あの日のOKパットに思うこと
ゴルフセットを処分してからもう1年近くになる。6年前に妊娠してから一度もプレーしていない。もしゴルフを再開することがあったとしても、その頃にはもっといいセットが発売されているだろう、と思った。
私はゴルフが下手だった。5年ほど続けたけれど、スコアは3桁、おまけにルールの仔細については実はいまだに理解しきれていない。道具も、キャロウェイの初心者向けフルセットだけ。
それでも、会社員時代はラウンドに誘ってくれる友人、知人がちょこちょこいて、楽しいゴルフライフを送った。
ラウンドでは、目上の方とごいっしょする機会も多かった。
そんなとき、へなちょこゴルファーの私は、カップのかなり手前で「オッケー!オッケー!」と声をかけられることがあった。後ろの組が迫っていなくても、だ。
本来、OKルールとは、ゴルフボールがカップ近くにあり、パットを外しようがないと判断されたときに適用されるものだ。
ある年配の男性はニコニコしながら言った。
「いいんだよ、オッケーオッケー! 女の子は華を添えてくれるだけで十分なんだから」
当たり前だけれど、ゴルフの腕前は期待されていないのだ。
私もそうした扱いを受け入れていた。感じよく、マスコット的に振る舞うことで、生きやすくなると思っていた。かわいくもないし、マスコットなんてガラではなかったにもかかわらず。
妊娠を機にゴルフをやめ、生活スタイルも変わった。
そして、今になって思う。「あの処世術はけっこうまずかったな」と。相手に悪印象を与えないことに心を砕き、かわいがられようとする戦術は、窮屈なものだった。結局、ゴルフもうまくならなかったし。いや、これは八つ当たりか。
当時の私は「女が生きていくためにはかわいげがなくてはいけない」と思いこんでいたようだ。そんなこと、ないのに。
今の私は、もうOKパット要員にはなりたくない。
「オッケー!」と笑みを向けられるときの、嬉しいような、少し情けないような、どうにも複雑な気持ちを味わいたくない。
子育て中の身としては、娘たちに自分らしく生きてほしいとも思う。無理して自分を押しこめず、正当に評価されてほしい。
私もへらへらと「ありがとうございまーすぅ」と言っている場合ではない。子は親を見て育つ、とかなんとか。自分自身がフェアなチャレンジをする。それが、娘たちの将来にもつながると信じている。へっぽこかあちゃんも、ぼちぼちやってます。
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