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「ゆりかもめ」はモノレールじゃない?そもそも、モノレールとは?(勝手に鉄道検定:問211~問220解説記事)

ご覧いただきまして、ありがとうございます!
この記事では、問211~問220の「解答・解説」をします。

タイトルの答えは、「解答・解説」を見る中で分かります。
「解答・解説」を見る前に問題を確認したい方は、下記のリンクからご参照ください。

【凡例】
出題日 : 問題の難易度
 問題の概要(出題記事へのリンクを張っています)


問211 (2021/01/16) : ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(Lv. 1)
 車両の走行時に線路と触れているもの

問212 (2021/01/17) : ★★☆☆☆☆☆☆☆☆(Lv. 2)
 懸垂式のモノレールを運営する会社

問213 (2021/01/18) : ★★★☆☆☆☆☆☆☆(Lv. 3)
 レール間の幅を表す言葉

問214 (2021/01/19) : ★★★★☆☆☆☆☆☆(Lv. 4)
 線路の下に敷き詰められた石の名前

問215 (2021/01/20) : ★★★★★☆☆☆☆☆(Lv. 5)
 「ゆりかもめ」などの分類

問216 (2021/01/21) : ★★★★★★☆☆☆☆(Lv. 6)
 サードレールから集電しない路線

問217 (2021/01/22) : ★★★★★★★☆☆☆(Lv. 7)
 スイッチバックが不要な駅

問218 (2021/01/23) : ★★★★★★★★☆☆(Lv. 8)
 在来線や新幹線における軌間の説明

問219 (2021/01/24) : ★★★★★★★★★☆(Lv. 9)
 アプト式機関車が走行する区間

問220 (2021/01/25) : ★★★★★★★★★★(Lv. 10)
 三線軌条が敷設されていない区間

それでは、「解答・解説」に移ります。


問211の「解答・解説」

【問211】JRの在来線や新幹線などの一般的な鉄道車両が走行するとき、レールと触れているものは何か?

1. ゴムタイヤ
2. スクリュー
3. 車輪

正解は、「3. 車輪」です。
一般的な鉄道車両は、車輪レールの上を走行します。

選択肢は、「ゴムタイヤ」「スクリュー」「車輪」でした。
これらはそれぞれ、「自動車」「」「列車」が進むためのものです。
もちろん、これだけでは進めませんが、エンジンやモーターなどの話は割愛します。

ちなみに、JRは列車だけでなく自動車(バス)も運営しています。
それらについて、簡単に説明します。

◆JRとバス

JRは高速バスも運営しています。
東京駅などでは、「つばめ」のマークが書かれた白地に青色のラインをした車両をよく見かけます。

また、JR九州が運営する高速バス「B&S みやざき」では、新八代駅にて九州新幹線と乗り継ぎが良くなるように運転時刻が設定されています。

高速バス以外にも、JRはBRTという形でもバスを運営しています。
BRTはBus Rapid Transitの略です。
従来のバスとの違いは、BRT専用道を確保することで渋滞などに巻き込まれにくく定時性がより確保しやすい点が挙げられます。

◆JRと船

日本三景の1つでもある厳島(宮島)へと向かうフェリーの1つは、JR西日本によって運営されています。
JR西日本のフェリーからは、厳島神社の鳥居を近くでご覧になれます。
2021年1月現在は残念ながら海上に建つ鳥居が改装中ですが…

ちなみに、JR西日本の宮島フェリーは青春18きっぷでも利用可能です。


◆問211のまとめ

JRのみに焦点を当てて話しましたが、私鉄各社もバスなどを運行している例はあります。
鉄道会社は列車だけを運営するものではない、ということです。

最後に、一般的な鉄道車両は車輪レールの上を走行するものです。
しかし、ゴムタイヤで走行する列車が無いわけでもありません。
これについては、この後の問題にて扱いたいと思います。


問212の「解答・解説」

【問212】千葉都市モノレールと神奈川県の〇〇〇は、懸垂式のモノレールを運営する。〇〇〇に入る鉄道会社名は何か?

