女性教員の力で学校の景色を変える!プログラミング教育コミュニティ「SteP」
小学校を中心とした研修を担当している未来の学び探究部の竹谷です。
みんなのコードでは、2021〜2022年の2年間、女性教員向けに特化したプログラミング教育の教員養成プログラム「SteP」を提供し、2023年現在はその参加者の皆さんが集うコミュニティの運営を支援しています。
今日は、これまでの取り組みと今後についてお伝えします。
なぜ女性教員向けに特化?不自然な事実に直面
みんなのコードは、公教育におけるプログラミング教育の普及活動を続けてきました。その中心となる取り組みとして「プログラミング指導教員養成塾」を立ち上げ、意欲的な先生方への研修の提供や授業づくりの支援を行ってきました。この研修には2,100名以上の小学校教員が参加し、各地でエバンジェリストとなってプログラミング教育の普及を進めています。
しかし、この活動の中で、私たちは不自然な事実に直面することになりました。
小学校教員の6割は女性であるにも関わらず、養成塾の参加者の8割以上は男性であり、プログラミング教育におけるジェンダーバランスの不均衡が浮き彫りとなったのです。各自治体からの依頼で実施している研修会でも同様の傾向が見られました。
この背景には、学校で、プログラミングやICT関連の研修参加が男性教員に促される傾向があります。
私が小学校に勤務していた頃から「情報技術に強いのは男性」というイメージがあり、校内のICTに関わる対応は主に男性教員が担当する場面が多く見られました。こういった景色を児童生徒が日常的に見ていると、無意識のバイアスが形成されてしまうことにつながります。
内閣府の調査によると、理数系の科目の教員が女性の場合、「自分は理系タイプだと思う」という女子生徒の割合が中学2年の段階で11%増加することが判明しています。また、OECDの調査によれば、理工系分野の大学修了者に占める女性の割合は、日本は加盟国の中で最下位という結果が出ています。
すでに小学校段階において、プログラミング教育を積極的に実践する教員が男性に偏っているということは、その先の中学や高校で女子がプログラミングに関心をもつ芽を摘んでしまう可能性があるのではないかと考えました
こうした課題を解消するため、みんなのコードは女性教員向けにプログラミング教育の実践をサポートするプログラムを始めることにしたのです。
StePの誕生と歩み
プログラムを提供する上で、女性の先生方がもっている課題感に即したものにすることが必要だと考えました。
そこで、プログラムを実施する前に、これまでの養成塾に参加してくださった女性の中から数名の方にアドバイザーをお願いして「おしゃべり会」という形で相談させていただきました。
その結果、養成塾の名称が「SteP」に決まりました。StePは、 Step by step for teacher’s Programmingの略称で、 「一歩ずつゆっくり、でも着実に進んでいこう」という思いが込められています。イメージキャラクターをアルパカにすることも決まりました。
「一歩ずつゆっくり、でも着実に進んでいこう」とは?
1年目、は参加した先生がプログラミングを取り入れた授業を実践することをゴールとしていましたが、実際に授業をするまでには至らなかった方が多くいました。 先生方の様子を見て、学校現場の中でいろいろなハードルがあることを感じたため、2年目は無理に授業実践を求めることは控えるようにしました。
そんな中、参加者の中から自発的にオンラインでの交流を提案してくださる先生が現れました。
「もくもく会」と称して、仲間内でオンライン会議につなぎ、ひたすら黙々と作業、家事をやっていてもいいし、質問したくなったら質問できるという緩やかな時間を過ごすものです。こういった発想は私からは出てこないもので、大きな発見となりました。また、LINE のオープンチャットを設定したところ、プログラミングとは直接関係のない話題も交えつつ、とても活発なやり取りが行われるようになりました。
そして、終了後のアンケートには、
「得意じゃないから見える、できることもある」
「いろいろな先生と交流できてハードルが下がった」
「一緒に考える人がいるという安心感で一歩踏み出せた」
という声が寄せられました。
このような参加者の様子からわかったのは、「成果を求めることよりも、まずはコミュニティが必要なのでは?」と感じました。教育の現場での取り組みは単なる知識・技術の習得だけでなく、その背景にあるコミュニティの支えや情報交換の場が欠かせないということなのです。
コミュニティへの移行、先生主体の学習会の開催
このような経緯があり、2023年度は企画・運営もすべて女性の先生方が中心となって進める SteP コミュニティとして進めていくことになりました。私たちみんなのコードは、そのサポートとして関わっています。内容もプログラミングに限らず、広く情報技術に関連する学習を対象とすることにしました。
今年8月には新しい体制での学習会を開催しました。中核になってくださる先生が他のメンバーの声を集め、「プログラミング教育の実践事例」や「デジタル・シティズンシップ教育の理論と実践」を内容として開催されました。参加した先生方からは、こういった実践的な内容の共有が高く評価されました。また、久しぶりに対面での交流の場がもてたことや、Google オフィスでの開催は新たな刺激や視点をもたらし、より学びを深めることにつながりました。
Google の皆様には多大な協力をいただき、会場を提供していただいただけでなく、IT企業の実態を知ることができるオフィスツアーまで体験させていただきました。この場を借りて、改めて深くお礼申し上げます。
今後の広がり
これからのSteP コミュニティは、プログラミング教育をはじめとする情報技術について学ぶ教育の普及とジェンダーバランスの確立、さらに、女性教員が学校・社会から応援される環境づくりを目的としてさらに活動を広げていきます。
この記事を読んで関心をもたれた小学校の女性の先生方やICT支援員の皆様、ぜひ!コミュニティにご参加ください。
また、これまでは小学校の教員を中心に活動してきましたが、今後は中学校や高校の女性教員にもその活動を広げることを目指しています。
中学や高校の段階でのプログラミング教育やデジタルリテラシーの重要性が増していくことは間違いありません。中学・高校の女性の先生方のニーズや課題に対応し、小・中・高で一貫した教育を進めるための情報交換の場としても発展していくことを目指しています。
ぜひ、 info@code.or.jp までご連絡ください。お待ちしています。
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ここまでお読みくださりありがとうございます。
みんなのコードは、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動し、多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでまいりました。
私たちの活動に共感いただき、何かの形で応援したい、と思ってくださった方は、みんなのコードへの寄付をご検討いただけると嬉しいです。
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引き続き、21世紀の価値創造の源泉である「情報技術」に関する教育の充実に向けて、これからも取り組んでいきます。
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