見出し画像

なんでもない日常の中の小さな幸せを探すことー海外ノマドが本当に望むこと

海外ノマド生活を12歳から送っている私は、12歳から奇想天外な人生を送っている。そんな私は何でもない日常というのはとても大切なことだと思っている。
「なんでもない日常」「普通の生活」と言うが、その「普通」こそが、「普通」でいられることが本当はとても大切なことなんじゃないかと思う。

世界を見ても、そして2024年が始まって、色々日本でも辛く悲しいことが起こっている。だからこそ、「当たり前」の「なんでもない日常」の生活を送れることは、本当はとても大切なことなのかもしれない。


人生とは

大きなテーマ過ぎるし、哲学的な問題でもあるが、人生とは、なんだろう、自分が生きている意味はなんだろう、と考えることがある。私は今、人生の分岐点、分かれ道にいるところでもあり、今後のことをちょっと考える時期でもあった。

結局、きちんと今後の予定が決まっていないまま、年が明けてしまった。ただ、そんな中でも、2023年の12月だけは毎日仕事をしながら、平凡に暮らす日々を送り、そんな日常の中で日々の小さな楽しみを幸せに感じる生活を送っていた。

朝起きて仕事に行き…そんな普通の日常を過ごす12月

12月は本当に平凡な生活をしていた。私は朝起きて、支度して、カフェに寄ってコーヒーを買って、職場に行って、クレープを焼いて過ごしていた。
休憩もあるが、10時間ほど働いて、夜家に戻る。立ち仕事、そしてクレープを焼き続けて腕も痛み、手首も痛み、そして、指も痛み…この1カ月はほぼクレープを食べて過ごす。
自分の住む、地元、アルザスの伝統的なイベント、クリスマスマーケットで働くということがちょっと変わった点で、1カ月しか開催しないのだが、それ以外のことを除けば、日々の仕事をこなして、毎日が過ぎていく、というような生活だった。

そんな中で、たまに美味しいものを食べたり、カフェに行ったり、時間があれば映画を観たり…そんな小さな楽しみで生きていた。そうやって時間が流れ、日々を過ごし、あまり深く考えることもなく、将来のことなども考えることなく、今の生活を一生懸命生きる、そんな時間を過ごしていた。

その前がとにかく忙しく、自分の時間もなく、先のことを想定して動き、ストレスも、プレッシャーも大きかったので、12月の1カ月は淡々としていたものの、楽な時間だった。体が疲労を感じるため、それ以上何か新しいことをするわけでもなく、ただただ時間が過ぎてった。

それはそれで、平凡で、静かな生活を送ることができた。

じゃあこれからどうするのか…年始めに観た映画「PERFECT DAYS」


そんな中で年が明けて観た映画が「PERFECT DAYS」だった。
クリスマスのころ会ったフランス人のおばさまに「すごくいい映画だった。」と言われ、調べてみると役所広司さんがカンヌ映画祭で賞を受賞した映画だ。
私の中で、役所さんは、お役所勤め経験もあるからか、なんでもない、寡黙で、普通で、平凡で、でも何かを秘めているような男性を演じたら一番だと思う役者さんだ。以前カンヌ映画祭で入賞した映画「うなぎ」でも主演し、その時も誰も知らない土地で、謎めいた寡黙な男性を演じていた。

とてもインパクトのある風貌だし、オーラもあると思うのに、ちょっと謎めいた寡黙で淡々と普通すぎる生活をする中年男性を演じたら、彼以上に良い役者さんはいないと思う。


ネタバレにもなるが「PERFECT DAYS」のあらすじは

「あらすじ

東京・渋⾕でトイレ清掃員として働く平⼭(役所広司)は、静かに淡々とした⽇々を⽣きていた。同じ時間に⽬覚め、同じように⽀度をし、同じように働いた。その毎⽇は同じことの繰り返しに⾒えるかもしれないが、同じ⽇は1⽇としてなく、男は毎⽇を新しい⽇として⽣きていた。その⽣き⽅は美しくすらあった。男は⽊々を愛していた。⽊々がつくる⽊漏れ⽇に⽬を細めた。そんな男の⽇々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を⼩さく揺らした。」

トイレ清掃員というと、職業的に下に見られることもある、職業かもしれない。けれど、どんな仕事でもプロがいて、一生懸命働くかどうかで変わることがたくさんある。そして、同じような日々の中にも、小さな変化がある。フランス人が好きそうな、2時間以上の映画の中に隠されたメッセージは最後の5分で完全に収まっている、そんな映画だ。最後の5分に隠されたメッセージを伝えるための2時間…。こういう文学的、芸術的映画がフランスでは好まれる。

人生とは…「PERFECT DAYS」というのはきっと同じことを繰り返し、単純作業を淡々とこなし、それをきちんとこなしていけることが「完璧な日々」なのかもしれない。

