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COLOR

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バカリズムさんのライブ「COLOR」と同じ赤→青→白→緑→黄色→黒の順番でストーリーを作ります。
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黒い天使たちの会話

黒い天使たちの会話

「なあ、大黒。」
「なんだよ、小黒。」
 大きい黒い毛塊と、小さい黒い毛塊が並んでいる。
「お前ら、メシだ。」
 主人が呼ぶと、食事に向かって一目散だ。
「なあ、小黒。最近、先生元気ないな。」
「仕事辞めたからじゃないか?それにしてもお前の抜け毛すごいな、大黒。」
「自分だって抜け毛してるじゃん。」
 並んで食事をしながら、大黒と小黒は話している。
「鳴くほどうまいか。そりゃよかった。」
 それを

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檸檬の氷菓みたいな黄色を纏う。

檸檬の氷菓みたいな黄色を纏う。

 私は最近、結婚相談所に入会した。

 所長は母と同世代だと言っていた。おっとりしていて天然なところもあるけれど、気品ある大人の可愛らしさを持つ女性。

 初めは相談所に入るつもりはなかった。

 所長は取引先の社長の奥様だ。所長が契約の対応をして下さった時に、お誘いいただいた事が入会のきっかけになった。
 結婚のことは考えはいたが、結婚相談所を利用して婚活をすることまでは考えていなかった。しかし

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緑色できらきらしているもの。

緑色できらきらしているもの。

2学期が始まった。
今日は始業式だから、
ランドセルの中身はそんなに重くない。
でも、手提げに入れて持ってきた
自由研究の工作が大きくて邪魔くさい。

夏休みはおじいちゃんと一緒に、
おじいちゃんの家の近くにある海岸で遊んだ。
そこで、拾ったこの緑色のきらきらしているものを見つけた。

忘れずにポケットに入れて、持ってきた。
あの子にあげるんだ。
みーちゃん、とみんなが呼んでいるあの子。

みーち

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吐く息が白くなり始めたら。

吐く息が白くなり始めたら。

妻は今日、体調が良いみたいだ。

仕事帰りに病室を訪ねたら、
夕食後の院内散歩をして戻ってきたところだった。

病院の1階にあるカフェで買った、
妻が好きなラテを手渡した。

「いつもありがとねー。」

満面の笑みで口をつける。
この顔が見たかったのだ。

今年、夏の終わりに職場で倒れて入院した。
結婚して半年後のことだった。

もともと、何かに没頭すると寝食を忘れるタイプだ。
没頭してしまうと、

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青い中にいるうちに。

青い中にいるうちに。

「ねえ。」

今日は2限からだから、
ダイニングでのんびりと、
カフェオレとトースト、
スクランブルエッグとトマトサラダ、
デザートに頂き物のミスピーチ、
という朝食をゆっくりと堪能しようとしていたのに。
その思惑は、この一言で一気に崩れた。

「彼氏できたでしょ。」

姉だ。
6歳年上で、社会人3年目。
毎週火曜日と水曜日、もしくは水曜日と木曜日が休み。
いつもは日ごろの睡眠不足解消のために、

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赤い薔薇の咲くころに。

赤い薔薇の咲くころに。

あの頃とはずいぶん変わってしまったわね。
私はずいぶんと皺が沢山あるし、
笑うとそれはもう、
目じりがくっきりカラスの足跡みたいになるのよ。

それはあなたがいてくれたおかげ。

子どもたちがみんな巣立って、所帯をもってからも会いに来てくれる。
そしてかわいい孫たちが、長いお休みになるとやってきて庭を駆け回る。

あなたがいてくれたから、
そんな幸せがあって。
笑うとこんな皺が出来るの。

あの頃

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