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「 JAXA 『 BepiColombo・みお 』 ステッカー 制作 - 完成編 - 」

こんにちは。 現場の前田です。

JAXA( 宇宙航空研究開発機構 ) / ISAS( 宇宙科学研究所 ) BepiColombo プロジェクトによる 『 BepiColombo・みお 』 のステッカー制作( デザインと製作 )について、前回の note 記事 では 「 試作編 」 をご紹介しましたが、今回はいよいよ 「 完成編 」 を皆さまにお届けします。


◉ 試作時の JAXA からのアドバイス

前回の note でご紹介させていただいた試作( テスト )版 『 BepiColombo・みお 』 のステッカーをプロジェクトチームの皆さまに じっくりとチェックしていただき、さまざまなアドバイスをいただきました。

試作( テスト )版 『 BepiColombo・みお 』 のステッカー

いただいたアドバイスは大きく分けて4点です。

① 水星の上部にある、印刷によるグラデーション表現の点描の粗さが目立つため、きめ細かくしてほしい。
② 水星の黒い印刷部分と濃く青い印刷部分の色の境目が目立つため、境目を可能な限り馴染ませてほしい。
③ JAXA・ESA のロゴマークのサイズを大きくしてほしい。
④ ステッカーの箔押し加工の存在感をもう少し感じられるよう、箔押し部分を増やしてほしい。

試作( テスト )版をご覧いただいた上で、JAXA プロジェクトチームの皆さまからいただいた上記のアドバイスをもとに、再度 完成に向けてデザインを練り直しました。

完成版ステッカー
試作( テスト )版にさまざまな調整・変更を加えている

◉ ステッカーデザインに組み込んだ変更点

まず、プロジェクトチームの皆さまのアドバイスから ① 印刷のグラデーションの点描の細かさを変更することでグラデーションを滑らかにし、② 印刷の色が水星に馴染むよう、水星の印刷部分の図案に調整を加えました。

①② をとおしてデザインで意識したポイントは 『 とにかく馴染ませる 』 こと。 試作( テスト )版でぱきっと出過ぎたところの角を削り落とすような感覚で図案に調整を加えました。

素材と印刷加工の調和を意識してデザインを調整
ロゴマークのサイズを試作( テスト )より大きくしている
試作( テスト )同様、箔押し部分にはエンボス加工をして盛り上げている


③ ロゴマークのサイズを大きく変更し、インパクトを強めました。
また、④ あえて控えめにしていた箔押しでの表現を、パッと見で箔押し加工していることを感じられるように変更しました。水星の特徴的なクレーターやスジの部分にも箔押し加工部分を増やすことで特殊加工( 箔押し )の主張を強めに持たせるようデザインを調整しました。

さらに、コスモテックからは ①~④ の調整に合わせて印刷に使用している特色インキの色味も試作( テスト )時のものから変更することをご提案させていただきました。

完成版では特色インキの色味も変更


印刷のインキは黒、濃い青、明るい青の3色を使用しているのですが、水星の柄を表現している明るい青のインキを水星の特徴的な柄をよりしっかりと感じられるよう、試作( テスト )の時よりもほんの少し明るい色味に変更しました。

このように、試作( テスト )版をご覧になった JAXA のプロジェクトチームの皆さまからのアドバイスをもとに、馴染ませる部分、より際立たせる部分のメリハリのバランスを念入りに調整していきました。

◉ 印刷加工をさらに活かす

さらに本番では、ステッカーに使用する 『 和紙 』 や3色という色数は変えずに、印刷する順番や表現を変更しました。


プロジェクチームの皆さまからのアドバイスの中のひとつ、「 ② 水星の黒い印刷部分と濃く青い印刷部分の色の境目が目立つため、境目を可能な限り馴染ませてほしい 」 というご要望に応えるために、デザインをデータ上で調整するだけでなく、印刷の色を物理的な方法で馴染ませることにしました。

試作( テスト )時には一番最後に印刷していた明るい青のインキを一番最初に印刷し、その後に黒い印刷を刷り重ね、最後に濃い青色を刷るという順番に変更しました。

◉ 試作( テスト )時
黒印刷後 → 活版印刷で2色( 濃い青・明るい青 )を重ねる

◉ 量産時 [ 変更点 ] 
明るい青+黒印刷後 → 活版印刷で1色( 濃い青 )を重ねる

明るい青を黒い印刷の下に刷ることで、その後に刷る黒が下の明るい青の影響を受けてほんのり青みを帯びます。黒がほんのり青みを帯びることで、一番最後に印刷する濃い青ともなめらかに馴染むように印刷の順番を考え直したのです。

完成版ではホログラム箔押しの面積を試作( テスト )時よりも増やしている


そして、活版印刷や箔押し加工による印圧やエンボス加工によって素材を盛り上げることで 『 和紙 』 に立体感を持たせる工夫については試作( テスト )時と一切変えず、がっつり加圧 / 特殊加工を加えることで一枚のステッカーに立体感・物質感を感じられるよう意識しました。

水星の図案はとても繊細なため、印刷加工の現場の職人による色の調整や印刷加工の位置合わせなどの微調整を繰り返して最適な表現を模索しました。また、箔押し加工をする部分は試作( テスト )時より増えているので、本番で製作したステッカは一見して華やかさが増しているのが特徴です。

左は台紙とステッカーが一体になっている状態
右は台紙からステッカーを分離させた状態

JAXA 『 BepiColombo・みお 』 ステッカー

クライアント : JAXA( 宇宙航空研究開発機構 )
       : 水星磁気圏探査機 「 みお 」 ホームページ
デザイン   : 前田瑠璃( コスモテック )
印刷加工   : コスモテック  

こうして、試作( テスト )を経てパワーアップし 完成した 『 BepiColombo・みお 』 のステッカー。手に入れた皆さまがワッと驚いたり喜んだりしてくださったらデザイン担当 冥利に尽きます。 ステッカーの素材である 『 和紙 』、そして活版印刷、箔押し加工、エンボス加工の織り成す調和をぜひご堪能ください。

火星から水星へ。 「 MMX 」 に続き JAXA のプロジェクトステッカーの制作( デザインと製作 )をお手伝いさせていただき、本当にありがとうございました!

【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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