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#ドストエフスキー

全てが無常なら、瞬間は永遠になるのか

全てが無常なら、瞬間は永遠になるのか

 ドストエフスキー『地下室の手記』にリーザという娼婦が出てくる。当時のロシアの娼婦というのは、今の「風俗嬢」とは全く違い、地位が低く、悲惨な人生の人たちだった。
 
 リーザは、自分を買った客である主人公の男に、自慢をしたくて、ある手紙を見せる。それは彼女に思いを寄せる学生からのラブレターだ。
 
 彼女が主人公に手紙を見せたがったのは、自分は今はこんな風に落ちぶれた身分だが、かつては決してそうで

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スタヴローギンが感じた存在論的な恐怖——亀山郁夫氏『『悪霊』神になりたかった男』より

スタヴローギンが感じた存在論的な恐怖——亀山郁夫氏『『悪霊』神になりたかった男』より

ドストエフスキーの全作品でもっとも危険とされる「スタヴローギンの告白」(小説『悪霊』より)。作家の全人格が凝縮されているこのテクストには、人間の〈堕落〉をめぐる根源的ともいえるイメージが息づいている。文学のリアリティとは何か。人間にはどのような可能性が秘められているのか。ロシア文学研究者の亀山郁夫氏が小説『悪霊』の中の「スタヴローギンの告白」について徹底的に解明しているのが本書『理想の教室 『悪霊

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