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第三者検証〜はじめの一歩(5)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」5回目。

4回目では、依頼する検証機関との合意内容についてお話ししました。

JIS Q 14064-3:2011(ISO 14064-3:2006)より

今回は、検証を受けるに当たって、どのような準備をしておく必要があるかについて見ていきたいと思います。

具体的には、次のようなフローになります。

JIS Q 14064-1:2010(ISO 14064-1:2006)より

実は、前回の話は、「検証機関」側から見た検証プロセスのスタートについて見てきたのでした。ただ、広義で「検証」を捉えると、受審する企業としては、検証してもらう報告書を作成する必要がある訳で、そのためのステップが存在する訳です。

さて、前回ご案内した「合意内容」を社内で決めなければなりません。
ここで一番強調したいのが「目的」ありきということです。

といいますのも、このところ、気候変動に限らず、あらゆる種類の「開示」要請がありすぎて、企業からしてみると「とりあえず、開示しとけばいいのよね」という風潮があるように感じているからです。

これには、開示の有無やその評価だけで判断する、一部のステークホルダーなど、利用する側の要因もあるかとは思いますが、時間とコストをかけて実施するのであれば、自社に対するベネフィットがあってしかるべきです。

それは、気候変動対策であったり、事業継続性であったり、お客様とのコミュニケーションだったり、信用リスク回避だったり、もちろん、売上拡大もそうでしょう。

なので、「何のため」に算定を行い、「何のため」に検証まで受けるのか。
担当者レベルでは無く、トップマネジメントレベルで議論すべき内容です。

それが決まると、「保証水準」が決まります。
既にご案内したように、むやみに水準を上げても意味がありません。
審査費用が高額になってしまうだけです。
「目的に照らして」適切な水準を選択します。

加えて、「目的」が明確であれば「範囲」も容易に決まりますよね。

国内だけなのか、海外まで含めるのか。
全商品対象なのか、特定の代表的製品のみなのか。
どの粒度、何%まで算定するのか。
バウンダリーはどうするか。自社のみか、取引先も含めるのか。

「目的」と「範囲」が決まれば、次に、算定手順を決めていきます。

ISO14064-1は組織の排出量の算定規格ですが、ISO9001 品質マネジメントシステムと同じように、フレームワークしか提供されていません。

担当者が実際に業務を行うことができる程度まで、自社に即した形でブレイクダウンした「算定手順書」が必要でしょう。難しく考えることはありません。組織であれば、業務マニュアルがあるはず。とにかく、「Doable」なものとすることが肝要です。

次に来るのは、この2つ。

f)適切な職員の役割及び責任を明確に定義し、これを伝達することを確実にする
g)組織のGHG情報、データ及び記録が、完全かつ利用可能であることを確実にする

誰が記録するのか、誰がチェックするのか、どのデータを使用するのか、そのデータがどこにあるのか、いつでも参照できるのか、といったことです。

ISO9001でもISO14001でも、マネジメントシステムであれば、当たり前に規格化されていることですよね。「GHG算定」に特化されているだけです。

これが「確実」にされていることが、検証の実務においては「超重要
それが、初回にお話しした、結論につながっています。

ここまで来た段階で、前回でお話しした、検証機関に依頼をし、「e)検証を行う者との間で、検証の目的、範囲、重要性及び基準について合意する」ことになります。

それを受けて、検証機関は「h)検証を行う者に適切な力量及び資格があること」が確実である旨を保証します。

さあ、ここからは、検証機関において検証業務が開始します。
次回は、その内容をご案内していきたいと思います。
引き続き、お付き合い下さい。


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