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音楽を聴きにデンマークへ! 北欧伝統音楽祭 Folkets Festival に行ってみた話

 「音楽の話」をします。私の好きな音楽の話です。

ケルト音楽が好きです。もうかれこれ30年以上に及ぶファンです。エンヤがきっかけでした。カナダに住んでいたことも影響していると思います。

ケルト音楽の定義は様々ですが、私の好きな音楽は、主にブリテン諸島(アイルランド、スコットランド、イングランド等)、カナダ(ケープブレトン島、プリンスエドワード島)、北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド等)の伝統音楽です。

同じ音楽が好きな知り合いはごく僅かで、それに不満は無く、普段はひっそりひとりで楽しんでいます。でも時々、誰かに大きな声で「この音楽が凄くいいの」と伝えたくなるものです。

そんな私の好きな音楽の話をします。





はじめに


この note は5月の初めに「音楽を聴きにデンマークを訪れた」私の思いを記録するために書きました。なぜわざわざ「音楽を聴きにデンマークを訪れた」と言うのかというと、Folkets Festival という音楽フェスを見るためにデンマークへ向かったからです。

もう長いことケルト音楽が好きなのですが、その繋がりで、北欧の伝統音楽または民族音楽も聞くようになりました。普段は CD や youtube で楽しんでいますが、たまに好きなバンドが来日すると、それこそ万難排してライブに駆けつけます。

日本で臨むライブもいいものですが、いつか彼らの本拠地で開催されるライブに行ってみたいものだと、もうずい分長いこと思っていました。単独ライブや音楽フェスの情報をネットで追っては、なんとなく行くに踏み切れずにいました。

それが、Folkets Festival の情報を見て、これは私にも行けるかもしれない、行くしかない!と思いました。Folkets Festival はデンマークのバンドである Dreamer's Circus が主催した音楽フェスです。私は日本語で「北欧伝統音楽祭」と訳しましたが、彼の HP には「a celebration of Nordic folk music」と記載があります。

なぜ、「私にも行けるかもしれない」と思ったかというと、それは開催地がデンマークの首都であるコペンハーゲンだったからです。コペンハーゲンの中心地にあるコペンハーゲン中央駅から徒歩圏内にある VEGA というコンサートホールが会場でした。海外の音楽フェスの開催地にありがちな郊外の地ではなく、首都のしかも中心地における開催と分かって、音楽フェスに向かうハードルが低くなりました。



そして Folkets Festival に「行くしかない!」と思ったのは、私が好きなバンドが3つも集まっているからでした。主催の Dreamer’s Circus と、同じくデンマークの Danish String Quartet と、フィンランドの Frigg というバンドです。いずれも来日歴があります。好きなバンドが同じ音楽フェスに3つも集まっているのって、珍しいことです。このチャンスは逃してはならないと思いました。

音楽フェスというと、もしかしたら多くの方は「Rock Music Festival」を思い浮かべるかもしれません。最近の話題に倣って挙げてみると、アメリカで開催される「Coachella(コーチェラ)」などですね。でも「Folk Festival」と銘打つ音楽フェスも、海外のいたる所で開催されています。私が好きなカナダでも毎年のように各所であります。日本で「フォーク音楽」というと、なぜか昭和フォークソングが思い浮かびがち(私だけ?)ですが、世界各地の「Folk Music」は、伝統的な民謡や民俗音楽をベースにした現代音楽であることが多いと思います。「Nordic Folk Music」も然りですが、教育や技術や社会制度において進んでいる北欧諸国らしく、伝統的な音楽を現代のみならず未来へと引き継ぐべく進化させているように思えました。



Folkets Festival の HP にあるこの言葉が印象的でした。

Folkets Festival facilitates cultural exchange and networking both across the Nordic countries, but also between established bands and the younger generation.

As a venue, VEGA has mainly been associated with popular music. As a partner in the Folkets Festival, folk music is promoted and welcomed on the floors of the capital on an equal footing with popular music. The hope is to dismantle the prejudice that folk music equals old men in clogs, but rather an environment that is very much alive, relevant and still evolving.

https://www.folketsfestival.com/about

全て訳すと私の日本語では重たく野暮ったくなってしまうので、省略させてください。でも、私に伝わってきたことを表現してみると・・・、彼らは Folk Music を決して古いものではなく、今もって生き生きと進化し続ける文化として若い世代に伝えていこうという意志を持って Folkets Festival を開催したんだと強く感じました。VEGA はこれまで主にポピュラー音楽と共に歩んできたイベント会場です。そこで Folkets Festival を開催することは、彼らにとって大きな意義のあることだったと分かります。