1. 大阪モノレール
2. 湘南モノレール
3. 北九州高速鉄道

正解は、「2. 湘南モノレール」です。
神奈川県を走る湘南モノレール江の島線は、懸垂式のモノレールです。

鉄道と聞くとJR山手線東海道新幹線のような路線をイメージする方も多いかと思います。
しかし、モノレールも立派な鉄道路線です。
問211~問220では、モノレールなどもテーマに含みます。

モノレールとは、1本のレールで走行する鉄道のことをいいます。
一方、JR山手線東海道新幹線などの一般的な鉄道は2本のレールで走行をします。

大まかにモノレールと言っても、大きく分けて2種類あります。
その分類は、1本のレールが車両のにあるかにあるか、です。

懸垂式(けんすいしき) : 車両が、にあるレールにぶら下がる方式
跨座式(こざしき) : 車両が、にあるレールにまたがる方式

日本で運行されている多くのモノレールは、跨座式です。
羽田空港へのアクセス手段である東京モノレール羽田空港線も跨座式です。
選択肢にある大阪モノレール北九州高速鉄道跨座式のモノレール路線を運営する会社です。

一方、懸垂式のモノレールを運営する会社は少ないです。
有名なものでは、千葉都市モノレール湘南モノレールがあります。
かつては、東京都交通局により上野動物園モノレール(上野懸垂線)が運営されていましたが、現在は休止となっています。

湘南モノレール江の島線は、大船駅~湘南江の島駅を結ぶ路線です。
江の島線まで含めて呼ばれることは少なく、単に湘南モノレールと呼ばれることが多いです。
大船(おおふな)駅にはJR東海道本線JR横須賀線等が通り、成田空港へのアクセス手段である特急成田エクスプレスの終点になることもある駅です。
湘南江の島駅から海までは少々歩きますが、江ノ島周辺の町並みを散策することができます。

懸垂式のモノレールでは、空中を浮遊しているような感覚を味わえます。
是非とも懸垂式のモノレールに乗ってみてください!

ちなみに、モノレールの方式である懸垂式、跨座式には更に細かく分類したアルヴェーグ式サフェージュ式などもあります。
これらの説明は、この記事では割愛したいと思います。


問213の「解答・解説」

【問213】レール間の幅を表し、鉄道模型の「N〇〇〇」でも使われる〇〇〇に入る言葉は何か?

1. ゲージ
2. トラス
3. カント

正解は、「1. ゲージ」です。
Nゲージなどの「ゲージ」は、レール間の幅を表す言葉です。

ゲージがレール間の幅を表す言葉だと知らない方も、Nゲージは聞いたことがあるかもしれません。
自分も最初にNゲージを知ったときは、ゲージがレール間の幅を表す言葉ということは知りませんでした。

ゲージ(Gauge)は、日本語では軌間(きかん)といいます。
注釈が無い状態で「軌間」という言葉を使うと分かりにくいかと考え、問題文などでは「レール間の幅」と表現していました。

普通鉄道(モノレールなどでない一般的な鉄道)では、鉄道車両が走るためには少なくとも2本のレールが必要になります。
レールが2本あるので、それらのレールの間には間隔ができます。
この間隔が、ゲージ(軌間)です。

軌間は、鉄道会社路線によって異なります。
JR山手線東海道新幹線ではゲージが異なりますし、同じ近鉄線でも路線によってゲージが異なります。
種類や詳細な数値は、この後の問題にも関係するので割愛します。

ちなみに、鉄道模型のNゲージでは軌間が9mmとなっています。
Nineの頭文字を取ってNゲージと名付けられました。

トラスは、鉄道橋などで使われるトラス構造のことです。
部材を三角形に組み合わせ、三角形になった部材を更に何個も組み合わせて作った橋をトラス橋と呼びます。
鉄道橋ではないですが、東京ゲートブリッジはトラス橋の1つです。

カントは、線路の曲線部でつけられる傾斜のことです。
列車は高速でカーブするので、遠心力が発生して車体を外側に引っ張る力が発生します。
遠心力により、車両が脱線する恐れもありますし乗り心地も悪くなります。

カントの役割は、その遠心力を打ち消すことです。
曲線の外側のレールが、内側のレールよりも高い位置に敷設されています。


問214の「解答・解説」

【問214】鉄道車両が通過したときの衝撃吸収や消音などの効果を持つ、線路の下に敷き詰められた石の名前は何か?

1. バラスト
2. 犬釘
3. 枕木

正解は、「1. バラスト」です。
線路の下に敷き詰められた石は、バラストといいます。


いきなりですが、鉄道車両はどれくらいの重さがあるかご存知でしょうか?
JR山手線を走っているE235系(11両編成)では、約340.8tになります。
モーターなど車両設備により重さが変わるので全ての車両が同じ重さというわけではないですが、平均すると1両あたり31tほどになります。
こんなにも重い鉄道車両が高速で走行しますから、地面への衝撃走行音も相当なものになるはずです。

そんな衝撃や走行音を吸収する役割があるのが、バラストです。
鉄道において、バラストは線路が敷設される路盤を形成するためのという文脈で使われます。
船舶などの安定性を向上させるためのものという文脈で使われることもあるそうです。(例:バラスト水

