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ライラック杯 俳句審査員賞 てまり賞


ライラック杯へのたくさんのご参加、ありがとうございました。

今回は、俳句の審査員という大役を仰せつかりました。

プロの俳人でもないし、私でいいの?、という思いもありましたが、私なりの視点で参加作品を読ませていただき、その中から響いた12句に、てまり賞をお贈りします。

それぞれの作品に稚拙ながら感想を添えさせていただいたのですが、詠み手の方の意図と異なっていたらすみません。

俳句そのものの力を感じたくて、また交流のあるなしによる忖度を排したくて 投句記事は一切読まない状況で選びましたので、どうかご了承ください。


🌸1位


99.やはらかく読経を包み風光る


心が浄化されるような とても美しい俳句です。

「やわらかく読経を包み」は、心地よく優しい響きがあり、読経をする人の穏やかな様子を表しています。「風光る」は、風景が輝いているように見える様子を表現しています。

読経をする人が自然に溶け込んでいるように見える風景を描き出しています。読経が周りの景色と調和しているということは、自然と一体化しているということでもあります。自然と人が調和している美しい風景を表現していると言えます。

自然や風景と人間の調和が大切であることが伝わってきます。また、静かな心を持って優しく読経することで、自然と調和することができるというメッセージも感じられます。

一昨年に母を亡くしたことも この句に惹かれた理由のひとつかもしれません。



🌸2位


39.肩落とす青年の影いぬふぐり


作者の感性が凝縮された素晴らしい御句だと思います。

初めて読んだとき チューリップの「青春の影」という曲が思い浮かびました。

いぬふぐり がとても効いてます。

「肩落とす青年」という表現は、青年が何かに悩んでいるように感じられます。その悩みが大きすぎて、肩に重荷を感じているのかもしれません。

この俳句は、青年の内面的な状況を、季節感を交えて表現していると感じます。また、青年の悩みを、読み手自身の経験や感性に重ね合わせることで、共感を呼び起こす効果もあると思います。

俳句の美しさは、その簡潔さや季語を使った表現など、言葉の工夫にあります。この俳句も、作者が選んだ言葉の一つ一つに、その工夫が感じられます。


🌸3位


173.自転車の猫背しなって春夕焼


パッと情景の浮かぶ句です。春の気だるさと幸福感が伝わってきます。

自転車の漕ぎ手の着ているシャツが風をはらみ 背中側に膨らんでいる様子が「猫背しなって」なのかなと思いました。 

春の夕暮れ時に自転車に乗っている人物の様子を描写しています。自転車に乗っていることで感じる風の心地よさや、疲れた時の猫背など、具体的な描写がされています。また、春の新緑が広がる景色や夕焼けに照らされた桜の木の美しさが、詠み手の感動を表現しています。

全体としては、具体的な描写があり、美しい景色と感情を表現している俳句だと思います。

また、薔薇の芽や舌にころがす金平糖 での みんなの俳句大賞 受賞
おめでとうございます!!


🌸4位


342.去った子を繰り返し思うこどもの日


どことなく 切なく、寂しい雰囲気を感じます。

「去った子」という表現から、子供がこの世を去ってしまったことを示唆しているようにも感じます。(あるいは巣立ち?)

その子供を思い出している様子が、「繰り返し思う」という言葉で表現されています。こどもの日という、本来は明るいイメージのある日に、寂しさと悲しみが混ざり合った心情が表現されています。

「こどもの日」という季語が入っていて まさに こどもの日の今日発表する賞にふさわしいと思います。

短い言葉の中に哀しみや切なさを込めて表現されていて 詠み手の感性がキラリと光る 心に響く素晴らしい御句だと思います。


🌸5位


266.最後まで飄々としてるランドセル


一読して 小学校の時の下の子の様子が思い浮かびました。

他人とコミュニケーションをとるのが苦手で「ぼっち」だった下の子。
まさに 飄々としてました。

「最後まで飄々としてる」という表現は、ランドセルが使われる最後の瞬間まで、その印象を保っていることを表現しています。ランドセルは、子供たちが学校に通うために必要な道具であり、子供たちの成長とともに必然的に使われなくなるものです。

この俳句は、一見すると単純な言葉の羅列に見えますが、その中に深い意味が込められています。ある種のペーソスと可笑しみが同居している感覚。

このように、俳句には言葉の奥深さがあることがわかります。作者の感性が込められた、独特の響きや意味合いを持つ素晴らしい御句だと思います。


🌸6位



287.
五十路とてたんぽぽ色の春セーター

年齢を超えた美しさと、季節感を表現した句だと思います。

「五十路」という表現は、50歳を意味します。年齢を表現する言葉が入ることで、時間の流れを感じさせます。「たんぽぽ色の春セーター」という春らしい明るい色合いのセーターが、その年齢を超えた美しさを表現しています。セーターの色が、春の花であるたんぽぽの色合いを連想させることから、季節感も表現されています。

春は新しい始まりや希望を象徴する季節であり、この俳句は、年齢を超えた美しさとともに、新しい始まりを意味する春を表現していると解釈できます。

年齢に関係なく、若々しくありたいという前向きな気持ちを感じました。個人的に 同世代の私自身を励ましてくれているようにも思えました。

作者の感性が表現された、心に響く素晴らしい御句だと感じます。



🌸以下 順不同



32.ライラック チェルノブイリの 処女の墓


43.卒業式過去の自分に謝辞を告げ


73.
菜の花や休耕田に人集め


128.
春の服個人情報刺繍せり


221.
言い合ひの痼り消し去り春の風


245.肩書きは頑固に農家山笑ふ


このような機会を与えていただき ありがとうございました。


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