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【資料作成】ロジカルかつ情熱的に書く

僕の仕事のほとんどは「資料作成」です。主にPowerPointを使って作成することが多いのですが、先日作成した資料に対してクライアントから思いっきりダメ出しをくらってしまいました。

確かに、完璧にできたと自信をもって言える資料ではなかったので、一定のフィードバックを頂くことになるだろうな、と思っていたのですが、予想以上のダメ出しをくらってしまったことで、会議が終わった後しばらく立ち直れずヘコみまくっていました。しかし、週明けに再度資料レビュー会議と経営層上部への提出が控えているため、ずっとヘコんでいる余裕もなくすぐに修正作業に取りかかりました。

結果的に、クライアントからも納得を頂ける資料にリカバリすることができましたが、「だったら最初からそういう資料を作っておけよ」と自身へのツッコミを入れたいくらいです。その反省も込めて「プレゼン資料に必要な要素」を整理してみたいと思います。最後に掲載している整理スライドには「経営層」という表現を記載していますが、経営層に限らず、誰が相手であろうと重視すべき要素は同じですね。

■読み手の理解

資料作成の際には、当然その資料を見せる相手をイメージしながら書くようにしていますが、結果から言えば、見せる相手のイメージが不十分だったと言わざるを得ません。

相手は「経営層」です。ここで二の足を踏んでしまうのが、書き手であるこちら側が「経営層の経験をしたことがない」ということから「経営層が考えることなんてイメージすることは不可能」と諦めてしまいがち、という点です。たしかに、企業にお勤めのみなさんで、最終的に経営層に提出する資料を作成する方は、ほとんど全てと言っていいほど「経営層の経験がある」と言える方はいらっしゃらないでしょう。私もそうです。

そうすると、今置かれている立場で取り組んでいる仕事や見える範囲内で起こっている事業、業務、問題、課題であればイメージできますが、多くの人たちにとって「経営」は非常に遠い存在であり、このようなことをイメージするのは至難かもしれません。

経営層は普段、どんなことを考えているのか?
経営層の関心ごとは何なのか?
経営レベルで起こっている問題・課題は何か?
どのような伝え方で伝えれば、経営層に響くのか?
少なくとも自社の経営について理解するためには、何をすればいいのか?

「読み手の理解」は、マーケティングの「ペルソナ」と似ています。自分がプレゼンしたい内容を理解してもらい、納得してもらった上で承認を頂く流れは、マーケティングのように商品をアピールして機能や性能、メリットを消費者に理解してもらい、購入してもらうプロセスと同じです。では、経営層とプレゼン資料の読み手、プレゼンを聞く相手とした場合、どのような事前の状況把握や分析をする必要があるでしょうか?

●経営層の氏名
経営層の役職(代表取締役社長/副社長/取締役など)
経営層の役割(担当事業や管掌組織から考えられる事業責任)
●経営層の人物像・性格
●経営層のこれまでの経歴・実績
●経営層が考えていそうな関心ごと

●経営層が管轄する企業が置かれている経営環境
●経営や事業のビジョン・戦略
●経営課題・組織課題(課題が発生した背景・経緯も含む)
●プレゼンする会議(往々にして経営会議)の構成メンバー
プレゼンする会議のアジェンダ・タイムスケジュール
●当該テーマのプレゼンに与えられている時間
●プレゼンした後の経営層の反応
●プレゼンした会議後の想定アクション

この他にもまだあるかもしれませんが、ざっと挙げただけでもこれだけのことを考えた上で経営層へのプレゼンに臨まなければなりません。

■話し手の理解

また、自分が担当するプロジェクトのクライアントは、その企業における経営企画部門のトップの立場で、経営層のすぐ近くにいるようなポジションを担っていらっしゃいます。その方が経営層へのプレゼンをする役割を担うため、その方の立場や役割、伝える場面などもしっかりとイメージしなければなりません。この点でも、イメージが不十分でした。

そもそも、自分がプレゼンターになったとしても、改めて「プレゼンターとなる自分の分析」を事前に行っておく必要があります。この分析をしないと、話し手の立場としての自分を見失ってしまい、話したいことだけをつらつらと話すだけに終わってしまうとか、明らかに自身の立場だとそのような伝え方をすべきではない、と思われる伝え方になってしまって「誰がしゃべってんねん」状態となってしまうこともあります。