枕木は、レールが動かないように固定する役割を担います。
仮に、バラストの上にレールを直接置いたらどうなるでしょうか?
恐らく、車両が通過するたびにレールの幅や高さがバラバラとなり、安全に運行することは難しいでしょう…
レールの幅や高さを固定する枕木は、安全運行を実現するために重要です。

しかし、レールを枕木の上に置くだけで固定されるわけではありません。
レール枕木をしっかりと繋ぎ合わせる部品が必要です。
その部品が、犬釘です。
犬釘の突起がところどころ犬の鼻や耳に似ていることに由来します。

最近では、高架化される路線も増えてきました。
高架路線では、バラスト軌道ではなくスラブ軌道となるケースもあります。
スラブ軌道では、一般的にバラスト、枕木、犬釘は不要です。

高架路線では、スラブ軌道の他にも「弾性まくらぎ直結軌道」という方式もあります。
秋葉原駅~つくば駅を結ぶつくばエクスプレスでは多くの区間でこれが採用されており、消音のためのバラストも敷き詰められています。

最後に、1つだけお伝えします。
バラスト軌道の路線では、バラストが崩れてレールが不安定になったら困るかと思います。
そうならないように整備しているのが、主に終電の後~初電の前に行われる保線作業です。

保線とは、線路の保守を行うことです。
保線作業では、バラストなど路盤を固めたりレールの歪みを矯正するためのマルチプルタイタンパーなどが活躍しています。
いつも安全に鉄道を利用できるのは、保線作業をしてくださっている方々の貢献が大きいことも覚えておきたいですね。


問215の「解答・解説」

【問215】ゆりかもめ(東京都)やポートライナー(兵庫県)などの分類として、正しいものはどれか?

1. モノレール
2. 新交通システム
3. LRT

正解は、「2. 新交通システム」です。
ゆりかもめやポートライナーは、新交通システムに分類されます。

新交通システムという名前を聞き慣れない方も多いかもしれません。
ゆりかもめポートライナーなど、コンクリート上をゴムタイヤで走行するタイプの鉄道が「新交通システム」と呼ばれます。

ここで、ゆりかもめ、ポートライナーの正式な路線名のお話です。
実は、どちらにも「新交通」の文字が含まれています。

ゆりかもめは、「東京臨海新交通臨海線」といいます。
余談ですが、東京のお台場を走行する路線は「りんかい線」「ゆりかもめ」の2路線です。
JR埼京線と直通をする東京臨海高速鉄道りんかい線と、一般にゆりかもめと呼ばれる東京臨海新交通臨海線、お台場へアクセスする路線は実はどちらも「りんかいせん」だったというお話でした。

ポートライナーは、「神戸新交通ポートアイランド線」といいます。
近くに「六甲ライナー」という新交通システムの路線がありますが、こちらの正式な路線名は「神戸新交通六甲アイランド線」です。

ゆりかもめやポートライナーなどの新交通システムの路線では、案内軌条と呼ばれるガイドレールに沿ってコンクリート上をゴムタイヤで走行します。
JR山手線などはレールの上を車輪で走りますが、ゆりかもめなどはレールでなくコンクリートの路面ゴムタイヤで走ります。
どちらにもレールはありますが、その役割が異なります。

新交通システムは、モノレールと間違われることも多いです。
日常会話で、「ゆりかもめって、お台場を走ってるモノレールだよね!」と言われても訂正することはしないですが、この記事を読んでくださった方は「ゆりかもめはモノレールじゃない」と覚えていただければ幸いです。

モノレールの名は「mono(1つの) + rail(レール)」に由来しています。
つまり、1本のレールで走るのがモノレールです。
ゆりかもめでは走行する面にあるレールは0本です。
ガイドレールは車両の両側面にあるので、案内軌条を含めればレールは2本とも言えます。
どちらにせよ、新交通システムの路線はモノレールではありません

ところで、ここまで新交通システムモノレールを並列に扱ってきましたがこれらは並列関係ではありません
実は、モノレールも新交通システムの1種だと見なすことができます。

新交通システムとモノレールなどの関係は、下記の通りです。
モノレールLRT(次世代型路面電車)は、新交通システムの1種です。

新交通システム(広義の新交通システム)
 - モノレール
 - AGT(狭義の新交通システム)
 - LRT

AGTは、日本語では「自動案内軌条式旅客輸送システム」といいます。
Automated Guideway Transitの頭文字をとって、AGTです。
ゆりかもめポートライナーは、厳密に言えばAGTの路線となります。

ただ、一般的に「ゆりかもめはAGTの路線です」と案内されることは少なく「ゆりかもめは新交通システムの路線です」の方がメジャーかと思います。
知識の1つとして、AGTという名前を覚えておいていただければ嬉しいです。


問216の「解答・解説」

【問216】パンタグラフを持たずサードレールから集電する車両が走る路線として、間違っているものはどれか?

