見出し画像

「 改めて 『 きのこ漫画名作選 』 について 」

コスモテックの青木です。

先日、 2013年に加工のお手伝いをさせていただいた書籍 『 胞子文学名作選 』 について改めて note 記事 にてご紹介させていただきました。今回は製作・加工のお手伝いをさせていただいた名作選シリーズ( と、私が勝手にそう呼んでいる )からもう一冊ご紹介させていただきます。

ブックデザインは 『 胞子文学名作選 』( 2013年製作 ) と同様にセプテンバーカウボーイ 吉岡秀典さん。出版は Pヴァインその名も 『 きのこ漫画名作選 』 です。 『 胞子文学名作選 』 から3年経過した 2016年に吉岡さんに再びお声がけいただき、コスモテックにて箔押し加工に挑ませていただいたのでした。 


◉ 『 きのこ漫画名作選 』 とは?

下記は 『 きのこ漫画名作選 』 の出版社 Pヴァインより

「 すべての "きのこ中毒者" へ 」
カバー前面に金箔を施した、初版限定3000部の超豪華特殊装幀本!


白土三平、つげ義春、松本零士、白川まり奈ほか、漫画家が描く 「 きのこモチーフ 」 作品を多数収録! きのこマニア と きのこファンに捧げる、ありそうで無かった 「 きのこ漫画 」 アンソロジー!!

食材としてはもちろん、雑貨、切手、写真、文学、音楽、映画、アート、アプリなど、コレクションアイテムとしても絶大な人気を誇るきのこ。

本書は、『 きのこ文学大全 』 や 『 マジカル・マッシュルーム・ツアー 』 など、きのこ関係の著書が多い飯沢耕太郎が、数万冊ある蔵書のなかから、きのこ漫画のみを厳選。 ありそうで無かった 「 きのこ漫画アンソロジー 」 が誕生した。

装幀は 『 きのこ文学名作選 』、『 胞子文学名作選 』 を手がけた吉岡秀典( セプテンバーカウボーイ )。 植物ではなく動物でもない、滋養を持ち毒を持つきのこの、謎、毒、神秘性をブックデザインで体現する。きのこを愛するすべての人たち必携の一冊!!

出版社 Pヴァイン より

◉ 『 尋常じゃない 箔押し 』 を実現するために

下記は コスモテックのブログ 記事( 2016年4月 )に加筆・修正したものです。

『 きのこ漫画名作選 』 のカバー前面( 表紙から背にかけて )に施した 『 尋常じゃない 箔押し 』 について、ご紹介します。

「 この箔押し尋常じゃない 」 「 このブックカバー尋常じゃない 」
一撃でその佇まいの異質さ、異様さに目が奪われる そして、とにかく眩い!!!


今回のカバーの箔押し表現はセプテンバーカウボーイの吉岡さんご自身の年賀状シリーズ( 2014年 - 2016年 )の製作・加工で実際に使用された 『 実験的 加工表現 』 から生み出された部分がかなり大きなウエイトを占めております。

左から 2014年・2015年・2016年 
セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典さんの年賀状シリーズ

・ くしゃモコ箔押し?

吉岡さんはご自身の年賀状( 特に2016年版 )でデータの組み方、見せ方などの実験的要素をすでに経験済みだったこともあり、『 きのこ漫画名作選 』 で用いた 『 くしゃモコ箔押し 』( と、私は勝手に呼ばせてもらっています )は吉岡さんの中でも仕上がりイメージがある程度予測でき、私も同様でした。

セプテンバーカウボーイ 2016年年賀状の拡大写真
『 きのこ漫画名作選 』 カバーの箔押し表現のヒントが詰まっている


しかしながら、年賀状のサイズで押すのと、カバー前面の大きな面積で押すのでは、箔のもたらすインパクトが想像以上に強くなり、いざ押してみると… 『 きのこ漫画名作選 』 が黄金色の妖しい輝きを放っている様子を目の当たりにして 「 これは本当に凄い! 」 と思わず唸ってしまいました。

神々しくもどこか妖しく光輝く
箔押しカバー黒の部分は印刷の黒色 黒色部分もぷっくりしている


吉岡さんが校正の段階で 「 これ、めちゃくちゃいいですね! 」 と電話口でめずらしいくらいテンションが高かったのが今でも忘れられません。
 私も現場の職人たちも にんまり嬉しくなってしまったのでした。

