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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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#排出量

カテゴリー11を再度考えてみる

回答企業に対して、CDP2024は、大幅な変更が予定されている旨、メールで案内がされていたことは、noteでもご案内しておりました。 公式サイトでもようやく告知がなされましたが、ヘルプセンターという、非常に分かりにくい場所にひっそりと。こちらについてもご案内済みです。 だからと言うわけではありませんが、来年へ向けて、既に準備を始めている企業から問い合わせを受けました。次回からは、カテゴリー11にチャレンジしたいとのこと。素晴らしいですね。 カテゴリー11「販売した製品の

CBAM抜け道の指摘

先月のFTに、次のような記事が掲載されていました。 簡単に言うと、「現在のCBAMルールには抜け道があるから、目的・効果が達成できないばかりか、グリーンウォッシュも助長する」ということです。 記事では「溶解したものであれば、バージン・スクラップに関係なくゼロ排出とされることから、中国などの低コスト高排出の地域で生産されたアルミ製品が流入する可能性がある、と主張している」とあります。 「業界団体であるEuropean Aluminiumによると、EUの製錬所はアルミニウム

カーボンプライシングとGX戦略(8)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、8回目です。 7回目では、行動を起こす動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットについて、「ゼロ→プラス」側面。「見える価値」「見えにくい価値」両方の可能性のある取組についてご案内したところです。 今回は、前回ご案内した、吸収・除去系クレジットの種類について、紹介していきたいと思います。 そもそも、どのような種類のクレジットがあるかというと、経

第三者検証〜はじめの一歩(8)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」8回目。 7回目では、契約を交わした検証機関が実際行う作業についてご案内しました。具体的には、現地検証に至るまでに、「事前調査」と「デスクレビュー」を行うのでした。 最初のステップでは、検証に必要な資料を受審する企業から提出頂くのですが、それに当たっては、繰り返しご案内している、下記原則をに留意しつつ準備をして下さいね、とお話ししました。 さて、ここに来てようや

第三者検証〜はじめの一歩(5)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」5回目。 4回目では、依頼する検証機関との合意内容についてお話ししました。 今回は、検証を受けるに当たって、どのような準備をしておく必要があるかについて見ていきたいと思います。 具体的には、次のようなフローになります。 実は、前回の話は、「検証機関」側から見た検証プロセスのスタートについて見てきたのでした。ただ、広義で「検証」を捉えると、受審する企業としては、

第三者検証〜はじめの一歩(2)

温室効果ガス排出量の算定結果に対する第三者検証を初めて受けることになった担当者を想定した「はじめの一歩」2回目。 1回目は、導入の導入で終わってしまいました さて、系統立てて学んだ方がよいのは当然ですが、まずは、結論から。 この3点を、座右の銘にしておいて下さい。 第三者検証とは、被検証組織(算定を実施する企業)が算定した結果を、独立した第三者がチェックすることです。 これにより、被検証組織は、自社が行った算定方法や結果に誤りが無いことが保証され、算定結果を利用するス

CBAM in motion(2)

2023年10月より導入が事実上確定したEUの炭素国境調整措置(CBAM)について、EY新日本有限責任監査法人が開催したウェビナーの資料を用いながら、内容について見ています。 1回目では概略の説明をしたところです。 2回目は、CBAMが及ぼす影響を、自分なりに考えたいと思います。 何と言っても「輸出業務が変わる」ことですね。 「当たり前だろ」と思われるでしょうが、当該業務に従事する方にとって「CO2排出量の算定」って未知の世界だと思います。 脱炭素に関する人材育成に

GHG削減待ったなしです

2023年に突入しました。 2022年は、4月にnoteを始めたのが、個人的に大きな進歩。 というのも、これまで、個人的な発信をほとんどしてこなかったからです。 もちろん単発的にはありましたが、継続したことがありませんでした。 ただ、お客様の脱二酸化炭素化、持続可能な研究開発、地域活性化等を支援していく中で、その活動のコアとなる部分はほとんど共通しており、繰り返しご説明する過程で、かなりの程度蓄積され、もっと活用できるようにしたいと思い、重い腰を上げたのでした。 具体的に

Allocation(配分)について考える(3)

排出量算定における、以下の2つの壁についてお話ししています。 1.排出係数(CO2排出量原単位)の壁 2.部分排出量算定の壁 このうち、「2.部分的排出量算定の壁」について考えていきましょう。 「それって何なの?」は1回目で説明しています。 プロダクト基準には、配分を回避方法について3つの方法が示されており、2回目でお話ししました。 今回は、残念ながら、どうしても配分が避けられない場合について説明していきたいと思います。 プロダクト基準には、3種類の配分方法が紹介さ

引渡製品単位の排出量を改めて考える(2)

前回から、引渡製品単位の排出量の算定について説明をしています。 このnoteで、形は違えど、何度もお話ししているテーマではありますが、質問された際に、ふと「?」となることもあり、「やはり、ちゃんと理解できていないのかも」と考えたことがきっかけです。 ということで、今回は丁寧に、プロダクト基準を読み込みながら、必要な点に絞って説明していきたいと思ってます。 さて、前回は、GHGインベントリの算定の全体像を把握して、「さぁ、それでは、算定の実際を考えていこう」というところで

Allocation(配分)について考える(1)

排出量の算定において、すぐにぶち当たる壁が2つあると思います。 1.排出係数(CO2排出量原単位)の壁 2.部分排出量算定の壁 (私が勝手につけただけですので、ツッコミ無しでお願いします。) 算定を初めて実施する場合は、全体を大まかに捉える「スクリーニング」を行います。活動量として、会計データを用いる場合が多いと思います。 これは「お金を支払ったところで、CO2の排出がなされている場合が多い」「金額ベースでの排出係数データが比較的入手しやすい」ことによります。 会計デ

CFPの算定・検証に関する検討会(その3)

9月22日に実施された「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証に関する検討会」の内容について、2回にわたって紹介してきました。 前回は、CFPのこれまでの経緯や、その算定ルールに関する課題を事務局がどう捉えているかについてお話ししました。 今回はCFPの課題の2つ目、データ収集問題です。 算定においては、もう、これに尽きると言っても過言ではないでしょう。 算定支援の現場では、「経理システムから金額データを取り込んで下さい」

取引先に提供する排出量は?(その2)

前回は、取引先に提供する排出量「はじめの一歩」として、「事業者レベル」会社全体の排出量を算定し、按分により「製品単位」での排出量を求めましょう、と言うお話をしました。 次なるステップは「製品レベル」での排出量です。 実は、GHGプロコトルのプロダクト基準は、「製品レベル」のデータを下流へ提供することを求めています。 「attributable process」を算定のバウンダリーにすることとしています。「attributable process」とは、簡単に言うと、製品

取引先に提供する排出量は?(その1)

CDPの回答書作成、お疲れ様です。 締切日にはアクセスが集中するでしょうから、余裕を持って入力作業行いたいですね。「提出」をクリックするまでは何度でも修正できますので、とりあえずは入力しておきたいところ。 なお、提出後でも11月30日までであれば修正が可能です。 CDPグローバルチームへ依頼しましょう。 7月27日後に提出された回答は評価対象外ですから、とにかく、締切日までにどんな形でも一旦提出しておくことが肝要です。 初めての回答であれば、自社の排出量を算定するので精一