力"があるからこそ、自信をもった動きがとれる」ということ。
自分が作るスイカに絶対の自信と覚悟があるからこそ、値上げにも踏み切れたし、発信の言葉にも熱を込められた。
結局のところ、どんなものであれ品物を作り込めていないと何も始まらない。
これから直販、特にECでの販売をやりたいという人はそこだけは絶対に取りこぼさないでほしい。
最後に、
福賀すいかを選んでくださったみなさま、栽培・収穫期間に応援してくださったみなさま。
今年も本当にありがとうございました!
また来年も、最高の夏をお届けします!
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