校正の段階では発色が微細に異なる3種類( 3号金・6号金・26号金 )の箔色を検証・箔押しし、吉岡さんに提出しました。そして電話にて、

吉岡さん: 「 青木さんはどの箔色が良いと思う? 」
青木  : 「 私は 26号金 が一番合うかと!( 即答 ) 」
吉岡さん: 「 ピンポーン!! 大正解! 」

製作・加工の裏ではこんなやりとりが繰り広げられてました。

最終的に選ばれた箔色は26号金 他の金と比較すると金の赤みが強い
赤みの強い金と部分的に見える印刷の黒色が相まって どこか妖しい雰囲気に
少し横から見るとより金箔押しした箇所の もっこんもっこん感がより伝わる
立体的で、物質感がすごい


ここで吉岡さんと意見が完全に一致したことにも私は胸が熱くなりました。 多くの皆さんに、『 きのこ漫画名作選 』 を実際にお手に取って欲しい、そして、「 カバーの 『 くしゃモコ箔押し 』 でびっくりして欲しい! 」 と私は思います。

◉ 吉岡さんとのガチンコ勝負

吉岡さんに度肝を抜かれること、驚かされることが仕事上 本当にたくさんあるのですが、「 セプテンバーカウボーイの吉岡さんを箔押しでぎゃふん!! と言わせたい! 」 と常々 私は思っています。私の中では吉岡さんとコスモテックとのガチンコ勝負だと勝手に思って挑ませていただいております。

さて再度、この 『 くしゃモコ箔押し 』 について。 実は彫刻版やエンボス( 浮き出し )版を使用せず、ごく一般的な箔押し版のみでぷっくり、盛り上げ表現しているところが本当に凄いところなのです。

「 彫刻版を使った箔押しではないの? 」 「 盛り上がっているのにエンボス加工ではないの? 」「 一体どうやって箔押し表現しているの? 」 と考えてしまうかもしれない
年賀状のデザインデータづくり、加工実験がふんだんに活かされている
また年賀状は全面箔押しだったのに対して
カバー余白( 黒印刷部分 )の見せ方が秀逸!


デザインデータの組み方・箔表現の見せ方は、デザインを細部まで吉岡さんがしっかり計算して加工の版データを作り、コスモテックの技術で贅沢・そして大胆な箔押し表現で見せる…

計算と技術、何よりデザイナーと加工現場の勢いが ガチっとハマった瞬間、 『 くしゃモコ箔押し 』 で妖しく、カバーの紙面上に不思議な きのこワールドが全開しました!

◉ いろいろやってきたもんだ!

『 胞子文学名作選 』( 2013年製作 )から3年後に 『 きのこ漫画名作選 』( 2016年製作 )へと繋がり、今振り返れば セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典さんから製作・加工でお声がけいただいた この2冊の書籍への加工経験は 2024年現在もコスモテックの血となり肉となり、技術として生き続けている大切なお仕事となりました。

そして、発売 / 刊行から年月が経過しているのにも関わらず、きのこファンの方々、さらには装丁ファンの方々からも未だに熱い視線を集める 『 きのこ漫画名作選 』 などの名作選シリーズの加工に関わらせていただいたことは私にとっても大きな励みになっています。

『 胞子文学名作選 』 には コスモテックの十八番 『 つばめ返し 』 を。
そして『 きのこ漫画名作選 』 には 吉岡さん年賀状からの 『 くしゃモコ箔押し 』 を。

吉岡さんから難易度の高い箔押し加工をご依頼いただくのみならず、これまでのさまざまな印刷加工実験やお仕事を通して、箔押し職人たちと共に一緒になって着地点を探したり最適解を見つけてきました。本当にいろいろ挑戦して積み上げてきたこと、今もそれが幸運にも続いていることは本当に嬉しいことです。 コスモテック一同、今後とも精進して参ります!

◉ 初版限定3000部の超豪華特殊装幀本
『 きのこ漫画名作選 』 は下記 EC ショップで販売中!
( 2024年8月現在 )

【 連絡先 】
ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ
http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/

有限会社コスモテック 青木政憲
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?