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あと10年しか生きられないとしたら、あなたは何をしますか?

2021/9/14 読書記録no.52「余命10年」小坂流加

昨日から読み始めた、こちらの本。

タイトルからして、きっと“病気もの”なんだろうな、って思っていました。そういうジャンルを好きと言ったら、なんか変な風に捉えられてしまう気がして中々難しいのですが、私は“病気もの”を読むことが多いです。

自分もそうなる可能性はゼロではないから、感情移入しやすいというか、現実的というか。ファンタジーはありえない世界観だからこそ楽しいけど、こういう現実的なものに対しても、私は魅力を感じます。

今日は、こちらの本について書いていきたいと思います。


作品について。

この本は、2017年に発売されました。第3回講談社ティーンズハート大賞で期待賞を受賞しています。ただ、著者の小坂さんは、この作品編集が終わった直後、病状が悪化し、刊行を待つことなく、2017年2月帰らぬ人になりました。

恋愛小説っていう名目になってるけど、小坂さんご自身も病気を持っていたからこそ、この作品はより熱がこもって、色んな人の心に響いているんだと思います。

内容

死ぬ前って、もっとワガママできると思ってた。
二十歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。
笑顔でいなければ周りが追いつめられる。
何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。
未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。
そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。
衝撃の結末、涙よりせつないラブストーリー。 「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ」


印象的な言葉。

P11 あと10年しか生きられないとしたら、あなたは何をしますか?長いと思い悠然と構えられますか?短いと思い、駆け出しますか?あと10年しか生きられないと宣言されたのならば、あなたは次の瞬間、何をしますか?
P48 誰かと同じじゃ嫌だなんていつか言っていたけれど、今はみんなと同じじゃなきゃ不安でたまらない。違うならば強くなりたい。みんなと違う道を堂々と歩ける人になりたい。強くなりたい。強くなりたい。心が固まっちゃうくらい、強くなりたい。
P108 好きだよって、時には誰かに言ってほしい。それだけで生きている実感が持てる。女の子からでもいいや。好きだよ。なんていい言葉だろう。それだけで優しくなれる。私も誰かに言おうかな。
P111 どちらが幸せなのだろう。死を知っている人間と、死を知らない人間と。時は同じように流れているはずなのに。
P117 夢いっぱいだったあの頃が浮かび上がって、胸が熱くなった。こんな大人になっているはずではなかったと思うと、涙が出そうになった。
P134 いったい何を手にすれば、何かが足りないと焦る気持ちは消え去るのだろう。抱えている焦燥感は思春期の頃と変わっていないのに、あの頃とはもう違う。25歳じゃ誰も同情してくれない。とっくに大人と呼ばれる年齢で、無限にあったはずの選択肢はいつの間にか数えるほどしか無くなっている。その中からこの先に生きる道を自分自身で選択するしかないのだ。
P196 初めて命が恋しいと思った。1分1秒が切ないほど愛おしい。そんなに早く進まないで。もう少しここにいさせて。
P197 命が恋しくて、時間が愛おしくてたまらない。愛する人と別れることが死だと思った。けれど、愛おしいと思えた自分と別れることも死なんだよね。こんなことならもっと自分を大切にすればよかった。私を1番大切にできるのは私しかいないんだから。もっと早く、色んなことに気づけたらよかったな。
P282 人が死ぬということは単純な引き算でしかない。けれど、人が生まれるというのは、足し算では収まらない掛け算の出来事なのだ。


読み終わって。

20歳の時に病気が見つかって、30歳になるまでの人生が描かれています。大病を患って、余命10年と宣告された主人公・茉莉。生きる意味を見失ったけど、好きなことに熱中し、愛する人に出会えた。私は今年25歳。同年代で、同じ歳の茉莉を見ていて、まるで友達かのように感じました。

大切だと思うものに、大切にしたいと思える人に出会えて、茉莉は残された自分の命を全うしました。

和人とのだんだん距離が縮まっていく様子とか、お互いの気持ちが重なった瞬間とか、和人のことを思って怒鳴り散らす茉莉のカッコ良さとか、愛するが故に別れることを決断した時の気持ちとか。

そういう、言葉にするには難しすぎる感情の動きが丁寧に描かれた、素晴らしい作品だと思いました。

終盤にかけて、涙が止まらなかったです。あまりにも号泣しすぎて、胸が苦しくなりました。心がギュッてなりました。

最後まで、自分と命と向き合い、愛する人を想い続け、10年という長いようで短いタイムリミットを走り切った茉莉という女の子に出会えてよかったです。

映画化もされているようなので、次は映画も見てみたいと思います。

小坂さん、素敵な作品を残してくれて本当にありがとうございました。


おりょう☺︎

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