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自閉症支援者育成に興味をもった理由

 皆様お疲れ様です。Collaborate labという名前を付けて、自閉症支援にエビデンスのある支援の導入の普及を目指し、学びを情報発信をしています。最新のトピックや自身の学びを深めて現場に落とし込んでいくことが私の目標ですし、学びをシェアしていくことで皆様の何かのきっかけになればと考えています。大変恐縮ではございますが皆さんからもぜひ色々なご助言やご指導を受けながら洗練させていきたいと思っておりますのでどうぞコメント、質問、シェアやいいねなど様々なサポートをよろしくお願いいたします。皆様からのリアクションが励みとなります。

 これまで支援を実装させるための要素を整理して、それに向けた人材のマネジメントや人材のスキルアップについて検討してきました。

 なぜ私がそんなに自閉症支援や自閉症を学ぶだけでなく、効果的な自閉症支援者育成、マネジメントを重要視しているのかを整理してみたいと思います。もちろん自身があった体験が根源でもあるのですが、世の中的にもなぜ大切なのかを知ったから余計に興味が沸きました。これは私が大学院の修士論文のためにまとめたものを活用していますのでデータや内容などは当時(2023年発表時)のものになります。固い表現や少し古いデータなんかも使ってまとめていますが、ご承知おき下さい。「あーこの人はそんな流れで行きついたんだなぁ」と雰囲気を感じて頂ければ幸いです。今回は4821文字でした。



1.自閉症児者の有病率

 アメリカ疾病予防管理 センター(Centers for Disease Control and Prevention:以下CDC)の自閉症および発達障害モニタリング(Autism and Developmental Disabilities Monitoring:以下ADDM)ネットワークの2023年の調査によると、アメリカの8歳児における自閉症の有病率は36人に1人と されています。ADDMが最初の報告を した2000 年には150人に1人の割合であったことから年々その有病率は増加していると言えます。40人クラスの日本の小学校ではクラスに1人はいるような感じでしょうか?皆さんの感覚としてはどうでしょう。
 日本では、篠山らが全国の診療データベース(National Database NDB)を用いて自閉症診断の実態を調査し、日本における自閉症の発症率は世界的に報告されているよりも高いことを明らかにしています。この結果は増加する自閉症と診断された人々のニーズに対応するための支援システムの開発の必要性に注意を喚起するものであると報告しました。

2.日本における自閉症児者への支援

 自閉症児者に合わせた支援の一つの例として2016年に障害者差別解消法が施行され、全ての国民に求められた合理的配慮があります。合理的配慮とは

「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」

外務省:障害者権利条約パンフレットより

と定義されています。これらの体現例として合理的配慮等具体例が、内閣府のホームページにおいて データ集として蓄積・掲載されています。例えば、自閉症児者については教育の場面で教員の話を聞いて想像する ことが苦手なため、内容を理解することができない人には絵、写真、図、実物などを見せることで、授業内容や活動予定を理解しやすいようにします。就労の場面で聴覚過敏のため、人の話し声が気になってしまい仕事が手につかないことがある人には、人の行き来が少ない部屋で勤務できるようにするとともに、勤務中に耳栓やイヤーマフの使用を認めたりすることなどが紹介されています。合理的配慮の実践は障害の特性や環境、求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。

3.強度行動障害について

 個別性の高い特別に配慮された支援が必要な人たち、ということで自閉症支援の現場の中で話題にされているのは、いわゆる『強度行動障害』の人たちです。強度行動障害とは厚生労働省の強度行動障害リーフレットによると

「直接的な他害や間接的な他害、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現している状態。また、家庭で通常の育て方をして、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態」

厚生労働省.強度行動障害リーフレット

をさします。さらにそのリーフレットでは旧制度の「強度行動障害判定基準表」で得点10点以上の強度行動障害のある人が、療育手帳所持者80万人の概ね1%程度、全国で約8000人であると推計されています。1989年に強度行動障害の用語が初めて登場し、1993年の強度行動障害特別処遇事業において、施設におけるサービスの提供が行われるようになりました。つまり、ここで強度行動障害が福祉の対象となったことを意味すると考えられます。施設としても強度行動障害への対応が求められる時代になりました。
 一方で、そのような強度行動障害児者においては、2013年11月、千葉県において支援員の暴行で死亡する事件も報告されており、強度行動障害児者が虐待を受けるリスクが指摘されています。千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会は、千葉県社会福祉事業団による千葉県袖ヶ浦福祉センターにおける虐待事件問題、同事業団のあり方及び同センターのあり方について(中間報告)【概要】(2014年3月25日)の中で、事実認定及び委員会における検証の結果、虐待(暴行)が行われていた要因及び今後のあるべき姿、方向性について整理しました。具体的には、虐待(暴行)の原因の一つに個人の問題として支援スキルが不十分であったり、虐待防止についての基礎的知識がなかったりする、ということが挙げられ、このため、支援に行き詰まり、行動障害を抑えるために暴行に至った可能性があるとしました。このような背景を受け、権利擁護の観点からも適切で専門的な支援方法を教育する専門家養成の仕組みが求められ、障害者総合支援法における都道府県地域生活支援事業として「強度行動障害支援者養成研修」が実施されています。

