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リカレント教育ってどうなの?〜実経験した私の見解|ココカリ心理学コラム

日経新聞に掲載されたの私の記事は「リカレント教育」が大テーマでした。年を重ねてからの学び直しが当然な時代に移行しています。会社員だった30代に産業カウンセラーとキャリア・コンサルタントの資格を取り、40代で臨床心理士と公認心理師を取りにいった、私の実感を書いてみます。

まずは言葉の整理から。「リカレント教育」とは、義務教育期間や大学で学んだ後に、教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度のことを指します。スウェーデンの経済学者・レーンが提唱し、1970年代にOECD(経済協力開発機構)で取り上げられたことで、世界的に知られるようになりました。

recurrentの意味は「反復」「循環」です。リカレント教育は、ビジネス場面では「回帰教育」「循環教育」と訳されます。社会人になってからも必要に応じて学び直すため、「学び直し教育」「社会人の学び直し」とも呼ばれます。

リカレント教育に似た言葉に「生涯学習」があります。社会人を対象としたリカレント教育を「生涯学習講座」として開設している大学もあり、明確な区別がない場合もあるようですが、実際には「目的」と「内容」が違います。「生涯学習」に含まれる形態のひとつが「リカレント教育」だといえます。

生涯学習
【目的】人生をより豊かにする
【内容】仕事に直結しなくても、趣味やスポーツ・ボランティアといった生きがいに通じる内容も含まれる
リカレント教育
【目的】仕事に活かす
【内容】修業中や修業後も働くことを前提として、仕事に活かせる知識に限定される

私の場合

さて、上記の定義に沿って、私の実例で言うと、35歳で受講した「産業カウンセラー養成講座」と翌年の「キャリア・コンサルタント養成講座」は生涯学習で、41歳の「臨床心理士指定大学院」での学びはリカレント教育となるでしょう。

生涯学習

会社員として成長の停滞を感じ、何か変化を加えねばと思案していた頃、ずーっと心理学に興味があるんだから少し真面目に学んでみようか、という動機で受けた産業カウンセラー講座は、私の人生の転機になりました。それまで趣味と独学の範囲だった心理学を、初めて体系立てて学んだのです。とても有意義な時間だったし、楽しかったし、面白かった。純粋にそう思えました。おかわりしたくなって、翌年には、さほど興味がなかったキャリア・コンサルタント講座まで受講することになりました笑。

資格を取得したら欲が出てきて「社内カウンセラー」として仕事をしようと試みたのですが、会社からは同意を得られず断念しました。「心理職がしたくて資格取ったわけじゃないから」と納得はしていたのですが、月日を重ねるごとにその想いは膨れ上がってしまいました。結果的に40歳で会社員を辞め、翌年に大学院へ入学し、臨床心理士・公認心理師となり、現在に至ります。

私の場合は、「生涯学習」から入って「リカレント教育」に流れた形、なのでしょう。リカレント教育は仕事直結なので、少し重いですよね。生涯学習は自分の人生に彩りとか豊かさをプラスするものなので、とっかかりとしてはこちらが先にあっていいのではないでしょうか。難く考えずに、興味があることにふらっと取り掛かれる柔らかさを持ち続けたいものです。

リカレント教育

大学院進学というリカレント教育に移行する際に、マジで色々と考えました。『転職を前提とした学生回帰なので、後戻りはできないんだぞ。失敗とかやっぱ辞めたは、家族を路頭に迷わせることになるんだぞ。それでもやるのか?俺よ』、と。

何度、自問したことでしょう。それでも『やる』と腹を据えた後でも、じゃあどのターゲット層への臨床を志すのか、どんな価値を提供するのか、それをやる意味は自分/社会軸それぞれ何なのか、どのように成立させるのか、本当に成り立つのか…再び色々と考えました。文献を読んだり、人に聞いたり、現場訪問させてもらったり。ツテなんかないので、片っ端から自分で動きました。

散々考えて動いてみた結果、心理学×シニア市場は世の中ニーズと将来性が見込めたし、そこに脱サラ心理士としての自分の個性を掛け合わせれば、なんか面白いことができる設計図は描けました。確証はないので、不安は不安でしたが。

臨床心理士資格およびそれを取るための学びは、仕事へ繋げる手段でした。学びそれ自体が目的なのは生涯学習、学びが手段なのはリカレント教育という実感があります。リカレント教育には重みがあるので、ストレスや不安がつきまといます。それを内包するには、真剣に悩むという事前準備が重要だろうと思います。

※ ※ ※ ※

新しいことを取込み続けるという意味では、趣味活動の幅を広げることも有効だと思います。私でいえばサッカーばかりやってきたけど、運動ではロードバイクやゴルフ、将棋や緑茶、英会話にも興味関心が向き始めました。すべて同時に手をつけると飽和しそうなので、タイミングを見計いながら、楽しんでいきます。

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