『夜のピクニック』(掌編小説)
夜の街はどこまでも静かだった。
最終電車もとっくになくなった夜の底に、沈んだ街。心細くポツポツとアスファルトを照らす街頭に導かれるようにして、俺は歩いていた。
辺りにはもちろん人影はなく、物音1つない街は、どこか今の自分に似ていると思う。
仕事終わりの身体には疲れが沈殿している。その澱を舞い上がらせないように細心の注意を払って、俺は歩いていた。右手には缶ビール。左手には仕事用の四角い黒の鞄。茶色の革靴の底は段々と擦り切れ始めていて、その擦り切れ始めた靴底だけが俺と街