1. 東京メトロ銀座線
2. 東京メトロ丸ノ内線
3. 東京メトロ副都心線

正解は、「3. 東京メトロ副都心線」です。
銀座線と丸ノ内線の車両は、第三軌条方式によって集電しています。

電車の上にある菱形のものは?」と聞かれたら、パンタグラフを連想する方も多いかもしれません。
菱形でないものもありますが、パンタグラフは電車が走るための電気を得る(集電する)ために必要なパーツです。
しかし、車両が集電する方法はパンタグラフだけではありません

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これは、東京メトロ丸ノ内線です。
車両の上にはパンタグラフが無く、電気が流れる電線もありません
それでも、丸ノ内線は電気の力で走る電車であることは確かです。

では、丸ノ内線の車両はどのように集電しているのでしょうか?
車両が走っていない側の線路を見た方が確認しやすいと思いますが、2本のレールがある場所よりも少し高い位置に3つ目のレールが確認できます。
この3つ目のレールには、電気が流れています。
つまり、車両の上にある電線ではなく、車両の横にある3つ目のレールから集電します

この3つ目のレールをサードレール(third rail)といいます。
東京メトロの路線のうち初期に作られた銀座線丸ノ内線の車両は、車両の脇にある集電靴と呼ばれるパーツをサードレールに当てて集電します。
このような集電方式を、第三軌条方式サードレール方式)といいます。
ちなみに、集電靴はコレクタシュー(collector shoe)とも呼ばれます。

ここで、パンタグラフで集電する方法に名前は無いのか?と思った方も居ると思います。
集電靴でサードレールから集電する方法を第三軌条方式と言うのに対して、電線からパンタグラフで集電する方式を架空電車線方式といいます。

ちなみに、車両の上にある電線は架線(かせん)といいます。
列車遅延などの理由で「架線に障害物が…」と聞くこともあると思います。
「かせん」と読める言葉は河川、仮線など多くあるので、区別をするために架線(がせん)と濁って呼ぶこともあります。

ここまでの情報を整理します。

【架空電車線方式(かくうでんしゃせんほうしき)】
特徴 : 架線からパンタグラフによって集電
例 : JR山手線東海道新幹線小田急小田原線

【第三軌条方式(だいさんきじょうほうしき)】
特徴 : サードレールから集電靴によって集電
例 : 東京メトロ銀座線東京メトロ丸ノ内線札幌市営地下鉄南北線

東京メトロの路線は、銀座線と丸ノ内線以外は架空電車線方式によって集電をしています。
第三軌条方式には、トンネルの断面積が小さくて済むメリットがあります。
銀座線や丸ノ内線は、トンネルを掘削する技術が今ほど発達していなかった頃に完成した路線です。
なので、トンネルの断面積が小さくて済む第三軌条方式を採用しました。

一方、第三軌条方式の路線は架空電車線方式の路線と直通運転をすることは極めて難しいです。
日本を走る多くの路線が架空電車線方式なので、第三軌条方式にしてしまうと相互直通運転が難しくなるデメリットもあります。
東京メトロで一番新しい路線である副都心線は、東急東横線西武池袋線東武東上線などと直通運転をしますし、架空電車線方式です。


架線があるのか、サードレールがあるのかというのは、鉄道に興味が無いとなかなか気にしないポイントかもしれません。
この記事を見てくださった後に地下鉄などに乗ったとき、少しでも気にしてもらえたら嬉しいです。

最後に注意ですが、サードレールにはもちろん電気が流れています。
万が一線路に転落してしまった際、サードレールには絶対に触れないようにご注意ください。


問217の「解答・解説」

【問217】2021年1月現在、発着時にスイッチバックが必要な構造を持つ駅として間違っているものはどれか?

