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まなかい ローカル72候マラソン

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まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
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2020年8月の記事一覧

処暑;第40候・綿柎開(わたのはなしべひらく)

処暑;第40候・綿柎開(わたのはなしべひらく)

処暑。綿の実が開くとき。

遥かな空でも、巨大な綿飴のような雲が、残りの夏の気を大いに孕んで咆哮している。

綿雲。積雲。今年は特に大きく育っているようだ。それらが崩壊して千切れた綿雲(上写真)も空を流れ、やがて夕空を彩る。

綿の実。真ん中には、種が包まれてある。

中にある核が柔らかいうちは青い殻で守られ、核がしっかりしてくると、周りの綿が空気を孕んでふくらんで裂ける。

周りの綿はCOMAと

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立秋;第39候・蒙霧升降(ふかききりまとう)

立秋;第39候・蒙霧升降(ふかききりまとう)

信州の山あいの集落。少年時代を過ごした場所から尾根を一つ超えたこの土地に、この頃なぜか惹かれ、帰郷すると立ち寄っている。「お姫尊(お姫様)」と地元で呼ばれる大岩があって、小さい頃遠足で行った。

下のお宮のお祭りに一度か二度来たことがあったっけ。小さい頃はたくさんある小さなお宮それぞれで秋祭りがあってとにかく行くのが楽しかった。ちょっとずつ雰囲気が違うし、中学生くらいになるとちょっと遠くに友達がで

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立秋;第37候・涼風至(すづかぜいたる)

立秋;第37候・涼風至(すづかぜいたる)

この夏の東京で今頃涼しい秋立つ風を感じられる人はまずいない、そう言いたくなるくらい秋立つ気配は微かだ。涼風を待ち望む人がどんなに多いことか。

飢えた僕は信州での仕事のついでもあって

標高1500メートルの高原へ行く。あの場所へ行けば、彼らに逢える。高原の風に浸ることができる。

名残のニッコウキスゲが揺れている。

オレンジ色の渋いコウリンカには、月夜に出会ったことがあって好きな花だ。

アカ

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立秋;第38候・寒蝉鳴(ひぐらしなく)

立秋;第38候・寒蝉鳴(ひぐらしなく)

 目に見えないと、忘れてしまう。

 それに包まれていた不思議な時間。

 ふれることができないと記憶することすらできない。

 幼心に雑木林の中にぽっかりあった木立に囲まれ、陽が射し込み、ふかふかした緑の皮膚に覆われた場所が好きだった。

 近くに沢が流れ、大きな石は安心なぬくもりをたたえていた。木立の向こうに沈む夕日とカナカナが好きだった。

 いつも感じていた視線は今でも思い出せる。そこで生

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大暑;第36候・大雨時行(たいうときどきにふる)

大暑;第36候・大雨時行(たいうときどきにふる)

アニメ『サマーウォーズ』の舞台である上田小県(うえだちいさがた)の一隅で育った。夕立は夏の風物詩。雲が湧き、風が吹き、みるみる暗くなって激しく降る雨は今思い出すとドキドキする。そのあと虹が見えることがよくあった。ぽたぽたからぽつんぽつんへと、落ちる雨垂れにも虹が宿った。緑が光った。

ひとときの休息で地元の高原に急いだ。花の好きな母と高原の花畑を見るためだ。

高原は霧に包まれていた。しとしと雨が

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大暑;第35候・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

大暑;第35候・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

大暑 土用

土はますます黒くなる 

しかし 東京のど真ん中だと 土の上に立つことは ほとんどない

蝉の幼虫も アズマヒキガエルも アスファルトで轢死体になって よく見つかる

恵まれたことに 氏神様の境内にある小さな畑で藍を育てる機会をここ数年いただいている。

藍染に使う蓼藍だ。

今年は土も入れ替えて 被さって日陰を作っていた椎なども剪定してもらって明るくなった 肥料も概ねひと月ごとに与

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大暑;第34候・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

大暑;第34候・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

氏神さまの赤坂氷川神社には、徳川吉宗公が一ッ木にあったとされる氷川神社をこの地に遷座(1730年)して以来の拝殿が残っています。総欅造り、朱漆塗りの拝殿は、関東大震災や東京大空襲を奇跡的に免れて創建時のまま残っています。

正面の壁間には桐と鳳凰が描かれています(写真は赤坂氷川神社のサイトより拝借)。古来中国では、聖天子(徳のある優れた王)が即位すると、瑞兆である鳳凰が現れると伝えられてきたといい

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