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雑文

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記事一覧

あるよるぼくはないちゃった

パパとママはいなくなる

ぼくよりさきにいなくなる

ないたらいますぐあいたくて

ママとパパにだきついた

ぎゅっと

ずっと

ソメイヨシノが嫌いだ。

にっこり

我がダブサンの横で腰を下ろしてエンジンをじっと見つめた後、北見さんはシートをポンと叩いてあの気さくな笑顔で言った。

「三十五万振り込んでもらえれば後は大丈夫だよ」

大丈夫なんだあ。

ほっこり。

にっこり。

これでようやくダブサンに乗れる。

にっこり。

そして、家に帰った僕は妻にどう言って説得するかという、家に帰らなくても想像に難くない現実に今更ながらぶち当たる。

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姉妹

ねえ、花壇って、花がない方が美しいと思わない?

あなたには分らないかもしれないけれど、という嫌味のこもった声色でもなく、かといって無感情のそれでもない、ニュートラルだけれど、どことなくはかなげな調子で姉は言いました。

確かに言いました。だけれども、誰に向かって言ったのか、少なくとも側にいた妹の私に言うでもなく、何者でもない何者かにはっきりと主張しました。そして、つづけて口ずさむようにつ

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小説家

小説家は、森の中を歩いていた。

「この半島は、海と森が同時に味わえるから好き」

というのが彼女の口癖だ。
ほとんどの観光客は、岬の海をめざす。
その理由を、彼女はいにしえの時代に人類は海からあがってきたから、
という一般説に委ねていた。
しかし、矛盾するようだが小説家である彼女は、そもそも人類は海からあがってきたという説に懐疑的だ。

「だって、誰が、人類が海からあがってき

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100%

耳障りの方が癇に障るという状態よりも精神への負担は重い。

微分積分が苦手な彼女は、微分積分の授業中に軽い目眩をおこし、それを必死でこらえながらふと耳障りと癇に障るという日本語が脳裏に浮かび、そのイメージを文章として丁寧にノートに書き写した。

耳障りの方が癇に障るという状態よりも精神への負担は重い。

黒板に書かれた数字という概念を超越した微分積分の得体に比べ、鉛筆で書いた文章は率直

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