見出し画像

コワーキングスペースの利用者さんに店番を頼んでやらせてみた

コミュニティー運営者限定アドバントカレンダー2020で書いております。コワーキングスペースもりおかをやっております川村と申します。今年はコワーキングスペースの運営・経営という視点で、人によっては「なんじゃそれ?出来んの?馬鹿なの?」という話をしようと思います。

店番を頼もうとした事情と背景

 今年の10月11月に岩手大学の社会人講座を受講する関係で、この講座を受講している時間を利用者さんに店番を頼んでみようということで、募集をかけました。これはいつかどうしてもやりたかった理由があります。

 コワーキングスペースの店番というと、アルバイトや社員という形でスタッフを募集して、その時間に受付やイベントのサポートとかをさせて、売上や助成金から給与を支払うという形が、一般的なイメージかと思います。
 しかし、コワーキングスペースは開いているオーナーやスタッフだけが作っているのではなく、この世界でコワーキングスペースを利用したりしている人も含めて、関わりあいつながりあいながらお互いに平等の立場に立って作っていくという関係性であると教えられたのがありまして、そこまで日常の仕事が忙しいものではないとした場合に、普段の利用者がリーダーシップをとって店番をしてても成立するのではないかというのがありました。正直私のイメージやキャラクター性が、コワーキングスペースというビジネスにつき過ぎるのはよくないと思っていたのもあるし。実際にスペインのスペースでは普通にやっていたりしていますし、かつてあったノラやさんでも試みようとしたことでした。やるにあたっては、関西に赴いた時にカフーツの伊藤さんから上記のケースを聞いたことや、経堂でやっていた時に初めてPAX Coworkingに行ってきた時の体験、ノラやさんの2つのブログ記事が大いに参考になりました。ノラやさんの2つのブログ記事は、理由や事情背景とも重なっているところもありましたので、本当に心強かったです。

ノラヤで店番を募集しはじめたわけ
http://sendaiworkspace.hatenablog.com/entry/2017/03/16/152739

他のコワーキングスペース(クラウドガーデン)で店番をしてよかったこと
http://sendaiworkspace.hatenablog.com/entry/20140820/1408533383

もしこの通り店番を任せても大成功だったりすれば、これは小さなコワーキングスペースの経営視点でいえば人件費を省くことができますし、オーナーさんでもスタッフさんでも別のコワーキングスペースに行き交うことができるようにもなって、この業界にも利用者さんにも相互の事業の活性化につながっていくのではないかと考えたからです。さらには複数のコワーキングスペースと契約して、相互に店番やスタッフとして自由に働ける風土とかにも繋げられるのではないかというところも含めています。

とはいえ、それでも私は、信頼関係から店番を頼むことについて、疑問点や疑念する点は持っていました。ただ、見聞を疑ってばかりで否定する発言しかせず何もやらないのでは、疑問点の解決にもコミュニティの成長にも全然ならないので、やらないよりはやった方がましと考えて、条件はつける形でやる事にしました。

店番を任せる事前準備として

店番をするにあたって、次のようなことを決めました。

  • 指定した日の午前・午後の中でどこか希望があれば、その時間帯で店番をお任せする。希望があれば1日中任せても良い。

  • 店番の方だけの完全な貸切としては利用しない。別の誰かとスペースを共有することが前提なので、そこが理解できるのであればOKとする。

  • 会社勤めの方は、勤務時間中に副業やセカンドオフィスの勤務を容認していることを証明してもらえるか、また土日休みに来れる方かどうかの方に店番をお任せする。

  • 店番をしながら、自分のやりたいことをやってもよい。それが店番を頼む方の事業であれば、それで販売や利用料をとっても良い。コワーキングスペースという形でやりたかったら、うちの料金とは別にしても構わない。

  • 店番中にコワーキングスペースとして利用しに来た方の分の利用料金は、店番を頼んだ皆様の物としてよい。

  • 通常であれば後払いであるが、自分のやりたいことに没頭してしまうとわからなくなるので、店番に限り前払いで対応してもらう。

  • コワーキングスペースもりおかでやっているOFFICE PASSやいいオフィスなどのサービスでご利用される利用者様には、対応できないため現金決済をお願いしてもらう。

  • 同様にカード決済やpaypayなどペイメントサービスでの支払いについても、対応できないため現金決済をお願いしてもらう。ただし、独自に上記の決済サービスを持っているのであれば、持っているものを利用しても良い。

  • 椅子やテーブルの配置は変更しても良い。設備面で満足していなければ、自身で準備して持ち込んでも良い。

  • 何かあった場合の携帯電話での連絡は、講義中のためしないようにする。
    何かあったら、戻った時に全て聞く。

  • 講義開始時間の関係もあるので、指定した時間に必ず来てもらう。

かなりの大盤振る舞いだと思います。これを店番を任せるにあたってのルールとしてひとまず決めて、9月の末に応募をかけることにしました。指定した日が平日中心だったので誰もやろうって人がいないんじゃないかと当初は考えていたので、応募がなくて元々と腹を括ってひとまずはやってみようという感じでやってみるという感じで進めていきました。

予想外の応募人数と選定にあたって

 しかし1週間も経たないうちに、7人ほど店番をやりたいという応募が来て、びっくりしました。市内、県外関係なく、現在無職の方から個人事業主の方、会社員の方からも来ました。どうして集まったのかいろいろ要因はあると思うのですが、下にあるフェイスブック配信を見ていて「人は場所に対してお金を支払いたがらないのではないのか」というくだりがあって、それがひとつの心理的な刺激として大きく働いたのではないかと思いました。

