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「私なんて」と「困ってない」。それでも女性教員へのプログラミング教育機会が必要だと思う理由

小学校を中心とした研修を担当している未来の学び探究部の竹谷です。

みんなのコードは、2021年度から、女性教員向けに特化したプログラミング教育の教員養成プログラム「SteP」を提供しています。研修に留まらず、参加された先生方の力でどんどんすてきなコミュニティになってきています。しかし、まだ十分とは言えません。そこで、なぜ、活動を広げる必要があるのか、そのために必要なことは何かについて考えてみました。

これまでの活動の様子については、以下記事もご参照ください^^
女性教員の力で学校の景色を変える!プログラミング教育コミュニティ「SteP」

まずはざっと前回のおさらいから。


なぜ始めたか〜「情報技術に強いのは男性」というイメージ〜

みんなのコードは、公教育におけるプログラミング教育の普及活動を続けてきました。その中心となる取り組みとして「プログラミング指導教員養成塾」を立ち上げ、意欲的な先生方への研修の提供や授業づくりの支援を行ってきました。この研修には2,100名以上の小学校教員が参加し、各地でエバンジェリストとなってプログラミング教育の普及を進めてきました。

しかし、小学校教員の6割は女性であるにも関わらず、プログラミング教育研修会の参加者の8割以上は男性であり、プログラミング教育におけるジェンダーバランスの不均衡が如実に現れていることに違和感を感じるようになりました。各自治体からの依頼で実施している研修会でも同様の傾向が見られました。

この背景には、学校で、プログラミングやICT関連の研修参加が男性教員に促される傾向があります。

実際、私が小学校に勤務していた頃から「情報技術に強いのは男性」というイメージがあり、校内のICTに関わる対応は主に男性教員が担当する場面が多く見られました。こういった景色を児童生徒が日常的に見ていると、「パソコンは男性が得意なもの」という無意識のバイアスが形成されてしまうことにつながります。

これまでの取り組みの女性版をやろうとしたら、引かれた

このような状況を改善しようと、女性教員に限定した研修会StePが生まれました。初年度(2021年)は、それまで実施してきた「プログラミング指導教員養成塾」という研修プログラムと同じように、参加者本人が授業を実践することをゴールに設定し、そのためのコンテンツやサポートを用意して展開していきました。

しかし、プログラムが終わってみると途中で離脱してしまった人がかなりの人数に上ってしまったのです。

考えてみれば、学校という場でプログラミング教育を進めていこうという女性が少ない中で、積極的に授業の実施に向かっていくのは心理的負担が大きくて当然でしょう。それよりも、「自分が一人じゃない、仲間がいる」という実感をもてることが参加した先生方のニーズだったのです。

そこで、2022年度は、授業実施を第一のゴールにするよりも、互いに情報交換を通して思いを共有することを優先するようにしました。

すると、参加者の先生方の中から自発的に「もくもくタイム」の企画が上がってきました。「もくもくタイム」というのは、オンライン会議に接続し、何かを話さなくても一緒の時間を共有することが第一の時間です。指導案の作成を進めるもよし、洗濯物をたたむもよし、気が向いたら声を出して会話して、またそれぞれの時間に戻るのです。こうした緩やかな雰囲気が好評です。

ああ、何かの成果以前に、まずはつながりがあってこそ…

と改めて実感しました。

こうした経緯で2023年度からは、研修を行うというよりもコミュニティとして、運営自体も女性の先生方の主体性にできるだけお任せし、私たちみんなのコードは環境を整えるなど支える側に回るように心がけています。

課題2つ 「私なんて」と「困ってない」

今後さらにコミュニティを広げていきたいところですが、乗り越える必要のある課題が2つあると考えています。一つは「私なんて」、もう一つは「困ってない」です。

「私なんて」というのは、自分を過小評価してしまう思い込みによって一歩踏み出せずにいる状態を指します。インポスターシンドロームとも言われ、実力があるにもかかわらず、成功しても偶然か周囲のおかげと思ってしまう心理的傾向で女性に多く見られるようです。

でも、ICT に不慣れな先生の方が困っている子の気持ちが分かるという良さもあります。また、すでに SteP に参加している先生方もこれまでに困難や不安を感じた経験がおありです。そういった例を紹介しながらコミュニティへの参加を促していけたら、と思います。

「困ってない」は、自分自身が不適切な状況にいることに気付いていない可能性があります。ICT は男性の方が得意なはず、女性には向いていないという思い込み(ジェンダーバイアス)に取り込まれて、「自分の役割ではないので大丈夫」としてしまっていているような場合です。しかし、それはジェンダーバランスの不均衡を再生産して児童生徒が見る景色が変わらないままということにつながるのです。

目の前の景色が当たり前ではない、もっとカラフルな世界があることを一人でも多くの女性の先生に知っていただけるよう、学ぶ機会の提供を増やすことも重要だと考えています。

男性のサポートが大事な理由

女性の先生方のためのコミュニティですが、スムーズな運営やさらなる発展のためには男性の力も必要です。なぜなら、とりわけテクノロジー関連の分野はまだまだ男性中心で、女性が主体性を発揮しにくい雰囲気があるからです。

女性の先生が新しい取り組みを始めようとしたときに、周りの男性が明確な支援の姿勢を示したらどうでしょう。
きっとはるかに取り組みやすくなるはずです。

サポートする男性を増やすことも、現時点では重要なことだと言えます。ただ、どのような形で男性が支援するのがよいのかという点は十分に検討しなければなりません。私自身も男であり、まだまだ自分自身の中にも無意識のバイアスがあることに気付いて難しさを感じる場面もあります。

StePは、 Step by step for teacher’s Programmingの略称で、 「一歩ずつゆっくり、でも着実に進んでいこう」という思いが込められています。関係する皆さんと一緒に、それぞれの思いを率直に出し合いながら、対話を通してよりよい方向を目指せる場を少しずつ、それこそ Step by step で作っていきたいと思います。

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