【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第0話
――ぼくはすくえなかった
光も届かない漆黒の海の中を白い巨体のくじらが尾鰭をバタつかせ、慌てるように潜っている。
慌てる白いくじらに対して、海の中は静かだ。
ーこのこはきぼう。あのくにをかいこくするのにひつようだ
白いくじらは泳ぎ続けると漆黒の海の中にポツンポツンと光り輝く玉が現れる。
光り輝いているのは大きな海月達。どこかへ導くように発光する海月達は列になって漂っている。
――もうすぐだ
白いくじらは発光する海月達の列を道しるべに更に潜っていく。
長い海月達の列は漆黒の海の底へ続いている。白いくじらは力強く尾鰭をバタつかせ、加速させる。
その先には海底に太陽のように光り輝く巨大なドームが眼前に現れる。
――やっとついた……
白いくじらは安堵するが、力強かった尾鰭の動きが徐々に弱くなる。そして、巨大な半球体の手前で力尽きたように海底に沈む。
〈続く〉
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