1. 姨捨駅
2. 湯田中駅
3. 大畑駅

正解は、「2. 湯田中駅」です。
湯田中駅のスイッチバックは、2006年の駅改修工事により廃止されました。

ここまで当たり前のように「スイッチバック」という言葉が出ています。
この記事を読んでくださっている方の中には、「スイッチバックって何?」と思う方が居るかと思います。
まずは、軽くスイッチバックについて説明します。

列車はいつも平坦な場所を走る訳では無く、山の中なども通ります。
山を登ったり越えたりするには、坂道を走る必要があります。
とても急な坂にして直線的なルートにすれば早く目的地まで着きそうです。

しかし、鉄道車両はとても重いので急な坂には耐えられません
最悪の場合、坂を高速で逆走した車両が脱線して麓の施設を破壊してしまう危険性もあります。
よって、坂の勾配をなだらかにする必要があります。

勾配をなだらかにするためには、遠回りしてジグザグに線路を敷設します。
日光のいろは坂や自転車で急坂を上るときにジグザグするのをイメージしていただければ、分かりやすいかもしれません。
自動車や自転車はそのままの進行方向でジグザグに進むことができますが、列車はそんな急カーブはできません

よって、列車は進行方向を変えながら進みます。
Zの字のようにジグザグに敷設されて折り返し可能な構造を持った線路や、進行方向を変えながら進むことを「スイッチバック」といいます。

坂道の話をしましたが、スイッチバックは平坦な場所でも行われます
例 : 藤沢駅(神奈川県)、飯能駅(埼玉県)、遠軽駅(北海道)

選択肢の駅は全てスイッチバック構造を持つ駅でしたが、長野電鉄長野線湯田中(ゆだなか)駅のみ現在はスイッチバックがありません。

かつては、坂道を越えたすぐ先に湯田中駅がある構造でした。
2両編成の列車を運行しているときには問題ありませんでしたが、3両編成の列車を運行する場合は3両目が坂の途中まではみ出してしまう状況でした。
坂の途中に列車が停まるというのは、望ましくない状況です。

そこで、平坦な位置に3両分のホームを作り、湯田中駅をいったん通過してスイッチバックをした後に平坦なホームに入るという構造にしました。
この構造は2006年9月に解消され、現在ではスイッチバック不要です。


姨捨(おばすて)駅は、日本三大車窓の1つにも数えられます。
善光寺平の景色、特に夜景が綺麗な場所として有名です。
近くには棚田もあり、そこに写る月は田毎(たごと)の月として親しまれています。

良ければ、こちらもご覧ください!
(夜景はありませんが…)

大畑(おこば)駅は、スイッチバックに加えてループ線がある駅です。
坂道を越えるためにはスイッチバック以外にもループ線も有効で、その2つを組み合わせた駅になっています。


こちらの記事でも、スイッチバックのある駅が紹介されています。
出雲坂根駅はスイッチバック以外にも、ある名物があります。
もし興味がありましたら、ご覧ください。


問218の「解答・解説」

【問218】「JRの在来線で多く使われる軌間である1067mmは"狭軌"と呼ばれ、九州新幹線などで使われる"1435mm"は"広軌"と呼ばれる。」この文で間違っている箇所はどれか?

1. 狭軌
2. 1435mm
3. 広軌

正解は、「3. 広軌」です。
1435mmの軌間は、広軌ではなく標準軌です。

2本のレール間にある幅のことを軌間(きかん)、またはゲージ(Gauge)といいます。
このお話は、問213でも扱いました。

ゲージという言葉は、鉄道模型のNゲージで知ってる方も多いと思います。
Nゲージは、軌間が9mmなのでNineの頭文字を取ってNゲージです。


鉄道模型なので9mmと狭いですが、実際の鉄道ではもっと広いです。
ここで、日本で使われているゲージの種類を説明します。
そのゲージを採用している路線の例も紹介しています。

ナローゲージ
軌間 : 762mm
特徴 : 建設費が安価な軽便(けいべん)鉄道で多く使われた
例 : 三岐鉄道北勢線、四日市あすなろう鉄道(内部線・八王子線)

狭軌(きょうき)
軌間 : 1,067mm
特徴 : 現在、JRの在来線のほぼ全てで採用されている
例 : JR山手線、名鉄名古屋本線、近鉄南大阪線、三岐鉄道三岐線

馬車軌(ばしゃき)
軌間 : 1,372mm
特徴 : 馬車鉄道で多く使われた
例 : 京王京王線、都営地下鉄新宿線、函館市電(2系統・5系統)

標準軌(ひょうじゅんき)・国際標準軌
軌間 : 1,435mm
特徴 : 現在、全ての新幹線一部の私鉄線で採用されている
例 : 東海道新幹線、JR田沢湖線、京急本線、近鉄大阪線

三岐(さんぎ)鉄道近鉄のように、同じ鉄道会社であっても路線によってゲージが異なる例もあります。

標準軌であるJR田沢湖(たざわこ)線も、元々は狭軌でした。
とある理由から、狭軌から標準軌へとゲージを変えることになりました。
このように、ゲージを変えることを改軌(かいき)といいます。
では、なぜJR田沢湖線は改軌をする必要があったのでしょうか?