自分がどう見られているか」をプレゼンの際には意識しないといけないんですよね。でも、結構忘れがちです。

それに加えて、自分が資料を作成し、上司やクライアントの方がプレゼンをするというような場面もあるかと思いますが、プレゼンするのが他人であるがゆえに、読み手・聞き手である経営層に加えてプレゼンターのことも理解するのは中々難しいでしょう。

●プレゼンターの氏名
●プレゼンターの役職
●プレゼンターの組織内での役割
●プレゼンターの人物像・性格
●プレゼンターの話し方(声のトーン・話すスピード・抑揚など)
●プレゼンターの能力(経営理解、ロジカル思考、プレゼン力など)
●プレゼンターのこれまでの経歴・実績
●プレゼンターが考えていそうな関心ごと
●プレゼンターが担当する業務・組織に関する課題
●プレゼンターと経営層との関係
●プレゼンターが当日プレゼンするイメージ
●プレゼンターのプレゼン後のアクション

上記の事前確認ポイントは、たとえ話し手が自分であっても他人であっても同じと言えるのではないでしょうか。

■ストーリー設計

ストーリーで物事を考える」ことについては、また別の記事で詳しく触れたいと思いますが、自分への戒めも込めて「仕事において、ストーリーで考える人が少ない」という僕の周りの嘆かわしい現状について、少しお話ししたいと思います。

あるプロジェクトに関わっているメンバー(Aさん)で、こちらも経営層にプロジェクトのこれまでの経緯と現在の進捗、今後の見通しを説明をする機会がありました。「これまでの経緯」「現在の進捗」「今後の見通し」というのは、まさに「過去⇒現在⇒未来」と時間軸で整理する作業であるため「ストーリー」で考えるには絶好の機会なのですが、おそらくAさんはこれまで「ストーリーで考える」ということをしてこなかったのでしょう、プレゼン用の資料作成に四苦八苦していました。

また、Aさんは最近プロジェクトに参加したメンバーでもあったため、よりプロジェクト事情に詳しい既存メンバー(Bさん)から共有を受けていたようなのですが、Aさんに、Bさんからどの程度の共有を受けて、どのようにプロジェクトを理解しているか確かめてみたところ、二つの問題が発覚しました。一つは前述のように、Aさんがストーリー思考で整理できていない、ということなのですが、もう一つ、より問題だと感じたのは、共有する側のBさんも「ストーリー思考」でないために、共有の仕方が順序立ててされていなかったり、粒度がバラバラで整理されていない情報で共有されていたことです。当然、Aさんの理解度は低いし、ストーリー立てたプレゼン資料など作れるはずがありません。

この問題の最大の要因は「情報共有を僕自身が担当できていなかった」ことであって、決してBさんが悪いわけではなく、共有を任せっぱなしにしていたプロジェクトマネージャーである僕の責任に尽きます。僕から改めて、ストーリーや体系的な整理を意識して、様々な情報や知識を共有したところ、Aさんは理解を深めてくれました。

Aさんは、ストーリーで考えることができないわけではありませんが、例えば僕だったら一定のストーリー思考は意識することができるため、Bさんからの共有時に様々な質問をして、自分で情報をストーリーで整理できたかもしれません。ストーリー思考を意識することを習慣化できれば、Aさんもよりスムーズに情報整理ができようになってくると思います。

さて、AさんやBさんの事例を紹介させて頂きましたが、かくいう私も、今回の経営層向け資料作成において、ストーリー思考が疎かになってしまっていました。理由は色々考えられますが、過去の自分もよくやってしまっていた

「ひとつひとつのスライドを完成させることに注力しすぎて、スライド間の関係性や全体的な構成・流れを意識するのが弱くなってしまった」

ことが大きな要因として考えられます。

たしかに、プレゼン資料、ましてや経営層向けのプレゼン資料を作るとなると、一枚のスライドでも考えるべきことが多く、非常に時間と労力がかかります。やっとのことで一枚ができたとしても、他のスライドも同様に内容を考えるのが結構大変だったとしたら、全体のストーリーを考えるのが疎かになってしまっても無理はありません。