あああ、またしても前置きが長くなってしまいました。とにもかくにも、デンマークの Folkets Festival という音楽フェスに行ってみたんです。

プログラム構成を見ると、13時にスタートして翌3時まで、12のバンドが参加していたのが分かります。 VEGA には大小複数の会場があり、時間とバンドによって、ライブ開催会場が異なります。観客である私たちはプログラムを見て、VEGA の中をあちこち移動します。

開演前の様子 なんかアットホームな雰囲気


それこそ折角デンマークまで行ったのですから、始めから終わりまで楽しみたい気持ちはありましたが、自分の体力と相談して、好きなバンドと気になるバンドの合わせて5つのライブを鑑賞しました。それでも、15時過ぎに会場に入り、満足して会場を出たのは夜中の0時を過ぎていました。

今回の Folkets Festival で、私が鑑賞した順に5つのバンドの概要とライブの感想を紹介していきます。




Danish String Quartet


VEGA におけるメインステージにあたる Store Vega で、Folkets Festival 最初のパフォーマンスをしたのは、Danish String Quartet でした。

ああ! もう最初の一曲目で、ここまで来てよかったと思いました。Danish String Quartet は 2018年に来日しており、神奈川・東京・名古屋で公演を行いました。私にとってはその時以来のライブです。まだ CD や youtube でリリースされていないと思われる、私にとって新しい演奏を聞くことができました。

Store Vega 1階はスタンディング 2階はシート席
私は2階のシート席の真ん中あたりを確保しました


Quartet というと「フォーク音楽」ではなく「クラッシック音楽」を思い浮かべますよね。彼らはクラッシック音楽の音楽家としても活躍していますが、同時にデンマークをはじめとする北欧の伝統音楽をアレンジして演奏することにとても力を入れています。今回のラインナップもそうでした。

残念ながら MC がデンマーク語だったため、曲目紹介もしたのかどうかさっぱり分からず、たとえ曲目紹介していたとしても聞き取れなかったので、ここで具体的な曲名を挙げることができないのが残念。

でも、この「Shine You No More」という彼らのオリジナル曲を彷彿とさせる曲(アレンジしたのかも)を聞くことができました。1st バイオリンのルネさん(Rune Tonsgaard Sørensen)作曲の作品で、中盤から2nd バイオリンのフレドリクさん(Frederik Øland)が物凄く細かいタッチでリズムを刻んでいくのが印象的な曲です。二人とも超絶かっこいい!


バイオリンの二人は二人とも Copenhagen Phil のコンサートマスターであったという経歴の持ち主です。一流のクラッシック音楽の経歴があるのが納得の演奏ですよね。

このメンバーにはとても長い歴史があって、彼らの HP や youtube に上がっているインタビューで自分たちのことを控えめに、でも誇らしげに紹介しているのが素敵なんです。

バイオリンの二人とビオラのアスビョルンさん(Asbjørn Nørgaard、凄いハンサム)の出会いは、少年の頃に遡るとのこと。音楽のサマーキャンプに最少年メンバーとして参加した彼らは、一緒に音楽を勉強するだけでなく、サッカーやゲームもする友達になり、そして長い時が経った今も依然としてその関係性が続いている訳です。残るチェリストのフレドリクさん(Fredrik Schøyen Sjölin)はノルウェー出身の方で2008年に加わっています。Danish String Quartet だけど、デンマークとノルウェーの混合メンバーなんですね。

メンバー間の絆は、ステージを見ていてもよく分かります。今回のライブでは、珍しいアクシデントがありました。ルネさんがソロパートに入るときにフィドルを構える勢いが良すぎたのか、マイクがどこかにゴンっと当たり、それでもガンガン演奏を続けるなか、2nd のフレドリクさんがフォローに動き、演奏中のルネさんのフィドルにマイクを付け直してあげるという珍事を目撃しました。それがまた割と長いこと手こずっていて、傍から見てドキドキしました。客席からは途中で拍手が起こったりしていて面白かったです。

10年以上前のものですが、彼らのインタビュー動画を置いておきます。英語で話していますので、良かったらどうぞ。


彼らがリリースした CD には、デンマークの作曲家であるカール・ニールセンを始め、誰もが知るハイドン、ブラームス、ベートーベン、バッハなどの作品集がありますが、何といっても北欧伝統音楽を扱った CD がお薦めです。

2014年にリリースされた「Wood Works」という CD の中での私のお気に入りを紹介させてください。「Sønderho bridal trilogy」の PartⅠと PartⅡです。フェロー諸島にある Sønderho という村に伝わるウェディング曲だそうです。PartⅠは厳かな気分になり、PartⅡは楽しい気分になります。