これについては、是非ご自分で調べてみてください。
秋田新幹線について調べると、答えが分かるはずです。

ところで、762mmや1435mmなどゲージの数値は覚えにくいかと思います。
700mmや1400mmのように綺麗な数値だったら、覚えやすかったでしょう。
しかし、メートル法でなくヤード・ポンド法に変換するとスッキリします。

762mm → 2フィート6インチ
1,067mm → 3フィート6インチ
1,372mm → 4フィート6インチ
1,435mm → 4フィート8.5インチ

※1フィート=304.8mm、1インチ=25.4mm

4フィート8.5インチに関しては端数がある感が多少ありますが、メートル法での数値よりは綺麗です。

どうして、ヤード・ポンド法で表記すると綺麗な数字になるのでしょうか?
それは、ヤード・ポンド法を使用しているイギリスに関係します。

イギリスは、世界で初めて鉄道を開通させた国です。
鉄道に関するノウハウが少なかった日本は、イギリスの支援なども受けつつ日本で最初の鉄道である新橋駅~横浜駅を開通させました
この名残から、ゲージの数値はイギリスで使われているヤード・ポンド法に準拠したものとなっています。

問題の選択肢に「広軌」がありましたが、ここまで広軌の話がありません。
広軌(こうき)は、国際標準軌よりも広いゲージを指します。
ロシアやインドなどの海外では広軌の採用例が多くありますが、日本を走る普通鉄道では広軌の採用例はありません

しかし、かつては1,435mmの国際標準軌を広軌と呼んだ時期がありました。
日本では狭軌の路線がメジャーであり、明治・大正期には施設鉄道法により狭軌(1,067mm)以外の敷設が原則認められていない背景がありました。
そんな背景もあり、国際的な狭軌を日本では標準軌と呼んでいました
日本の標準軌(1,067mm)よりも広いものは全て広軌だったので、馬車軌や標準軌も当時の日本では広軌と呼ばれることがありました。

今はJRの公式文書などでも1,435mmを標準軌と呼ぶことになっていますし、国際標準軌である1,435mmを広軌と呼ぶのは間違いと言えます。


この記事を読んで、いつも利用する路線のゲージを意識してもらえるようになったら嬉しいです。
とは言え、一目見てもどの種類のゲージなのかは分からないと思います。
しかし、狭軌と標準軌を同時に見るとゲージの違いがよく分かります。

では、狭軌と標準軌を同時に見られる場所とはどこでしょうか?
色々な場所がありますが、問220に関連するお話なのでここでの紹介は割愛させていただきます。


問219の「解答・解説」

【問219】2021年1月現在、日本で唯一のアプト式機関車が活躍する区間として正しいのは「アプトいちしろ駅」から何駅までの間か?

1. 長島ダム駅
2. ひらんだ駅
3. 奥大井湖上駅

正解は、「1. 長島ダム駅」です。
アプト式機関車は、アプトいちしろ駅~長島ダム駅間で活躍します。

そもそも、アプト式とは何でしょうか?
アプト式はスイッチバックやループ線と同じく、山岳地帯など急勾配を攻略するための技法の1つです。

坂が急すぎると鉄道車両が坂の下まで滑ってしまう恐れがあるので、急な坂は避けようという話をこちらの記事でもしました。
急勾配になることを避けて、坂をなだらかにする技法が「スイッチバック」や「ループ線」でした。

しかし、アプト式は違います。
アプト式は、歯車などを利用して急勾配を滑らないように進む技法です。
距離を短くするために、スイッチバックやループ線にはせずに急勾配となる直線的なルートにします。

急勾配を滑らないように進む技法は、アプト式だけではありません。
ラックレールと呼ばれる歯形のレールと機関車に付いた歯車(ピニオン)を噛み合わせて急勾配を昇り降りする鉄道を、ラック式鉄道といいます。
アプト式は、ラック式鉄道で使われる技法の一種でありカール・ローマン・アプトという人が考え出しました。


アプト式を日本の鉄道で唯一採用しているのが、大井川鐵道井川線です。
アプト式機関車が活躍するのは、アプトいちしろ駅~長島ダム駅の1区間となります。
短い間ですが、長島ダム周辺の風光明媚な景色と共に急勾配が楽しめます。

ちなみに、井川線(いかわせん)が旅客営業を開始したのは1959年ですが、アプト式機関車が走り始めたのは1990年からです。
それは何故かと言うと、長島ダムの建設に伴って井川線のルートを変更する必要があったからです。
長島ダムの建設に伴い、アプトいちしろ駅(旧・川根市代駅)~接岨峡温泉(せっそきょうおんせん)駅間を新ルートで建設することになりました。

