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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2020年11月の記事一覧

短歌 晩秋 十首

短歌 晩秋 十首

1
流行に乗り香水を買ったけど自分のせいにされたくはない

2
散り終えたあとの枝にもブランコの紐が括られ少女が遊ぶ

3
あたためたミルクに張った膜ひとつ曖昧なまま破る真夜中

4
金魚鉢ひとり寂しくないのかと問うてもゆらら長い前髪

5
変わらずにいられないから記念日はひみつをひとつ増やす日にする

6
改札の伝言板の告白はほこりをかぶり静かに眠る

7
パンケーキとホットケーキ 定義とは意味

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短歌 文房具 十首

短歌 文房具 十首

1
叫んだら届くだなんて嘘でしょうボールペンさえ消せる時代だ

2
削るほど鋭利になってく鉛筆は心模様の代弁をする

3
落書きを消すためだけに使用する修正液が上塗ったもの

4
人を刺すことさえできる道具にてきみに手紙をしたためている

5
分度器とパンの袋を留めるやつとにはとても悲しい共通点が

6
こんなにも30センチは短くて通勤かばんに収まるものか

7
消ゴムで消せないものは愛、絆、ひか

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短歌 風 十首

短歌 風 十首

1
木枯らしは過日のきみの歌声を遠く遠くへ連れ去ってゆく

2
スカートをめくる北風もしかして私は恋をしたんでしょうか

3
傾いて置かれたままの写真立てのなかのきみは風を知らない

4
落ち葉舞う朝を迎えて別れだけ必然であることに気がつく

5
風を切り走る列車は新宿で風そのものになるんだろうな

6
焼き芋を分け合う人が待っている北風ももう冷たくはない

7
木枯らしに2号がもしもあるのなら春

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短歌 カクテル 十首

短歌 カクテル 十首

1
背伸びしてキールを飲んだ5分後にくたっと肩に寄りかかるきみ

2
新しいリップを買ったばかりでも別れ話に関係はない

3
ふられた日ブルームーンを飲み干して海を見にいく予定を立てる

4
リクエストソングにとことん励まされラジオネームを考える夜

5
月もまた孤独なんだなベランダの洗濯物も乾きやしない

6
番号もメアドも知っているけれどきみのほんとを何も知らない

7
夜の海波音がざんざんと

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短歌 恋する星座 十首

短歌 恋する星座 十首

1
偶然が必然になる瞬間は辞書には「恋」と記されている

2
また会える約束だけがオリオンのとなりで今も瞬いている

3
綺麗事という必要悪があり今日もなんとか生きてゆけます

4
オリオンのいちばん右で光る子はあたしの好きなにおいがするはず

5
恋をしたという自認はないようねどうやら重症みたい(あたしは)

6
涙腺が大渋滞で迂回路を探していたら星座になった

7
頼むから冷たくしてね好きじゃ

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短歌 晩秋のカニ 十首

1
コンビニで肉まんを買ういつもの儀式のように冬が近づく

2
道端に冷えたコインが落ちていて寂しくなっていいのだと知る

3
1プラス1が2になるとき0はレゾンデートルを探しはじめる

4
くちびるをくっと上げたら虚しさに勝てるだろうか 勝ったところで

5
カニクリに蟹が入っていなくても重要なのはクリームのほう

6
さあ早く(ミラーボールを飲みこんで踊ってしまえなにもかも虚仮)

7
ささ

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短歌 のど飴 十首

1
のど飴をくれた人から幸せになれる仕組みを早く作って

2
口当たりのいい言葉を多用する優しい人を見たことがない

3
自己犠牲という言葉を知らずとも「みんな違ってみんな」がそれだ

4
誰かさんの機嫌のために潰されるこころがあった(紅茶は美味か)

5
常識はポケットのなかいざというときナイフとして使えるよう

6
信じてた道が汚れてしまっても掃除をすればいいだけのこと

7
のど飴がほしい季

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短歌 霜月 十首

短歌 霜月 十首

1
心にも花が咲くとはいうけれど根を張る場所を誰も知らない

2
踏切の赤いランプが明滅に溺れるたびに仔猫がよぎる

3
桜などモブでしかない霜月の街路にひとり佇む天使

4
そのままのあなたでいいと言われてもトゲが刺さったままでは嫌だ

5
信じれば信じるほどに真実にかかるモザイクはなぜ濃くなる

6
かがやきは照明係が物陰で耐えているからと心得よ

7
翼なら倉庫の中よ(なぜかしら手に入れたな

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短歌 きみのとなり 十首

短歌 きみのとなり 十首

1
行き先を知らないバスに乗るようなきみのとなりで過ごす日常

2
いつかまたきみが壊れてしまったらリビングの薔薇を新しくする

3
美学には程遠い場所にある生き様をどうか笑っていつもみたいに

4
駅前のネオンがちかり瞬いてまだ平気だと誇張している

5
群れをなす制服たちが支配する京王線で育てる双葉

6
ごく普通普通普通のこととしてきみは十三夜に綻びた

7
停留所だけが孤高を知っている乗り

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