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もうコワーキングに、世界的なオープンソースの文化は期待できないのだろうか

オープンソースの文化が期待できなくなった事情背景と考察

 コワーキングスペースもりおかで、数日誰かに店番やってほしいということをやろうとした中で、以前ノラやでやっていた店番募集を調べていました。6年ほど前のブログですが、このようなことが書いておりました。

http://sendaiworkspace.hatenablog.com/entry/20140820/1408533383

コワーキングスペースではお客様を囲い込むのではなく、紹介しあう。
近隣のコワーキングスペースはライバルではなく、仲間。
コワーキングスペースはオープンソース。どんどん真似して。

これを意識してコワーキングスペースに関わる人って、本当にいなくなりましたね。コワーキングスペースをやりたいと思った時期から、ビジネスとして意識していく中で、1番の肝でありコワーキングの良さが失われることを危惧していました。

コワーキングとオープンソース #cowjpadv2011
http://notnil-creative.com/blog/archives/1038

時代時代によって、相対的にオープンソース的なコワーキングのカルチャーをしっかり理解してやっている事業者さんが減った分、ビジネス的視点を取り入れて、利用者さんを囲い込もうとか他のスペースをライバル視してやろうってなる人が増えて、それが常識になってしまったのは多分にあるんですけども、本当に悲しいんですよね。サービスオフィスでもこれが理解できていれば、認めた余地はあったんです。しかし、オープンソースには教える側も教えられる側も平等対等の関係で相互のやり方とかも勉強し合うことがカルチャーとしてあるので、これを基にして、ビジネスコンサルタントや不動産関係の会員さんの意見を聞いていったスペース運営者が増えてしまったのもあったんだろうなとは思うのです。コミュニティや運営者側の成長に伴ってこうなる危険ははらんでいましたが、本当は同業者全体として大事にして欲しかったコワーキングのカルチャーであり、世界のコワーキングスペースユーザーのマナーのようなものに感じていました。
コワーキングjpというfacebookグループを今年の9月中に解散したいという事になって、結果管理人さんを変えて継続しようということになったことがありました。もうひとつ、私と近い発想をされていたヨーロッパの尊敬しているコワーキングスペースの運営者さんが他の方に引き継いで引退するという話も同じ時期にありました。そういったことが重なって、肌強くこの空気感を実感しました。

 そのため、コワーキングスペースの運営という意味でも、スペースの利用者だけのコミュニティに安住して、ドロップインもしないところとか徐々に閉鎖的になっていったところとか結構知っていて、結果として閉店したところも多くあります。そう判断する理由も、決して理解できないわけではありません。しかし、この流れが元から教えられたことと比較しておかしいと感じていったので、様々なコミュニティや市民プロジェクト、ビジネスを混ぜ込むという発想に切り替えていったのがあります。

あらゆるビジネス・プロジェクト・コミュニティも「生き物」としてとらえると、かなりしっくりくる

 市民プロジェクトの立ち上げに参画して結局は頓挫した経験から、会社にしてもビジネスにしてもコミュニティにしてもプロジェクトにしても人と人とのつながりにしても「生き物」だなと感じることが増えてきました。新たなビジネスやプロジェクトを誕生させていくことがコワーキングスペースの特徴のようによく言われるのはあるのですが、それ以上にビジネスやプロジェクトを成長させていくことの方がはるかに大事で、成長に対してどうサポートするかというのが、コワーキングスペースというビジネスの本質なのではないかなという気はします。その方法にはただ様子を見守るのもあると思いますし、運営者側がもつソリューションを活用していくということもあると思いますし、オープンソース的なコワーキングのカルチャーを活用していくということもあると思います。先述の「混ぜ込む」というのは、いかにしてそのコミュニティやプロジェクトの成長につながるような栄養になる情報や別のコミュニティ、人間を注入するかという意味に繋がるのではないかと感じます。
 また、成長もあれば、当然衰退も倒産や解散といった事業終了という選択肢もあります。生き物だと病気だったり死というような事例になると思いますが、それをビジネスやプロジェクトに置き換えると生き物以上に無情な扱いを受けがちです。このようなことを防ぐために、ただその衰退を看取るのではなく、修正がつけられるような物であれば前述の方法を活用して、再活性化させていくことだってできるような気はしております。その中でやっていったとしても、解散だったり事業終了だったりという選択肢を選ぶ人も出てくると思いますが、この決断を受け入れつつ、当事者が次の人生を生きるための準備や人つなぎというのも、コワーキングスペースの役割ではないかと考えています。もちろんですが、この考えをベースにスタッフとしての対処だったりとか、サービスのあり方とかを考え続けていく必要があると思います。