4.強度行動障害支援者養成研修

 強度行動障害支援者養成研修は、強度行動障害児者に対し適切な支援を行う職員の人材養成として開始され、2013 年より基礎研修(指導者養成研修)が実施されました。翌2014 年には実践研修のカリキュラムが追加されています。内容として基礎研修では、強度行動障害やASDの基本的な理解と強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識の習得を目指しています。実践研修では強度行動障害に対する環境支援や、チーム支援の方法、アセスメント、支援の評価方法など具体的な支援方法を演習します。また実践研修には、同じ職場で指導者として、働く人に支援の仕方を共有する方法なども盛り込まれていました。
 プログラムの策定に関わっている国立のぞみの園によると、この研修の背景には強度行動障害が自閉症との関連が強いため、自閉症の研究やその成果、支援の基本的な概念と密接に関係しており、その内容の一つには自閉症児者への包括的支援プログラムとして研究や臨床が世界的に認められたTEACCH® Autism Program(以下,TEACCH®プログラム)の影響を受けているとしています。
 2018年には報酬改定により、加算対象事業に生活介護、障害児通所支援、計画・障害児相談支援が新たに追加されたことで、この研修の受講希望も高まっており、強度行動障害支援者養成研修の拡大という視点からは成果を上げていると言えます。一方で志賀は、この成果が実際に強度行動障害者に対する全国的な支援の底上げに結びついているかどうかについて今後検証すべき重要な課題であるとし、取り組むべき課題の一つとして実際の支援の現場で職員育成ができる仕組みづくりを指摘しています。

5.促進が困難である理由を考えてみる

 こういった世の中の背景を学んでいくうちにどんどんと自閉症支援者の育成に興味を持ち始めて今に至ります。昔から陸上競技の指導者、トレーナーになりたかったので常々そういった方向性を持っていたのでしょうね(笑)
 さて今回の背景には強度行動障害の人へ焦点を当てていますが、知的障害のない自閉症の方には、特別な支援や配慮が必要であることが理解されず、適切なサポートが受けられないことがあります。それによる過度なプレッシャーやストレスを受けたり、誤解や偏見が生れることで悩まれる方も多いでしょう。きっと理解をしてくれる人が周囲にたくさんいてくれることというのはとても安心することです。
 世の中的な背景から私の興味は見て頂けたかと思いますが私の実際の現場で感じたことは一番最初の記事でも書いていますのでまた良かったら見て頂けたらと思います。 

 だから人材育成をしたいなぁと思っていますし、啓発も含めてこれからの分野だと思っています。最後に色んな課題がありつつも自分なりに人材育成が重要だと言われていても進まない理由をより具体的に検討してみました。

1.忙しくて時間と余裕がない可能性
 人材が足りていないことも関連しますが現場の支援員は日常業務や目標に追われており、人材育成のための時間を取りにくいことがあります。また、人事関連の部署も同様に忙しく、育成に向けた動きをとりにくい場合も考えられます。

2.人材育成の知識やスキルが不足している可能性
 人材育成やマネジメントについての知識やスキルが不足している場合があります。人材育成担当者が適切な方法で指導できるようにするためには、効果のある教育プログラムの充実と計画が必要だと思います。

3.現場と経営層のギャップが大きい可能性
 経営層や人材育成担当者が推進を図る一方で、現場の支援員が育成の重要性を認識していない場合があります。もちろん逆もあるかもしれません。人材育成についての啓発や意識改革が必要ではないかと思っています。

 このあたりではないかなぁと私は考えています。また一方で人材育成に行く前に福祉業界としての課題も考えておかないといけないと思います。まずは人手不足の影響です。高齢化社会の進行に伴い、若い働き手の数が不足しています。昔ながらの支援観、教育観も影響して、新たなプログラムが進行しずらいのかもしれません。
 また、支援員の労働条件が厳しく、長時間労働や低賃金であることや感情労働によるストレス過多、文化的に保守的な方針があることが原因で離職率が高いことが考えられました。職員の求人についてもそもそも少なく、あったとしても高齢の方が多くとも言えます。そして報酬改定もありましたがまだまだ財源は不足しているように思います。
 これらの課題に対して、政府や法人、地域社会が協力して解決策を見つけることが重要だと考えています。こういったサポートや改善によって人材育成にもつながっていく可能性があります。様々な研究が進んでいる中で、うまく導入することができれば、きっと利用者も現場も助かる未来が待っていると信じています。

 気が付けば長く思ったことをつらつらと書いてしまっていました。皆様もそれぞれで悩みや思いを抱えていらっしゃることと思います。ぜひコメントなどで教えてください。本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。皆様の「スキ」や「フォロー」、SNSでの「シェア」が励みになります。よろしければ、関係者の方にもご紹介いただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

Collaborate lab
高橋 大地 



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