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微笑み/ちいさな村の ちいさな愛しい物語②


あれっと思ったのは
その人が去った後でした

その郵便配達員さんは
たまたま玄関先にいたわたしに
郵便物を手渡して下さったのですが
何かが違いました

その人は
微笑んでいたのです

お忙しいであろうに
静かな動作で

郵便物を届けることに
よろこびを感じておられる
そんな微笑みでした

それ以来
自宅のポストを覗くことが
以前にも増して楽しみになりました

郵便物を見つけるたびに
その人の微笑みを思いました

何年かして
配達員さんが変わり
さみしく思っていたのですが

先日 近所の家に
郵便局の赤い車と
見覚えのある後ろ姿

わたしは
立ち止まってしまいました

その人は
小包を大切そうに抱え
玄関先に立っていました

家の方に荷物を手渡すと
帽子を取り
感謝の言葉を伝え
深くお辞儀をされました

お顔は見えませんでしたが
あの日のように
きっと
微笑んでおられたことでしょう






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