新ルート建設に伴い、アプト式機関車が活躍する急勾配区間長島ダム駅に加えて、ひらんだ駅奥大井湖上駅も新たに開業しました。
ルートの検討段階ではループ線を用いる案もあったそうですが、最終的には急勾配&アプト式機関車の案が採用されました。

画像2

こちらは、長島ダム駅の様子です。
写真の右側に見えている大きな機関車が、アプト式機関車です。
こちらは急勾配を登ってきた後の写真で、役目を果たしたアプト式機関車を切り離しているところです。
アプト式機関車は、アプトいちしろ駅~長島ダム駅間のみで連結されるもので、他の区間では連結されません。

長島ダム駅は名前の通り、長島ダムのすぐ近くにあります。
アプト式機関車が活躍するアプトいちしろ駅~長島ダム駅間では、長島ダムの大きな水門をご覧になれます。

ひらんだ駅は、平田の集落にある駅です。
ところで、平田のことをみなさんは何と読んだでしょうか?
この平田は"ひらた"ではなく「ひらんだ」です。
平田駅にすると"ひらたえき"と読む方が多いだろう、ということから駅名もひらがなで「ひらんだ駅」となっています。

奥大井湖上駅は、接阻湖(せっそこ)の上に建つ駅です。
テレビなどでも見たことがある方も多いかもしれません。
奥大井湖上駅の様子などは、こちらの記事でも紹介しています。
良ければご覧ください!(サムネイル画像は井川湖です)


ところで、井川線のアプト式機関車は2021年1月現在は日本で唯一です。
しかし、日本初ではありません

かつて、信越本線の碓氷峠アプト式機関車が活躍していました
碓氷(うすい)峠は、横川駅~軽井沢駅の区間で通った峠です。
横川(よこかわ)駅は、駅弁の峠の釜めしでも有名です。

元々の信越本線は高崎駅~新潟駅を結ぶ長い路線でしたが、現在は分断されJR信越本線と呼ばれる区間は短くなっています。
どのような形になっているか気になる方は、是非調べてみてください!

現在、かつてアプト式機関車が活躍していた横川駅~軽井沢駅の区間には、「碓氷峠鉄道文化むら」や遊歩道の「アプトの道」が整備されています。
これらの場所を巡り、かつてアプト式機関車が活躍した頃の信越本線に思いを馳せるのも良いかもしれません。


問220の「解答・解説」

【問220】三線軌条が敷設されている区間として、間違っているものはどれか?

1. 刈和野駅~神宮寺駅
2. 羽前千歳駅~北山形駅
3. 金沢八景駅~六浦駅

正解は、「2. 羽前千歳駅~北山形駅」です。
この区間では、三線軌条ではなく狭軌と標準軌が並走する形になります。

Lv.10の難問なので、注釈なしで三線軌条という言葉を問題文で使いました。
これまでの問題で第三軌条方式は扱いましたが、これと違うのでしょうか?

まず、第三軌条方式は集電方式の1つです。
メジャーな集電方式である、パンタグラフを使って電線(架線)から電気を集める方法を架空電車線方式といいます。
対して、集電靴と呼ばれるパーツを車両の横にあるレールに当てて集電する方法を第三軌条方式といいます。
第三軌条方式は架空電車線方式に比べトンネルの断面が小さくて済むので、地下鉄などで多く採用される傾向にあります。

そして、今回の問題で扱った三線軌条ですが、軌間に関係するお話です。
集電の話ではないので、名前の似た第三軌条方式とは関係ありません


日本で使われる軌間(ゲージ)は4種類ですが、そのうち2つは割愛します。
JRの在来線では狭軌(1,067mm)が、新幹線では標準軌(1,435mm)が主に採用されています。
標準軌は、京急本線など一部の私鉄線でも採用されています。

在来線と新幹線が同じ場所を走る、というケースは考えにくいです。
しかし、そのパターンは実際に存在します

日本を走る多くの新幹線のうち、秋田新幹線山形新幹線は特殊です。
他の新幹線は「フル規格」ですが、上記の2路線は「ミニ新幹線」です。
ミニ新幹線とは、新幹線車両を在来線に直通運転させる方式です。

要するに、ミニ新幹線を走らせる場合「在来線と新幹線が同じ場所を走る」ことになります。
それでは、秋田新幹線と山形新幹線の例を見ながら三線軌条について説明をしていきます。
※背景情報などは割愛します。

◇秋田新幹線

秋田新幹線では、峰吉川駅~神宮寺駅間で三線軌条となっています。
選択肢は「刈和野駅~神宮寺駅」となっていますが、刈和野駅駅は峰吉川駅と神宮寺駅の間にある駅ですので、こちらも正しいです。