 数年前から「コミュニティは生き物である」という発想はしていたりしていたのですが、今年の春先にリモートで会議をしていた時に、とある方から「ティール組織」という組織形態の発想を聞くことがありました。これが「コミュニティ組織を生き物のように考えてどうプロジェクトチームを構築していくか」というところから論じられているものなので、ご興味があれば他の方のnoteや書籍などで調べていただけるとありがたいです。

それでもコワーキングスペースにオープンソースの要素を残していきたい!

店番を利用者さんに任せてみた経験を通じて、コワーキングスペースに関わったりしていきたい人なら、コワーキングスペースのオペレーションをどこでも誰でもできるような形になっていくのも、ひとつ面白いのかなと感じていることがあります。昔から誰かかしら言っていたりもしていましたし、私もコミュニティミキサーという考えからこれをちょっとした資格にしようという形でやろうとしておりました。
 また、PAX Coworkingやみんコワのように、コワーキングスペースの無店舗化という方向性も面白い発想で、それでもしっかりと成立していたし楽しかったのもあります(相当な条件や利用者・運営者相互の信頼性がたくないと、無店舗化は難しい印象は持っているのですが)。コワーキングスペースの無店舗・有店舗との相互連携もできると、情報の質的にさらに面白くなると考えております。

 現在進行形で進んでいるなと感じるのですが、先述したティール組織というのは、コワーキングスペースで体験できているコミュニティ作りにかなり近い印象があります。ティール組織を体感できる現場という意味で、コワーキングスペースに関わることは売りのひとつになるのかもしれません(考えているほどには期待はしてませんが)。
 ですが、この発想を知っておく上でも、コワーキングにオープンソースの要素を残しておいた方がいいと思うのです。利用者同士のコミュニケーションも大事ですが、さらに自分のよく利用するスペースだけではない海外のスペースやそこのユーザーとも連携して助け合おうとするオープンソースの文化を大事にしないと、どのようなプロジェクトでも良い方向に軌道に乗ることはできないと思いますし、コワーキングによるコミュニティ育成や起業のための肝というのは、オープンソースのカルチャーやマナーが理解できているかどうかというのがあるような気がします。
 事業を始めるなら会社等を立てるなどのために初期投資がなければいけないと考えて、銀行や投資会社などから資金調達できたとしても、その商品やサービスが調達額以上に売れずに会社をつぶしてしまい、自信や信用などをなくす事例も多くあります。そうではなくて、コワーキングスペースでお店を開いたり、別分野・異業種の様々に変わる利用者さんと交流したりといった風に定期的に活用して、実績と自信をつけてから、資金調達したり規模を大きくするように支援していくのが、これからの時代のやり方だと感じていました。もちろん自信や信用を無くした人の回復という機能もあります。初期の頃からそうだったのですが、創業支援系の会社が手がけていたコワーキングスペースには、このオープンソース的な視点が欠けているなというのが昔からよく感じていました。さらにそこを利用していた会員さんにも、オープンソース的な視点が欠けて伝えられているなという印象を持つことが多いです。

 最後に、私自身前厄の年で、来年から本厄に大殺界にと考えた場合に、コロナウイルスが現れ、世界の経済が止まり、そして来年に向けてコロナウイルスの変異種がイギリスで猛威をふるっているという、どうにも予測のつかない大変な時期になったと思います。大変な時期をどのように知恵を合わせていくかということを考えていくにあたって、かなり力になる基礎的な考え方のひとつがオープンソースで、それに基づいて行動を起こしたり意見を交換したりすることが許される場所として、コワーキングスペースが注目されるとみています。この力が発揮できるように、今一度皆様がオープンソースというカルチャーを理解して、コワーキングスペースに関与していってほしいと願うばかりです。でなければ、乗り越えられない時代になっているのではないかと感じております。


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