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スウィート・メモリーズ|散文

最後の夏の夜
僕らはそぞろ夕暮の街を歩いてから
君が一人で暮らす部屋に入って
それでビールを飲んだ

君のスマートフォンを
bluetoothでつないだ
小さなスピーカーから
誰かがカバーした
スウィート・メモリーズが流れると
「メロウだねえ」と君は言った
「落下しているみたい」
君の分厚いメガネの底の瞳は
オレンジ色の光が乱反射して
測れなかった

僕らはずっと友達で
きっとこれからもそう
こんな風に積み重ねて
そんでずっと滑り降りて行って
見守ろう

君のことが好きなんだ
本当に
次の週には台風が来て
秋が来るよ




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