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実践と実感の言葉が放つ説得力「うつからの脱出」下園壮太著|ココカリ心理学コラム

臨床現場に立ち続けていると、気分障害と認知行動療法CBTの相性の良さがわかる。もちろんCBTは万能ではないし、タイミングを間違えれば逆効果になる危険性を孕むけれど、それでも他の療法に比べてクライエントを選ばない。セラピストであれば身につけておくべき心理療法である。

さて、気分障害を患う可能性、生涯罹患率をご存知だろうか。皆、基本的には「自分が罹ることのない病気」と思い込んでいる。以下の数値を見てほしい。

うつ病 10.0%
インフルエンザ 10.0%
交通事故 0.2%

一般的に、うつ病の生涯罹患率は10.0%と言われる。10人に一人は罹るのだ。これはインフルエンザ感染率(同じ空間に感染者がいた場合)と同じ数値である。交通事故と同じくらいに思ってないだろうか。交通事故は0.2%、うつ病は10.0%である。全然違う。とても身近な病気であり、他人事ではない。

うつ病の治療は、投薬治療にCBTを掛け合わせることで回復が高まることが証明されている。著者は「自衛官である私からみれば、CBTは明らかに訓練である」と述べている。本当にそうだと思う。正しいやり方で反復練習することで、傷つきにくいこころを獲得することができる。

本書はセラピストとクライエント両者に向けて、著者の臨床経験から導かれた効果的なメソッドが紹介されている。オーソドックスな手法でも経験から生き残った手法だと思うと、説得力が違う。自信回復作戦を実践していきたい。

『うつからの脱出 プチ認知療法で「自信回復作戦」』下園壮太著

自衛官である私からみれば、認知行動療法は明らかに「訓練」である。

人間は疲労が少ない時は少しの休憩で回復するが、いったん疲労しきると、少々の休憩では回復しないのである。

うつ状態になると、物事の最悪を考え続ける症状が出る。ヒトは少しでも危険があればその行動を取らないという用心深さが必要だった。この機能をもたない原始人は「大丈夫だろう」と水を飲みに行き、熊に襲われた。疲労しきった状態では、外敵から身を守る必要性から「不安のプログラム」が最大に働くようになる。

疲労しきると、自らの地位を守るために「怒りのプログラム」を発動させる。威嚇である。攻撃する。戦いに備える。近づいてくるものはすべて敵に見える。
威嚇し戦う気持ちを準備するため、「自分は正しい、強い」といった偏った思考が支配的になる。そう思わねば危険な行動に出られないのだ。

セルフCBTが失敗する理由。それは、カウんセリングや家族内など限定条件下ではうまくいっても、実生活では相手がいて仕事があり時間制約もあるから。初心者がチャンピオンとリングでボクシングしようとしているのと同じ状態である。ステップを踏んでいく必要がある。

バランスと揺らぎ。この2つを意識しよう。

回数をこなすこと。また、感じるトレーニングもとても大切である。行動に移しやすいことから始める。


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