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理解することを手放し、保留し、曖昧さに留まり、葛藤し続けることで、何が得られるのか? 蔡國強の個展を体験して、アートリトリートを薦めたくなったこと。

今日は国立新美術館で開催されている、蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう)さんの個展に行ってきました。

中国出身の国際的な現代美術家の方です。主に火薬を爆発させるという手法で、絵画などの作品を生み出します。私は今回の個展の開催で、初めて蔡さんの作品を知りましたが、作品そのものから感じるパワーや、蔡さんが残した言葉、関わってきた活動にとても感銘を受けました。

 


現代美術の多くがそうであるように、作品そのものから作者である蔡さんの意図を直接汲み取るのは難しいです。作品が放つ何かしらのパワーを感じ取って、凄いなとか、圧倒されるなとか、面白いなとか、よく分からないなとか、そんな曖昧な感想を持つだけで、まずは精一杯です。

作品を目の前に、私は正しく理解しているのだろうか、ちゃんと堪能しているのだろうか、十分に対峙しただろうか、など、疑問に似た不安がよぎることもあります。そんな風に思わなくてもいいと頭では分かっていつつも。



作品がある空間にはもちろん私以外の鑑賞者もいるわけで、あの人は果たしてこの作品をどう捉えたのだろう、などと、好奇心のような、お節介のような感情が湧き上がったりすることもあります。

また、これは現代美術の鑑賞に限らず、どんなアートの鑑賞中でも、映画や音楽や演劇の鑑賞中でも起こることですが、何か仕事のこと、生活のこと、次の予定のこと、など、その場に全く関係ない事柄が、ふと頭や心の中に浮かんで離れなくなることもあります。

こうして振り返ると、アートの鑑賞中は自分の中で色々なことが起きているのが分かります。

 


私は一番初めに投稿したnoteにあるように、THE COACH Academyにてコーチングを学んでいます。コーチングの学びを始めたことで出会った概念が、理解することを手放す、とか、曖昧さに留まるといったことの大切さでした。 


ネガティブ・ケイパビリティとか、中庸とか、U理論といったような、概念や理論もよく耳に入ってくるようになりました。人や組織の成長や発達には、保留や曖昧さや葛藤に留まることが、必要な行程であるという考え方があることを知りました。

理解することを手放し、保留し、曖昧さに留まり、葛藤し続けることで、何が得られるのか? 私にはまだはっきりと分かりません。ただ、その先において、変容が成し遂げられるのだということが、ぼんやり見えてきた感じがします。

 


今回の蔡國強さんの作品展示において目を引いたのは、ご本人のコメントが添えられていることでした。作品の説明のみならず、その作品を生み出した当時のご本人の日記から抜粋した言葉が添えられていました。 

それらの言葉から伝わってきたのは、蔡さんの不安定な感情でした。これから展示を見に行く方のために詳しくは控えますが、でもこれらの作品は、蔡さんのあらゆる葛藤を超えて生み出されたのだと強く感じました。

作品ひとつひとつには、一目見て圧倒されるパワーが備わっています。さらにそこに添えられた蔡さんの言葉から、その作品制作の背景を想像することで、私の中に湧き上がる何かがありました。

作品の中の言葉も印象的

 
そして、蔡さんの作品と対峙しながら、私が思い浮かべずにいられなかったことは、アートリトリートでした。

アートリトリートって?という方に、アートリトリートを私なりに簡単に説明すると、よくある「自然のなかで」行うリトリートではなく、「アート鑑賞を通して自分と向き合う」というリトリートです。

もう少し詳しい話は、以前投稿したこちらのnoteを読んでいただけると嬉しいです。


蔡さんの作品と対峙して湧き上がったことを、誰かと対話することができたら、また私の中に何か新しいものが生まれるかもしれない、また私の中で思いもよらない変容が起きるかもしれないな、と感じました。

 

 
蔡國強さんの今回の個展は、国立新美術館で8月21日(月)まで開催されています。

作品は大きな広い空間に一堂に会しており、空間そのものからも受け取る何かがあります。写真撮影も楽しむことができます。



個人的には今回はおまけのように設けられていた、福島県いわき市での蔡さんの活動記録にも感動しました。いわゆる日本の「花火」とは違った迫力を持つ「屋外爆発イベント」の様子など、小さなモニター越しでも、大きな感動がありました。

今日の国立新美術館の周辺は蝉時雨が凄く、眩しい青空と肌に感じる暑さも相まって強烈に夏を感じました。美術館内、特に蔡さんの展示エリアはとっても涼しく、気持ちよく作品と対峙することができました。酷暑の中のお出かけ先としてお薦めです。


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今回の冒頭の写真もカナダ プリンスエドワード島からです。とある日の夕焼けです。この日の夕焼けは、驚くほど強烈な色を放っていました。夕焼けは穏やかなものばかりではないと分かる景色でした。

ここまでお読みいただいたことに感謝です。毎回生みの苦しみを感じつつ投稿しています。サポートいただけたら嬉しいです!