秋田新幹線が走る奥羽本線の秋田駅~大曲駅間は基本的に新幹線用の線路が1組、在来線用の線路が1組となっています。
しかし、運転本数の確保をするために峰吉川駅~神宮寺駅間では、在来線側にも新幹線車両が通れるようになっています。
このため、この区間は三線軌条です。


◇山形新幹線

山形新幹線には三線軌条区間はありません
よって、選択肢の「羽前千歳駅~北山形駅」には三線軌条がありません

山形新幹線が走る奥羽本線の福島駅~新庄駅間は、新幹線に合わせた標準軌に改軌されています。
秋田新幹線のように在来線用と新幹線用に分かれている訳ではなく、在来線も新幹線も同じ線路を通ります。

山形駅~羽前千歳駅は、左沢(あてらざわ)線仙山(せんざん)線が通ります。
短い区間ですが、この区間では狭軌と標準軌が並走します。

また、仙山線と奥羽本線は線路の配置で平面交差をする必要があります。
羽前千歳駅付近では、狭軌と標準軌のダイヤモンドクロスが見られます。


三線軌条となる例は、新幹線と在来線以外にもあります。
それが、京急逗子線金沢八景駅~神武寺駅です。

金沢八景駅付近には、総合車両製作所(J-TREC)があります。
車両の製造を行っている施設で、最近では横須賀線のE235系しなの鉄道のSR1系200番台が話題になりました。

このように新型車両を製造したら各地の鉄道会社に届ける必要がありますが、その時に京急逗子線や短絡線を経由して横須賀線の逗子駅に出ます。
京急逗子線は標準軌ですが、横須賀線は狭軌です。
よって、金沢八景駅~神武寺駅では三線軌条となっています。

選択肢では「金沢八景駅~六浦駅」ですが、六浦駅は金沢八景駅と神武寺駅の間にある駅なので同じことです。


最後に

周辺知識も沢山お伝えしたので、最後に整理します。
ここで初めて出てくる情報もありますが、ご容赦ください。

鉄道事業法では、鉄道を下記のように分類しています。
【】内では、例となる路線名・会社名(通称も含む)を記載しています。

1. 普通鉄道【JR山手線、東海道新幹線、京急本線、近鉄南大阪線】
2. 懸垂式鉄道【千葉都市モノレール、湘南モノレール】
3. 跨座式鉄道【東京モノレール、大阪モノレール、北九州高速鉄道】
4. 案内軌条式鉄道【ゆりかもめ、六甲ライナー、札幌市営地下鉄南北線】
5. 無軌条電車【立山黒部貫光無軌条電車線(トロリーバス)】
6. 鋼索鉄道【高尾山ケーブルカー、石清水八幡宮参道ケーブル】
7. 浮上式鉄道【愛知高速交通(リニモ)、リニア中央新幹線※1】
8. 前各号に掲げる以外の鉄道【IMTS(愛・地球博線)※2】

※1 リニア中央新幹線は、2021年1月現在は建設中
※2 2005年の愛・地球博開催期間中のみの運行のため、現在は廃止

1.を普通鉄道と呼ぶのに対して、2.~8.を特殊鉄道と呼ぶことがあります。
ちなみに、路面電車や次世代型路面電車であるLRTは鉄道事業法ではなく、軌道法によって管理されています。
そのため、都電荒川線(東京さくらトラム)富山地方鉄道市内線などは、1.~8.のいずれにも該当しません。

モノレールに該当するのは2.と3.であり、ゆりかもめは4.です。
1本のレールで走る路線をモノレールといいます。
よって、ゆりかもめはモノレールではありません

4.の案内軌条式鉄道は、ゆりかもめやポートライナーなどのAGT路線を含みます。
札幌市営地下鉄を走る各路線は案内軌条式鉄道ではありますが、AGTという訳ではありません
東西線、南北線、東豊線の全てがゴムタイヤで走りますので、普通鉄道には分類されません。

普通鉄道の線路にはバラスト軌道スラブ軌道などがあり、線路の幅を表すゲージは日本を走る路線では4種類です。
狭軌と標準軌など、異なるゲージの線路が片方の線路を共用して3本の線路となる方式が、三線軌条です。
電車が集電する方法は、架空電車線方式第三軌条方式です。

山岳地帯など急勾配を攻略する技術としては、勾配をなだらかにするためのスイッチバックループ線、ラックレールを利用するアプト式などです。

この10問に触れる前よりも、鉄道を見る解像度が上がっているようでしたら嬉しい限りです。


ここまでご覧いただきまして、ありがとうございました!
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