そして、セリフがほとんどない、表情で表していくということにかけても、役所さんの演技は絶品だと思う。だから、ちょと謎のありそうな、考えていることが分からなそうな寡黙な男性を演じたらピカ一なんだと思う。
そして、この映画の中のメッセージは、ラスト5分にぎゅっと凝縮されている。その5分を伝えるための最初の2時間だと思う。淡々とした、役所さん演じる主役の生活…。この映画は何を言いたいんだろう?と考えながら観る2時間、そしてその答えが最後の5分に凝縮されている。

何も言わず、役所さんのアップがずっと映し出され、それが本当に素晴らしい。すごいなあ、表情だけで、色んなことを伝える力。

私は以前、密かな夢について書いたかことがあるんだが、私は言葉を操る作家になりたい。できれば素敵なセリフを私の代わりに伝えてくれる、脚本家なんかになれた、と思いながらも、そういう勉強もしたことないし、脚本は書いたことがない。

けれど、映画やドラマを観る時はいつもセリフを気にする。けれど、この作品は監督がドイツ人ということもあり、脚本は日本の方と共同で書いているにしても、主人公もほぼセリフがなく、そういう意味では、監督の腕力と演者、特に主人公の役所さんの演技力で仕上がった作品だと思う。



「PERFECT DAYS」監督 Wim Wenders |主演 Koji Yakusho


映画大切なことは…


ちょっと話が反れるが、確かに、海外で勝負をするなら、場面の情景や、人の感情の表現などの方が重要で、一つ一つのセリフで勝負するのは難しくなるだろう。現に、日本映画を観るときは私は逆に外国語(フランス語、英語)の字幕を読みながら観るのだが、字幕翻訳って難しいなって思う時がある。

私は言葉を書くことが好きではあるが、今こうして書いているものは決してそんな綺麗な文章を書いているとは思っていない。やっぱりきれいな言葉を綴っていくというのはなかなか難しいし、それが外国で訳されると考えるとさらに難しいなと思ったりする。

映画を観ながらいつも、あああ、そう訳すのか、その訳でいいかな、なんて考えてしまうのだ。特に日本語では上手く外国語に訳せない大事な言葉がたくさんある。いつもそういうのを見ながら悩むのだ。

映画を観て改めて自分の人生について考えた

ちょっと話が反れたが、この映画を観て、自分の今後について又少し考えさせられた。

それこそ、私が送った12月の1カ月の生活のようにも思う。ただ。私の場合はその場所では伝統的なイベント内という特殊な部分がプラスアルファとなっているが、クレープ屋でクレープをただただ焼き続ける、という仕事を考えると、美味しいクレープが焼き続けられて、問題なく、一応健康で生活できれば、それこそ「PERFECT DAYS」なのではないか、と思ったりする。

SNSなどが反映した現在、(そういえば映画の主人公は昭和みたいな、とてもアナログな生活をしていて、それも引き付けられた)キラキラした生活に憧れたり、知らない世界をSNSを通して知ることができるようになってしまった。知ってしまえばそれをしてみたいと思ったり、見てみたいと思ったりしてしまうのが人間の性だ。そして、人と自分を比べてしまったりもするんだろう。けれど、大事なことってなんでもない、普通の生活を続けること、なんじゃないだろうか。

楽しみの一つとして行くいきつけのお店なども、ある日閉店してしまうこともあり、日々の日常がある日できなくなることもある。世の中に永遠はないということはここ最近の生活でも多くの人が身に染みて感じたことなんじゃないだろうか。

なんでもない生活を続けることが一番簡単そうで難しい

世の中はキラキラしたことばかりじゃない。SNSの、小さな画面で見える情景は決して本物じゃないことも多い。そういうキラキラした生活を「完璧」と思う人もいるかもしれない。
けれど、今ではそのSNSのために生きてしまう人もいるし、その小さな画面の中をキラキラさせているだけ、の人もいる。
そしてそんな日々の情景は色も形も加工できるし、それこそ、人ですら加工できてしまうのだ。だからこその普通の日々を送れることこそが「完璧」なことなんじゃないかって思ったりするのだ。

私みたいに、平凡ではない、結構稀有な生活をしている私が、そう思う。私の人生を垣間見る人はその自由さと身軽さをうらやましいと思ってくれる人もいる。けれど、その自由と身軽さの中には「平凡」で「普通」の生活からは程遠い日々でもある。確かに、お休みの日はカフェに行ってまったりしたり、美味しいものを食べたり、なんてこともするが、そういう時間を無理矢理でも作って、少しでも楽しみや小さな幸せを作るように努力しないとできない気がする。
そして、それ以外のところの「一般的」な「安定」した生活からは程遠い気がするのだ。

だから、私はこの「PERFECT DAYS」の中にあったような毎日同じことを繰り返し、その中にある小さな楽しみや幸せを感じるような生活こそが「完璧」とも言えるんじゃないかって思うのだ。

映画の感想なのか、海外ノマドとしての人生論なのか…分からなくなってしまったけれど、大切なのは今を大切に、自分の好きなことや好きなものを大切に、それをちゃんと楽しめて、小さな幸せを感じられるように、そんな生活ができるよう、2024年をどう生きるか考えていきたいなと思う。

年の初め、いい映画を観たなと思う。

#今年のベスト映画

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?