しかし、経営層は常にストーリーで経営のことを考えていらっしゃいます。様々な経営課題と対峙しながら、課題同士の関係性にも考慮しつつ、課題の克服・解決に向けて何をどう取り組んでいるか?を真剣に考えておられるでしょう。そのお手伝いをさせて頂いていることに感謝し、今一度気を引き締めて、ストーリーで考えることを意識してみようと思います。

■シンプルさの追求

これは明らかに「手抜き」でしたね・・・

プレゼン資料なのに、文字を多く書いてしまう人って意外と多いのではないでしょうか。私も、意識しないとそうなってしまう人の一人です。シンプルに書く方法を知っているくせにシンプルに書けなかったのは、「書けなかった」のではなく「書かなかった」という「思考の怠慢」です。

書きたい内容に大きな齟齬はなかったと思います。問題は「見せ方」。ここは最初の「読み手の理解」ともつながっていますが、経営層が参加する会議となると、扱われるテーマ・アジェンダは多岐にわたることも多くあります。今回僕が携わっているテーマの資料など、会議の中で発表されるのはほんの1~3分程度でしょう。スライドによってはパッと見せて次に進むものもあると思います。

ましてや、経営層は常に重要かつ多様な情報に大量に触れています。毎週、毎月、経営会議で取り扱われる議題に対して経営判断をしなければなりません。となると、資料を提出する側は「コンパクトでわかりやすい資料」にすべきなのですが、提出する側のプレゼン資料作成担当者は、経営層が多様な情報に常に触れて経営判断しなければならない状況にあるということを意識しないために、わかりづらい資料を作ってしまいがちです。まずは、上記に取り上げた観点で経営層の状況を理解した上で、

●図式化して見せる
●数字を使う
●データをグラフ化して見せる
●パッと見でイメージがつきやすいイラストや画像を使う
●文章形式で書かない

などの方法でシンプルなスライド、シンプルな資料作成を心がけたいと思います。

■情熱

ここまでは、資料作成やプレゼンテーションに関する書籍などに書かれていることだと思います。ただ、上記4点だけだったかな~と今回の失敗を思い返すと、一番の原因は

「情熱不足」

ではないかと強く感じています。

今回経営層に提出する資料作成に関連するプロジェクトは、僕自身も思い入れが強くあって参画しているプロジェクトです。自身のこれまでの経験が活かすことができ、かつチーム内メンバーやクライアントとコミュニケーションを多く取って細かい確認やレビューを行っているため、比較的スムーズに進められているプロジェクトと捉えていました。ただそこに、慢心や油断が生まれてしまったのでは?と思います。

このちょっとした慢心や油断で、それまで上手くいっていたことが全てパーになるケースは今までも経験しています。なのに、慢心や油断が生まれてしまったのには、ひとえに「プロジェクト、事業、問題解決に対する情熱」が足らなかったせいだと言えます。コンサルタントという立場で関わっているので、完全な当事者とは言えないのですが、クライアント企業の一員としての立場でもプロジェクトを進めているだけに、外部の人間だから当事者意識が低かった、情熱が弱かったというのは全く言い訳になりません。

当事者意識や情熱が全くない、というわけではありません。むしろ、当該プロジェクトは非常に楽しく、やりがいもあるため、当事者意識や情熱を持って関わることができていたと自負しています。ただ、プロジェクトがスムーズに進んでいることで生まれたちょっとした慢心や油断が当事者意識や情熱を少し薄めてしまった、その少しが大きな影響を及ぼしてしまった、と考えています。

もう一度初心に帰って、当初持っていた情熱を取り戻そうと思います。

■最後に

今回、たまたま自分が関わっているプロジェクト、そしてAさんとBさんが主として動いているプロジェクトの事例を挙げさせて頂きましたが、これに限らず自分が関わってきた仕事のいずれにおいても、プレゼンの場では、今回整理した5点の要素が重要なように思います。今回、ちょっとした気の緩みから厳しいフィードバックを頂くこととなってしまいましたが、改めてプレゼンについて考える良い機会となりました。

週明け、経営層への提出があるので、その結果をまたこちらでお伝えできるかもしれません。

経営層向けプレゼン資料に必要な要素


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