見出し画像

初めてのテレビCM撮影

「来週撮影連れて行くから、制作グッズ用意しておいて」
「は、はい!」

入社5日目でいきなり撮影?制作グッズって何?

メンターであるS先輩は熊さんみたいな図体で、Sっ気の強い人。THE 体育会系。仕事はできる。そんなS先輩はいつも指示がいきなり。飲みに行く時も、クライアント(広告制作会社にとって、広告会社や広告主がクライアント)とスポーツ交流会をする時もいきなり誘われる。

ある時は、夜中に「付いてこい」とだけ言われて、S先輩の車に乗せられ、着いたお店で「ゴーグルと迷彩服だけ買え」と自腹で購入させられ、公園で朝までサバゲーをしたときもあった。(これはめちゃくちゃ楽しかった)

話を戻して、今回撮影する商品は「車」。実はCM撮影の中でも、車はなかなか難易度が高い。映り込みや、車への照明の調整が大変だったり、傷やホコリへのケアが非常に大変。CG合成も多いので、とにかく撮影に時間がかかる。だから「制作グッズ」とひと言で言っても、とても用意するものが多い。そこで1年先輩のYさんに相談。めちゃくちゃ優しい彼がほぼ用意してくれました。

撮影は月曜日。前日の日曜に撮影準備を行い、そのままホテルに宿泊。翌日は朝5時からハイエース(撮影にもっとも使われる車)に乗って、横浜にある自動車が大量に保管してある倉庫へ。

車に揺られていると睡眠不足の影響でウトウト…でも1年坊主がうたた寝していたら怒られると思って必死で起きてる…でもまぶたがヘビー級…みたいな感じでひたすら葛藤。車の中でずっと船をこいでおり、窓に頭をガンガンぶつけている内に撮影場所に到着。

実はこの日の撮影は車と言っても、キャンペーンのぶら下がり(テレビCMの最後2秒くらいで「〜〜キャンペーン実施中」とか言うだけのやつ)用の商品カットの撮影。広告会社の営業が1人来るくらいでクライアントは来ず。割とラフな撮影だった。その広告会社の人と仲がいいのが、プロデューサー=P(広告会社から仕事を取ってくる営業的な人)。

この案件のYプロデューサーは、超アウトロー。ちょっとワイルドな服装、長い髪にウェービーなパーマ。雰囲気はちょっと悪い役柄の渡部篤郎のよう。その雰囲気が様になっている。そしてヤクザのような喋りでけっこう怖い。(でも根はいい人。こういう雰囲気の男性は、女性にモテる)

このYプロデューサーが超悪ノリ好き。撮影対象の車の位置を移動する時に、S先輩の手を轢こうとするなど、やりたい放題。カメラマンなども仲がいいので、一緒に笑っている。そんな現場だった。(結局撮影が23時までかかったので、そういう長時間拘束される撮影では、楽しく過ごせるかが大事だったりする)

私と言えば、「◯◯取ってこい!」とか「バミれ(立ち位置、物の決まり位置にテープで印を付けること)」とか「車のホコリ拭け」とか「弁当配れ」とか、とにかくありとあらゆる雑用を一人でこなすために、撮影現場を走り回っていた。

目まぐるしく過ぎる時間。何を撮影したのかも、どういう仕上がりになるのかもよくわからないまま、必死必死。でも初めての撮影は、見たことのない機材、関係者しか入れない場所、撮影ならではの個性的なスタッフ、など新しい事だらけでとにかく楽しかったのを覚えている。

サポートいただいた分は、私も他の方のサポートをします!懐温めません!もっと素敵なnoteがもっと増えますように!