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2024年創作大賞 感想集

こんばんは!ねむるこです。
何作か創作大賞に応募されている作品を読んだので感想をまとめてみました。

①『花畑お悩み相談所』 穂音さん

文芸寄りのミステリー小説部門参加作品。
読み終わった後、ふわふわとした不思議な夢見心地な気分になる作品。
心がじんわりとくる新感覚の優しいミステリー。

物語は律子の孫、意識不明の状態にある悠人からメールが送られてくるところから始まります。そのメールは有名な童話を元にした架空の物語のように見えましたが……律子は悠人が何か伝えようとしているのではと考えます。
そんなところに「花畑お悩み相談所」と名乗る不思議なセールスマンがやってきます。
童話のようなメールの意味とは?家族たちが隠していたことは?そして悠人が意識不明になってしまった理由とは……?
『お悩みは小さく、分割で』
全てのお悩みが解決した時、温かな感動が読者の心を包み込むでしょう。

なんといっても見どころは『不思議なセールスマン』でしょう!
あまりにも自然に登場して物語に馴染んでいるので初めて読まれる方は驚くと思います。でも自然と受け入れられてしまうのがこの物語のすごいところ。
是非あなたも『不思議なセールスマン』と物語の中で出会ってみてください。

②『オツトメしましょ!』 八神夜宵さん

ライトノベル調のミステリー部門参加作品。
博物館や大学に眠る、展示も研究もされず放置された考古物。それらの考古物を歴史を愛するふたりの女子大生が華麗に「救出」する物語。
相手を出し抜き狙った獲物を盗み出すことができるのか?

怪盗や泥棒の物語ってハラハラドキドキしますよね。警察や宝を所持する人との駆け引き、泥棒どうしの争いなどなど……。
泥棒稼業のキャラクターってなぜこんなにもカッコいいのでしょうか。それはきっと何らかの信念をもって「盗み」を行うからでしょう。
「悪い行い」の中に「正義」があるというそのジレンマがいつどの時代の人々の心にも響くのではないかと私は考えています。
彼女達の信念とは?そんなところにも注目しながら読むと楽しいかもしれません。

私が面白いと感じたのは歴史と現代を掛け合わせたような世界観です。
江戸時代から泥棒稼業を行っていた一族の由乃ゆのとハッキングなど現代技術を生かした情報収集を行う千英ちえと組むのが面白いと思いました。
泥棒の組合や組織の構造が詳細に描くことで、読者はより一層物語の世界に浸ることができます。

由乃の分かりやすい好きアピールに鈍い千英。ふたりの関係や内面がどんな風に変わっていくのかも見どころの作品となっています!

③『平凡な少女のありふれた死に方』 紙野七さん

文芸寄りのミステリー小説部門参加作品。

読んでいくうちにこれはシナリオなのか、それとも登場人物の意思なのか分からなくなってくる。物語の世界に迷い込んでしまうような不思議な作品でした。一度読み出すと止まらないと思います!

物語は『文演部』で起こった女子高生の自殺から始まります。

『文演部』とは文芸部と演劇部を混ぜたような部活のこと。ただ演じるにあたってシナリオはありません。
決められた物語の世界観とキャラクター設定を元に、演者が演じることで初めて物語が生まれます。即興劇のようなものです。そうして生まれた物語を小説作品として書き下ろすまでが文演部の活動になります。

そんな文演部で白坂奈衣という女子高生の自殺という痛ましい事件が起きます。彼女は文演部で自分が死ぬシナリオを生み出してきました。
これは彼女が書いたシナリオなのか?それとも誰かが彼女を殺したのか?

主人公西村景の視点で女子高生の自殺の謎に挑みます。

この作品のすごいところは女子高生の自殺の謎を解明するというストーリー展開だけではなく、「創作」や「己の心と向き合う」人の苦悩を描いているところだと思います。それらのテーマがミステリーと綺麗に混ざり合っていることに感動しました。
作品と向き合うことは自分の心と向き合うこと。
あの苦しくてもどかしい感覚が見事に表現されているように思えました。

作品を読み進めていくとタイトルの『平凡な少女のありふれた死に方』にも何か引っかかります……。
秀逸なミステリーを是非楽しんでみてください。

④『堕ちた男』 鮎村咲希さん

文芸寄りのミステリー小説部門参加作品。

物語は刑事の春名はるなと友人の藍沢あいざわが食事しているところから始まります。
穏やかな雰囲気の中、春名の口から語られるある事件。周囲に高い建物のない場所で男性が墜落死したというものでした。

冒頭部分を読んだだけで「なにその事件?」とワクワクしました。
登場人物と一緒に食卓に座って謎を聞いているような気分になるのがこの作品の面白いところです。
食事中のまどろんだ雰囲気が見事に表現されています。そんな雰囲気と対照的に謎は本格的。
真相も論理的で読者を納得させるものなっていると思います。
情報の開示が上手く、読者も一緒に謎解きに参加することができます!私自身も考えながら読むのが楽しかったです。
ミステリ専門の翻訳家である藍沢の「春名のことなら何でもお見通し!」という雰囲気が好きです。

ふたりが色んな事件を解決していくのをもっと見てみたい!と思いました。

⑤『30までに結婚しなきゃ症候群』 しずくさん

エッセイ部門参加作品。

こちらの作品、創作大賞よりも前に見つけて「スキ」していました。
何度も読み返すほど好きな文章です。
タイトルの通り、私が「30までに結婚しなきゃ症候群」にかかっていたからです!(笑)
同じ年代におられる方はかなり心に響くのではないかと思います。

特に会うたびに「結婚したいのにできない」と言う友人の話題には大きく頷きました。私にも同じような状況の友人がいたからです。

さすがに会うたびにその話題になるのは辛いものがあります。もっと色んな話がしたいのに。
あなたは不満ばかり言う「つまらない人」じゃなかったよね?昔は「人を楽しませる人」だったよね?

「結婚」という話題は学生の頃から仲の良かった友人の人間性を変えてしまうのです。それが悲しくて寂しい……。
そういった経験をしたのは私だけではなかったんだな……と安心すると同時にモヤモヤの原因が明確に言語化されていおり、自分の感情を整理することができました。
しずくさんの飾らない、けれども誰も傷つけない優しい言葉たちが胸に響きます。
自分の本心をこんなに上手く描きだせるなんてすごいと思いました。決して良い感情ではなかったはずなのに文章から憂鬱さを感じさせません。だからデリケートな問題でも苦しむことなく読み進めることができました。

「30までに結婚しなきゃ症候群」に対してしずくさんが出した結論にはとても勇気づけられました。
この世界のどこかで、結婚に対してこんな風に考えている人がいる……。
そのことを知っただけで私は今日も前を向いて歩いて行くことができます!

この作品以外にもしずくさんの記事には深く同意するものが多く、読んでいてとても楽しいです。

以上、創作大賞の感想でした!
たくさん作品があって読み切れていないし、作品を探せていない感がすごい(笑)

創作大賞の締め切りは7/23ですが、創作大賞の感想文は7/31までです。
時間の許す限りいろんな作品を読みたいと思います!

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

#創作大賞感想

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