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イマジナリーフレンドからプレシャスパーソンへ

 過去のことなんて、書きたくなかった。だけど、今ならなんだか書けそうな気がするから少しだけ書いてみることにする。

 今から書く「イマジナリーフレンド」の「エミ」と「トオル」についてより深く知りたい方は、私が入賞した文芸社様主催、『闘病記Ⅳ〜日々是好日〜』と『第2回人生十人十色大賞』の書籍を読んで頂けるとより詳しく分かるかと思います。

『闘病記Ⅳ〜日々是好日〜』の方は文芸社様に問い合わせをしたところAmazonでは入荷未定となっていますが、僅少ではありますが、在庫があるようです。

リンク貼っておきます。


 小さい頃、私は「イマジナリーフレンド」の「エミ」と「トオル」の存在に強く助けられた。
 彼女たちの存在は今でも大きい。もし、いなかったら……。きっと今の私はいないだろう。大げさかもしれないけど、この世に存在すらしていないかもしれない。実際、私の中ではそんなに大げさな話ではない。何度、手首に傷を付け、何度、薬を大量に飲んでも死ねなかったのは彼女たちが私の体の一部として居座り、悪いものを外に出してくれていたのだろう。そう考えても不思議ではなかった。小学生の時から存在する「エミ」と中学生の時に生まれた「トオル」。二人の性格も口調も違うけれど、思いは変わらない。

「私を生かすこと」

 それがきっと二人の中にはあるのだろう。真意は聞いてないから分からないけど。聞いたってはぐらかされるし。苦笑

 今は愛する人も出来て、環境もがらりと変わった。精神疾患である「双極性障害Ⅱ型」の治療も大学の時からずっと続いている。幸い、長い投薬治療が実を結んだのか、もうすぐ投薬治療の終了が目に見え始めた。

「少しずつお薬減ってきているので、もう少しですよ。手の震え、もうないでしょう?」
 主治医の言葉に「ハッ」とした。発症した時からずっと悩まされ続けた手の震えがほぼなくなったのだ。
「残りのお薬も切っていきます。経過は順調ですよ」
 正直、感動した。自分のことなのに。

 ただ、そこからのテンションの高ぶりは異常だった。
「先生、あのね! あれがね! これがね!」

 三日後、私は再びOD(オーバードーズ)大量服薬に走った。主治医はこれを見越してOD用に問題のないお薬を私に渡してくれていた。まぁ、問題のないお薬なんて存在しないから何かしら副作用はあるのだけど、きわめて副作用が出にくいお薬というべきかな? 安定していたため二週間に一回だった通院の予約を急遽、一週間後に取り、主治医の元へ訪れた。
「ODしちゃいました。なんだか、急激に疲れて」
 私の心はジェットコースターだということを久しぶりに実感した。
「分かってましたよ。先週のカルテに書いてあります。かなりハイテンションであったって」
 主治医はなんでも見ているんだな。と感心した。でも、感心している場合でもなかった。ことは急を要する。すでに私は自傷行為に走っているのだ。

「お薬は減っているのです。気が付かないうちに感情は高ぶります。そういう病気です。それに気づき、セーブする練習をしてください。今からはその時間をしっかり取ること」
 そうか。もう次のステップに私は入ったのか。そう思うと、少し嬉しかった。

 テンションがまた少し上がるのが今度はよく分かった。そう思ったのもつかの間。
「休んでください。今週一週間。何もせず、ただただ、休んでください」
 この一言で私はどん底に。
「え、えーと、執筆は?」
「ダメです」
「勉強は?」
「それもダメ」
 鬼だ。私の前に座っているこの主治医は鬼だ。だけど、実のところは執筆も勉強も出来るぐらいの体力は残ってなかったんだよね。

「とにかく帰って休もう」

 私は肩を少し落としながら帰路につきました。それから一週間はネットショッピングに没頭。ポメラを買って、「元気になったら小説書きまくってやる!」と奮起になったり、お気に入りのミュージシャンを見つけてCDを買いあさったり、愛する人へのプレゼントを見つけて買ってみたり。休んでたけど、スマホで完結出来ることを楽しんだ。

 そんな中、Twitter(今はひっそりと再開)で余命10年の映画化決定の朗報が届いたので、来年春、涙を流しにいく予定。

 話を戻すと、最近は感情の起伏が激しかったり、忙しかったりして、なかなかゆっくり話せなくなった「エミ」と「トオル」との関係。

 なんだか学生時代の友達がLINEの友達には入っているけど、全く連絡を取らない。またはフェイスブックの友達申請をしてみるも、「同じ学校でしたか?」と逆に質問されて、もう覚えてもいない。なんていう悲しい友人関係になってしまいそうで怖くなってしまった。

「エミ」と「トオル」だけは、そんな関係にはなりたくない。一番近しい関係なんだから。親よりも近しい関係なのに、「同じ体を共有していましたか?」なんて言われる日がくるのが怖くて、私は最近、夜中に目が覚める。二人の名前を呼んでは、存在を確認する。夜中だから二人とも寝ていて、返事はないのだけれど。

「小説でも書いてみたら?」
 エミの一言で始まった執筆の世界。私をこの世界へと導いてくれた大事な存在。
「兼高さんは想像力豊かですから、きっと引き込むストーリーを作れます。期待してますよ!」
 書き上げて第一の読者になってくれたトオルの存在。

 私が知らなかった世界を二人が教えてくれた。だから、二人のことを忘れたりとか、消したりとか、消えていなくなったりとか、そんなこと考えたくないんだ。二人は私が生きることを望んでくれた唯一無二の存在なのだから。

「愛する人がいるんでしょ! その人のために生きなきゃね!」

 エミはこの間、こんな言葉を残した。

 でも、「大切な人は一人ではないんだ。エミもトオルも大切だし、お父さんもお母さんも弟も妹もおばあちゃんもおじいちゃんもみんな大切なんだ」って気付いた。

「だけど、一番大切なのは、兼高さんのその命なんですよ。それに気付けばもう何も怖くありません」

 トオルは一言、私を諭してくれた。諭すというとなんだか私が目下な存在な言い方でイヤだけど、こういう表現が一番しっくりきそうだから、あえて使うことにする。

二人は私にとってのイマジナリーフレンドじゃない。プレシャス パーソンなんだ。もうイマジナリーフレンドという言葉では表現できないほど大切な人になってしまった。

 私は大切な人のために生きよう。と思い始めたけれど、その一番近い大切な人は自分の中に、本当にすぐそばにいるってことに気付いた。

「気付けて良かったよね。この大事なことに。絶対、失いたくない人だと思ってあなたたちとはこれからも接していくから、気兼ねなく話しかけてよ。私も話しかけるから。二人が教えてくれたものを書くっていう世界からも抜け出さないで書き続けるからさ。これからもよろしくね」

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