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Allocation(配分)について考える(3)

排出量算定における、以下の2つの壁についてお話ししています。

1.排出係数(CO2排出量原単位)の壁
2.部分排出量算定の壁

このうち、「2.部分的排出量算定の壁」について考えていきましょう。
「それって何なの?」は1回目で説明しています。

プロダクト基準には、配分を回避方法について3つの方法が示されており、2回目でお話ししました。

配分を回避する方法


今回は、残念ながら、どうしても配分が避けられない場合について説明していきたいと思います。

プロダクト基準には、3種類の配分方法が紹介されています。

配分を行う方法

1.物理的配分
2.経済的配分
3.その他の方法

何も特別な方法ではありませんね。
日常的にもなされていることでしょう。

最初に、「物理的配分」を行う場合を考えましょう。
この配分を行うための係数は複数存在します。

プロダクト基準には、具体例として、輸送に関する排出量を算定する場合の配分例が示されています。

輸送における排出量の配分

トラック輸送は「最大積載重量」が制限事項となるので「重量」を基準とする係数、列車輸送は「最大積載容量」が制限事項となるので「体積」を基準とする係数を選定した方が好ましい、という例です。

その他、配分係数としては以下のようなものが挙げられています。

・副産物の生産量
・輸送した貨物の量
・熱・電気副生成物のエネルギー量
・生産個数
・副産物である食品のタンパク質含有量
・化学成分

ここで留意すべきは、選択される係数は「対象としている製品の排出量(あるいは吸収量)との物理的関係を正確に反映するものでなければならない。」ということ。

意外とこれって、難しいし面倒ですよね。
ですので、支援の現場では、極力プロセスを細分化し「配分を回避する」ことに注力します。この経験が、今後の算定スキルの向上にもつながります。

どのような場合に「物理的配分」を選択するかというと、生産数に応じて排出量が変化する場面でしょう。他方、意外と気づきにくいのが、同じ製品が異なった名前、ブランドで販売されている場合。

例えば、有名な企業の製品をOEM供給しているメーカーが、自社ブランドとして同一製品を販売している場合。一般に、後者の方が安価に販売されますよね。製造時に発生する排出量は同じなのに。

これを、後述する「経済的配分」とすると、おかしなことになってしまいます。しっかりと対象製品を理解しておきましょう。

続いて、「経済的配分」です。これを選択するのは、対象としている製品と、同時に製造される製品(co-product)の価値が大きく異なる場合です。

プロダクト基準には、一羽の鶏から、人気があり需要が高いムネ肉と、安価で取引される部位や食用に適さないために廃却処分される部位が発生する場合が、例として挙げられています。後者は、前者を製造する場合に、不可避的に生じます。

このような場合に、例えば重量で配分してしまうと、排出量との関係において、実態にそぐわない結果となってしまいます。

ムネ肉生産における排出量の配分

ということで「経済的配分」となる訳ですが、その時に使用する価格は、生産者価格を採用すべきとしています。販売価格には、流通段階のコストも入りますから当然です。生産者が算定しているので、この点は問題にはならないでしょう。

WBCSDが推進している、比較可能な製品単位の排出量をシステマチックに算定するフレームワークとして開発が進められている「Pathfinder」においても、co-productとの価格差が大きい場合には、「経済的配分」を選択するようにガイダンスされています。

Allocation dicision tree

最後に、その他の方法になりますが、これはまぁ「様々」です。

業界団体などによる標準的な算定方法が定められている場合や、製品毎の算定方法PCR(Product category rule)がある場合、国によっては法規制上の算定ルールがあるかもしれません。

全くない場合には、自社でシナリオを作成して算定せざるを得ません。
が、これは、製品に限らず、組織のバリューチェーン全体の排出量を算定する場合も同じです。

つまり、会計データなどを利用して全体を捉まえる算定から、個別具体的なデータを収集して、積み上げで精緻に算定するステージへ移行するということに他なりません。

いずれは、「適切に配分する」でもなく「配分を回避する」でもない、「配分を必要としない」算定に到達したいものです。

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