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本好きの読書感想【蛇にピアス/金原ひとみ】

私はこれを求めていたのだろうか。
この、無様にぽっかり空いた穴を、
求めていたのだろうか。

『蛇にピアス』集英社文庫


痛い。とにかく痛い。

最初の数ページ、

文字から得られる情報全ては

私の全ての感覚に痛みをもたらした。


只ひたすら痛くて、

なぜかお尻の辺りがゾワゾワぞくぞくしてきたので、

思わず椅子に乗せていた弛んだそれをきゅっと浮かせてしまった。


痛いは痛い。

しかしそこに暗い不安が存在する事は間違い無く、

その為予定調和的と言えるほどに

ぼんやりとその先が見えてしまうような感覚もあった。

恐らく読み手である私自身の過去のフィルターがそう思わせたのだと思うのだけれど、ひたすら感じる痛みを中和させてくれたのは、その既視感であり、お陰で何とか最後まで読めた気もする。


どうだろうか?


どことなく見えてくるルイの未来は

今のところ決して明るくはない。

だからといって特別不幸でも無い。

今の延長線である少し先の未来には、多分もう

アマと過ごしていた頃に感じていた痛みは

存在しないだろう。

その事が良いとか悪いとかは問題じゃない。

そんな事はどうでもいい。


問題は『わたし』自身。

脱皮する蛇の様に、永遠に破壊と創造を繰り返す、その身体にあるのだろう。


冗談じゃなくてさ、
痛い痛いとヨガリながら
そのまま遺体となってしまうその時に
男がもうひとり死んでなければいいんだけどね。と、密かに思ってページを閉じた私の頭は嫌になるほど暗く冷たく冴えていた。


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