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ネットで本が買える時代に、私が本屋さんに行く理由。

私は本が大好きです。
本のある空間に気持ちが落ち着きます。

思い起こせば子どもの頃、
あまり集団に馴染めなかった私の居場所は、
市の図書館で浸る本の世界でした。

大人になった今でも、
たくさんの本に囲まれて暮らしています。

好きな作家は、原田マハさん、道尾秀介さん、恩田陸さん…
など、数えたらキリがありませんが、
とりわけ、宮本輝さん。
その優しくて温かな作品は、私の心を捉えて離しません。

最初の出会いは『道頓堀川』。
繁華街に流れるドス黒い緑色の川面と、そこに生きる人々のささやかな光を放つ人生の対比に引き込まれました。
『錦繍』
『花の降る午後』
『ここに地終わり海始まる』は、特に心に殘る作品です。

心が疲れたとき、なんだか気分が浮かないときは、
気づけば宮本作品に逃げ込んでいます。


「本」が趣味

趣味は何ですか?という質問に何と答えようか迷います。
正直、趣味がありません。
本はたくさん読んでます。でも、

「趣味は読書です。」

なんて答えたら、
あぁこの人、趣味ないんだなと思われがち。

私の場合、読書というより本が好き。

作品はもとより、
ページをめくる時、
紙が擦れてから放たれる音、そして手ざわり。
本の重さとその厚み、
それらすべてがあってこそ、本の世界に入り込んでいけるのです。

だから私は「本が趣味」。

でもそうと答えたら「夢見がち」と見られがち。

悲しい現実

最近、本屋さんの数が減っています。
この10年で本屋さんは全国で4600店舗も減少し、
実に日本の4分の1のまちで本屋さんがないそうです。

私の身近でも先日1つお店が閉じました…。
なんだか、まちから知性が失われた気がして本当に寂しい限りです。

電子書籍もありますし、ネットでポチッと本が買えますからね。

本屋さんは楽しい

私は必ず、本屋さんで本を買います。
本が好きだから、だけではありません。
本屋さんには、無限の出会いと発見の喜びが潜んでいるからです。


*本との出会いが楽しい

私は読みたい本を探すとき、
インターネットで新刊情報やランキング、書評なども利用します。

しかし、これだ!と思って本屋さんに行っても、
大抵、違う本を買って帰ることになります。

その本を買うかどうかを決めるのは、最初のページと真ん中へん。
パラパラ斜め読みして、ビビっとくるかが基準です。

他の方のレビューは参考にはなりますが、
それぞれの感性があるので、
私に合うとは限らないのです。

こうなると本を巡る冒険の始まり

小説コーナー、専門書コーナー、新刊コーナーなど、出会いを求めて本の森をさまよえば、思わぬ一冊に出会えるのが楽しみです。


*装丁を見るのが楽しい

本の出会いのきっかけは装丁。

平積みされた本の表紙を見ているだけで、
本のジャンルを問わず心が湧き立ちます。

表紙の絵、フォントとそのサイズ、フレーズ、そしてそれらの配置のバランス…
限られた空間に本の世界観を匂わせるデザインは本当に美しい。

そして気になった装丁から本との出会いが生まれます。


*選書の「世界観」が楽しい

私にとって無くてはならない本屋さん。
参考書やビジネス書を買うなら大型店は便利だし、
個性が光る小型店の選び抜かれたラインナップも楽しい。

本との出会いを求めるならば、小さなお店の方が良い。
アートやカルチャー、地域や歴史の本…

本のラインナップやポップを通じて、書店員さんと本の会話をしている気持ちになります。

こうして、そのお店の世界観を楽しみながら、私を本の世界に誘ってくれます。

そして、最近の一冊

*『palmstories あなた』 palmbooks

津村記久子さん
岡田利規さん
町田康さん
又吉直樹さん
大崎清夏さん
この5名の作家さんによる「あなた」をめぐる短編集。

小さな手のひらサイズ

どれも珠玉の一編ですが、とりわけ津村記久子さんの作品
『六階を見習って』がお気に入りです。

主人公と、どこにでもあるような雑貨店との物語。
値段が安いわけでも、品揃えが良いわけでもなく、特に取り柄のないお店。
古びたスーパーやショッピングビルの中にありがちなお店を想像します。
あーあるある。

当初は不満げだったが主人公も、その後ことあるごとにこのお店に助けられ、やがて迎えた閉店を悲しみ、心からの感謝の言葉を述べるのです。

当たり前にあるものの大切さ。
目立たぬものの愛おしさ。
そして、それが失われることの怖さ。

そんなことを気づかせてくれる作品でした。

本屋さんありがとう!

いつまでも私のそばにいてください。

インターネットで情報が溢れる今の時代
逆に特定の興味関心に閉じこもり、見える世界を狭ばめているようにも感じます。本屋さんはキュレーター。
無限に広がる本の海から、私たちに本を選ぶ楽しさを教えてくれます。

私はこれからも、本との出会いを求めて本屋さんに通います。
そして、超微力ながらも本屋さんの魅力を広げ続けていきたい。

だから、本屋の皆さま、これからも末永く本好きのオアシスであり続けてください。よろしくお願いします。

私が好きな本屋さん(京都)

京都には、まちのあちらこちらに、本の世界へと誘ってくれる素敵な本屋さんがたくさんあります。
本屋さんが、出版文化が、京都の大きな魅力のひとつだと私は思います。


*京都岡崎 蔦屋書店|左京区岡崎公園

ロームシアター京都の中、スターバックスコーヒーと併設された書店。
アート視点の選書と空間作りが秀逸。
本棚を目でなぞるだけで楽しめる。
私的にはミニアートギャラリー。

*恵文社一乗寺店|左京区

叡山電鉄一乗寺駅から徒歩3分。
今ここにしかない本との出会いがある場所。
作品は新しければ良いってもんじゃない。
そんな時間に負けない名作も届けてくれる。
ギャラリーも併設。若手アーティストの作品展示なども開催。

*誠光社|上京区

京阪電鉄神宮丸太町駅から徒歩約5分
私にとって理想の書斎。
生きるための本がある。
独自の選書は、本というより本棚を楽しむ。
思っても見なかった本との出会いと気づきで、
世界をグッと広げてくれる。
唯一無二の本屋さん。

*ふたば書房|中京区など

見た目は“普通”のまちの本屋さん。
広くはないが、ツボを押さえた売り場がお気に入り。
お店によっては夜遅くまで開いていて、いつでも立ち寄れる便利さも魅力。
雑貨のセンスも抜群でついつい買って悦に入る。
同社が運営する雑貨店「アンジェ」は私のオアシス。



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