マガジンのカバー画像

つれづれの道草

100
運営しているクリエイター

2017年2月の記事一覧

境界と壁

境界と壁

10年近く前、松本に突然行った。
その数ヶ月前に友人がスピコンに出店すると聞いていたが、全く興味が湧かなかった。
結局、ある程度エネルギーを現実世界で巧みに使えても、人間性や品性が低いと、ロクなことをしない。目に見えないから気づかれないとタカをくくって、人を平気で傷つけていく。お互いさまの学びあいなんだとは思うけど…。
その頃、その人自身のもともとある力に敬意を払い、きちんと本人に返すことができる

もっとみる
糸

つい昨日は母方の祖母の17回忌の法要だった。
叔父さん、叔母さん、従兄弟たち…。
ほんの数年会わなかっただけなのに、皆どこか曲がったり傾いたり、年齢以上に日々の痛みで漂白された表情をしていた。
檀家さん一家の時の流れを見ていると、若いころのちょっとしたクセは、歳を重ねるほど抜けないもんだとH氏は、言っていた。
どの人も頑固なものはより頑固に、のんびりしたものはよりのんびりに、乾いた膠のように性分が

もっとみる

浮いたカカトの下を覗く

退職して1ヶ月と少し。
曖昧な世界との境界、ふよふよした皮一枚の皺の一本一本をなぞって、ゆっくり確かめていた。
握りしめたこぶしが、取り戻した日常の温かい血液が通うにつれて、やっとやわやわと緩んできた。

使い込んだ身体の節々が、外へ外へ痛みの声を上げ始めて1週間後、知らずとそこらじゅうに手が伸びてほぐしていた。
痛みを抜くためというより、いまの自分のありようを念入りに聴いている感じ。
触れていく

もっとみる
カメ

カメ

今日は閉店間際のスーパー駐車場で車が動けなくなった。広々した空間で大きくハンドルを切った途端、タイヤの空転する唸りで、あ、やったか〜と淡いオレンジ色の雪を見た。
正味40分、小さいブラシで前輪まわりに噛んだ雪を掻き出しては、前に後ろにアクセルをゆっくりふかすのを繰り返した。3回同じ作業をしたところで、運良く除雪車が通路を走り始めた。きれいになった通路まで、約10メートル。
車の下でなく、この先通る

もっとみる