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8.田舎の家に緊急避難する

 私の実家は九州にあります。「ポツンと~」まではいかないけれど、星空のよく見える田舎で、町もこぢんまりとしていて、のんびりできるいいところです。
 そうだ、実家なら低周波音から離れられるかもしれない! そう思い立ち、大阪から電車、モノレール、飛行機、バスと乗り継ぐこと6時間、夕暮れのふるさとにたどり着きました。

 ところが、家のなかに入ると低周波音で体が苦しい。冷蔵庫? いやいやもっと強い音。音をたどって西の窓から外を見ると、古い納屋の暗がりに、黒い大きな塊が見えます。
 母に聞くと、それは父がJA(農協)から3年前に購入した玄米の保冷庫。収穫したお米を低温貯蔵するもので、大きさも縦横それぞれ2メートルはありそうです。実家のあたりでは、米作りしている家にはたいていこの保冷庫があるらしく、その大きな稼働音にも驚きましたが、そばに近づくだけで私は頭がグラグラします。

 私が電源を切ろうとすると母が猛反対。私が低周波音に苦しんでいて、保冷庫から発生している強いその音を止めたいと伝えましたが、「お米も大事、お父さんの同意もないのに勝手に電源を切ることはできない」というので、父に電話することに。新型コロナの影響でずっと会えていない入院中の父にこのことを聞くと、親戚の家の保冷庫に中のお米を移せないか相談してみるという答えで、両親にとっては簡単に電源を切れないものなのだなとわかり、この日はあきらめました。

庭の柿の木が見える東側の部屋が、実家ではいちばん低周波音の影響が少ない場所でした。

 窓を閉めきると音がこもった感じでよけい苦しく感じられるので、窓を少しだけ開けて対策。そして耳栓。2階のベッドに横になっていた私は、まだ暗い朝方に振動で目を覚まします。いつも感じているエコキュート以上の強さです。ベランダから音の方向はわかるものの、近所の何が原因なのか暗くてわかりません。朝7時頃に体の重りが消えていくのを感じ、深夜電力を利用した何かが動いていた、とだけわかりました。

 一晩実家で寝てみると、家のまわりは、私がふだん接していない機械音にあふれていました。家畜のための機械や大型扇風機、大型のトラクターや農機具、ボイラー、水をくみ上げるポンプなど。これまで実家で過ごしていたときは、機械の音を時にうるさく感じることはあっても、それで体が苦しいと感じたことはなかったのに。

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