そこから応募された方に、上記の店番にあたっての条件やルールを教えると共に、希望の日と時間帯をお聞きして、応募された方の状況等含めて確認しながら担当する日時を決めることにしました。1日だけ土曜日にお願いしたい日があったのでそこに集中するのかと思いましたが、結果として水曜日に集中しました。また、会社勤めの方が入る日を有給休暇にしてでも入りたいと言ってきたので、「会社として勤務時間中に副業やセカンドオフィスの勤務を容認していることを証明してもらえるか、また土日休みに来れる方かどうかの方に店番をお任せする」というルールと照らし合わせて条件的に難しい方が4名ほどいたので、その方にはお断りしました。
で、最終的に普段から当スペースを利用されている方3名に、希望の時間帯を割り振ってお願いし承諾をいただきました。全員午後からの希望でしたので、午後だけ任せて、午前中はお休みすることにしました。ですが、その後に2名から持病の関係でキャンセルの申し出があり、割り振った2日分はお休みにすることになりました。

実際にやってみての印象

 任せてみた方について簡単に紹介をすると、1人はコロナの関係で無職ではあるのですが起業準備中の方で割と利用頻度が多かった方、もう一人は個人事業主ですが新たなプロジェクトを立ち上げたいという形で、その代わりに店番をやりたいという方で、利用頻度も数ヶ月に1度といった感じの方でした。このようにプロジェクトなどの創業にあたってのコワーキングスペースの活用のあり方にも合致しているのもあったので、この機会を活用してもらえたのはうれしかったです。

 で、店番を頼んでもらった日ですが、通常と比較してそれほど変化したという感じはありませんでした。店番の方のプロジェクトの関係で往来のある方はありましたが、普通にコワーキングスペースを利用したい方も数人いて、難なく対応も利用もしていただきました。OFFICE PASSやいいオフィスなどのサービスを活用して来られる方もいたのですが、事前に連絡をいただいていたのもあるので、店番の人にメッセージを残して対応してもらいました。利用者さん側もご協力いただけたのもよかったです。しかし、様々なコワーキングスペースのフリーパスサービスについてのオペレーションを教えるというのもよかったのではないかと思います。教えたことで、他にスペースに行って気軽にフリーパスサービスを利用できるようになると、より便利に利用できるようになるのではないかとふと感じたからです。
 そして何よりもトラブルや事件が起きなかったことがよかったです。日頃利用しているというのもあったので、このスペースの空気感を理解されている方にも恵まれたというのもあると思います。コワーキングカンファレンス2012で、ブラジルの治安の悪いスラム街のコワーキングスペースを利用した時に窃盗とかの被害に遭わなかった人がいるという話を聞いて本当なのかという疑問を感じていたのはあったのですが、やってみて本当なんだなというのを肌で感じました。

利用者に店番を頼んでみた結果と効果

 利用者さんに店番やスペースのスタッフをお願いするというのをこの秋実験的な側面を含めてやってみましたが、店番をしていただいた方からももちろん運営者側としても相互に満足できて、win-winに働いた実感がありました。店番をしてくれた側からすれば独自に発展して店舗を持ったりしていく過程での自信づけや実績作りになったと思います。この経験を金融機関へ融資を受ける際に活用してもらえるとさらに嬉しいですが。
 また運営側としては、前述の利用者の実績作りとかの機会の提供、スタッフの人件費の削減のほかに、運営者やスタッフ自身が外に出ての勉強の機会作りやスペース運営へのフィードバックにつながる可能性ができたと感じました。これが可能であることを理解する人が増えて、自分のところでない様々なコワーキングスペースを利用し合い活用できる人が増えれば、相互の交流も増えてそれを通じた自身のスペースへのフィードバックや業界・文化の底上げにもなるし、「店番を頼む方の事業であれば、その事業で販売や利用料をとっても良い」というのが可能な場合には、利用者自身がフリーのコワーキングスペーススタッフやコミュニティマネージャーになるという新しいビジネスに繋げられるのではないかというイメージを持っております。
 参考としてですが、オフィス機器メーカーのOKAMURAさんが、3年前にSnowPeakさんと提携して、OFFICE CAMPERSという新しい働き方の概念を紹介したことがありました。そこに書かれていたオフィスでの7つの心得というのが、そのままこのようなどこでも店番をするにあたっての心得にも通じるのではというイメージを持っています。よろしければ、一読いただけるとありがたいです。

OFFICE CAMPERS | WORK MILL
https://workmill.jp/officecampers.html

最後にやってみたいという皆さまへ

 コワーキングスペースをされているオーナーさんの中で、何か新しい風を作るために誰か雇いたいけれども人件費がなかなか出しにくいという方がおりましたら、スタッフではなく利用者さんに店番を任せるというのは、かなり有効な手段のひとつだと思います。是非にとまでは言いませんが、お試しでやってみる感覚でやるのがおすすめだと考えております。どうしてもわからないところとか悩んでいるところとかがあれば、私に遠慮なく聞いてください。コロナウイルスという予想外の災禍に振り回された1年になりましたが、今回やったチャレンジがコワーキングスペースを通じて自由に人と人がつながり助け合っていけるように未来につなげられればいいなと願って、今回は終わりにします。長くなりましたが、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?