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同化からインクルージョンへ:女性活躍後進国 日本の可能性をCQで解き放つ!

世界ランキング116位:日本のジェンダーギャップ指数を知ってますか?

ジェンダー不平等は、日本において根深い問題です。
世界経済フォーラムによる2022 年のジェンダーギャップ指数では、日本は総合順位で世界146か国中116位にランクイン。特に政治分野と経済分野における順位が低く、経済分野の順位は146か国中121位という不名誉な結果が続いています。

政府は「女性版骨太の方針2023」の案を出し、最上位の上場企業の役員における女性の比率を2030年までに30%以上にすることを目指すとしています。また男性が確実に育児休業を取得できるよう制度を強化することなども盛り込まれました。

パパも休んでほしい:制度は最長でも低い育児休暇取得率

日本の男性の育児休業制度は世界でも最長と制度的には充実している一方で、実際の取得率は13.97%(厚生労働省 令和3年度雇用均等基本調査)と世界的に見て決して高いとは言えません。
OECDは日本に対して次のように勧告しています。

「職場は男性の育児休暇取得支援や労働時間短縮を通して男性の育児・家事への参加を勧めるべきであ る。労働時間が長いために日本の男性(1日59分)が家事に参画する時間は OECD(平均で1日138分)中で最短であり、また育児への参加も限られている」

OECD Doing Better Policies for Better Lives


インクルージョンには「帰属意識」と「個性の発揮」の両方が必要

多様性(ダイバーシティ)が真に発揮されるためには「インクルージョン」が必要だと言われます。

インクルージョンとは「多様な人材がそれぞれの能力を活かして活躍できている状態」を指します。単にダイバーシティ(一定割合の多様性が存在)があるだけでは必ずしもインクルージョンが達成されているとは言えません

インクルージョンには2つの要素が不可欠だと言われます。すなわち「自分はチームに属している」と感じる「帰属意識」と、「自分の持つ独自のスキルや能力が尊重されている」と感じる「自分らしさの発揮」です。

(図1)


カタリストが日本の職場の男女を対象に行った調査によると、「帰属意識を感じている」と回答した人は64%と高く、日本のチームワークを重視する文化を示しています。一方で、わずか22%が「個性を発揮できている」と回答、「インクルージョンを感じている」人もわずか35%であることが分かりました。

これは、日本の職場で多くの人々がインクルージョンではなく、「同化」を経験していることを意味しています。

文化の自覚を持つ:達成志向と不確実性回避の壁

ではなぜ、日本の職場や社会は「異なる人に対して同化させる」傾向を持ちやすいのでしょうか?私たちCQラボでは、その背景に国民文化の影響があると考えています。

「文化と経営の父」と呼ばれるオランダの社会心理学者 ヘールト・ホフステード博士の6次元モデルによると、日本文化の「達成志向」と「不確実性回避」のスコアは世界でも稀に見る高いものです。(図2:グラフの日本の位置をご覧ください。歴然ですね・・・)

強い達成志向は「(移民など外部の人を)自分たちに同化させようとする」傾向と相関性があります。また不確実性の回避の強い文化においては「異なる人=脅威」とみなす考えが生まれやすく、その結果マイノリティを排除したり、同化させようとします。つまり日本はもともとインクルージョンを持ちにくい文化的傾向を持っているということです。

ここで大切なのは、文化の傾向自体は「良い・悪い」で判断されるべきものではないということです。ある特徴は1つの側面ではうまく機能し、別の側面ではそうではないかも知れません。

例えば、日本の組織では従来、メンバーシップ制雇用の中で同質性の高い人たちが高い忠誠心や帰属感を持ちながら長期的に安定した雇用契約を結ぶことを前提にしてきました。これは日本の文化的傾向にマッチした方法でした。しかし社会環境の変化に伴い多様な背景、働き方の労働力が必要とされる中では必ずしもベストな文化的傾向ではないかも知れません。

またもう一つ理解すべきことは、6次元モデルで示されるスコアはあくまで国の平均であり、私たちひとりひとりの文化的嗜好とは異なります。

例えば「私自身は(新型コロナは5類に移行したし)マスクを外したい」と考えていたとしても、職場のほぼ全員が相変わらずマスクをしているので「外しにくい」と感じていたとします。これも「マスクを外す」という新しい行動に対する課題解決の傾向が、個人と職場という集団とで異なっている例になります。

文化の傾向は良い悪いではなく、個人の傾向とも違う。しかし私たちが将来に向かって社会課題と向き合う上で、日本のユニークな文化的側面を「自覚」することは非常に大切です。

<図2※>

CQ®の4つの能力:自分と「異なる人」との関係構築への道

それでは私たちは「文化から突きつけられたインクルージョンの課題」にどの様に向かい合えばよいのでしょうか?
「文化が原因なら仕方がない・・・」と諦めるのでしょうか?

私たちCQラボはCQ(Cultural Intelligencde=文化の知能)の4つの能力をバランスよく開発することで、異なる背景を持つ人々を深く理解し、効果的に協働することが可能となると考えています。

CQはIQ,EQに次ぐ「21世紀のリーダーの必修スキル」と呼ばれ、Googleやスターバックス、ハーバード大学など世界的な組織で学ばれている概念です。CQはまたIQなどと異なり、「誰でも意図的に伸ばすことができる」スキルでもあります。

CQは4つの能力で構成されています。CQドライブ(自分とは異なる人と関わりたいと思うモチベーション)、CQナレッジ(認知、文化のフレームワークの理解)、CQストラテジー(異なる人との効果的なやり取りの計画力、メタ認知力)、CQアクション(ストラテジーを実行に移し効果的に調整する行動力)です。

課題先進国の日本。女性に限らず、障がい者や外国人材など、これまで組織の中でマイノリティとされてきた人、つまりマジョリティーから見ると「異なる人」が「自分らしさ」を発揮しながら定着して活躍することが求められています。そのためには単に(30%などの)数値目標(=ダイバーシティ)のレベルに留まるのではなく、真のインクルージョンが必要になります。

組織に対する「帰属意識」だけでなく「ユニークさが受け入れられ個性が発揮できる」職場にするためにも、私たちは「文化に橋を架ける力」が必要なのです。

文:CQラボ理事 田代礼子

CQラボの宮森と田代による記事がCulture Impact Journalに掲載されました!↓↓
Gender Inequality in the Japanese Workplace and the Influence of National Culture(英文)日本の職場におけるジェンダー不平等と国民文化の影響

https://culture-impact.net/gender-inequality-in-the-japanese-workplace-and-the-influence-of-national-culture/

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