インタビュー動画の方で演奏しているクラッシックの曲と、また違う雰囲気です。フェロー諸島の位置(スコットランドとアイスランドとノルウェーに囲まれた海に浮かぶ)を考えると、いかにも伝統音楽が残っていそうな地域ですよね。そこからこんな美しい音楽を発掘し、このように鮮やかに蘇らせるなんて、彼らの音楽活動を心から応援したくなります。

彼らの活動の要となっているのは、なんといっても 1st バイオリンのルネさんの存在です。彼は Folkets Festival を主催する Dreamer’s Circus のメンバーでもあります。2つのバンドのどちらを見ても、彼の存在がとても重要なことが分かります。クラッシック音楽がベースの Danish String Quartet に伝統音楽を持ち込み、Dreamer’s Circus が創り出す現代音楽の世界を、超絶素晴らしいバイオリンの音色で完成させているんです。

さてさて、そろそろ次に進みます。でも、私はこの日、例えば Danish String Quartet の演奏しか聞くことができなかったとしても、大満足で帰国したと思います。正味一時間と少しの時間でしたが、素晴らしかったです。




ÆVESTADEN


今もってなんと発音するのか分からないのですが、次に見たのは ÆVESTADEN というバンドでした。ノルウェーとスウェーデンの混合メンバーです。

どんな音楽であるかは言葉では表現し辛いので、どうぞ動画を見てください。ライブで演奏してくれた曲が youtube にもありました。


心地良い音楽だと思います。不思議な空気感ですよね。どうしたらこんな音楽が生まれるのだろうと考えると、ノルウェーとスウェーデンだからこそ、という気がしました。日本では生まれない音楽であると感じました。自然環境の違いかな。

彼らの MC も、スウェーデン語かノルウェー語だったため、私にはさっぱり分かりませんでした。会場にいたデンマーク人には理解できたのでしょうか。みんな困った様子は無かったけれど。

ライブの演奏している様子は、こちらの動画の方を参考までに置いておきます。謎の楽器と機械がいっぱいあったのと、何より彼らのファッションが独特だったのが印象に残っています。別の時代からやってきた感じ。


彼らのライブは、Lille Vega という VEGA の中にある小さなステージでありました。観客もみんなスタンディングでした。というか、前の方はみんな床に座り込んでいました。あ、写真を見返してみると、寝っ転がっている人もいますね。

思い思いのスタイルでライブを楽しむ


観客は熱狂的に盛り上がるというより、みんなして不思議な音楽を浴びるというようなライブでした。Folkets Festival の中で一番「新しく進化した」音楽を持ち込んだのではないかと感じました。




Katarina Barruk


次はまた強烈なパフォーマンスを見てしまいました。スウェーデンの Katarina Barruk さんはサーミ語の歌手です。

あの日のライブで歌っていたのが果たしてサーミ語だったのか、実はスウェーデン語だったのか、はたまた別の北欧の言語だったのか、私には判別できませんでしたが、ライブの間ずっと、歌というか「祈り」を聞いているような気分でした。


Katarina さんのステージは Store Vega でした。私は最初2階席に上がってみたのですが、1階のスタンディングのエリアが割と空いている感じがしたので、途中で降りてみました。

こうしてみるとロックコンサートみたい


このライブの間で面白かったのは、スタンディングのエリアの後ろの方で、時々背伸びしながら観戦している私を見て、周りの方がそっと「こっち空いているよ」とか「私の前にどうぞ」とか声を掛けてくれたことです。

一番後ろに立っていたはずなのに、気づけばだいぶ前の方まで移動していました。周りの方が親切で気持ちがほぐれました。

パワフルなパフォーマンスで大盛り上がり
アンコールはアカペラで素敵だった





Frigg



私の本命は最後に紹介する Dreamer's Circus なのですが、今回の Folkets Festival で個人的に一番感動したのは、フィンランドの Frigg(フリッグ)でした。圧巻のライブパフォーマンスでした。

彼らの MC によれば、バンド結成から優に25年経つとのこと。もともとメンバーの一部がフィンランドの由緒ある伝統音楽一家の出身だったりして、物凄い底力があるんです。自分たちで「僕らは若く見えるかもしれないけど・・・」とジョークを交えつつ、経験豊富であることをアピールしていました。

フィンランドには、カウスティネンというフィドルの伝統的な演奏方法で有名な村があります。また、ペリマンニ(農村楽師と訳される)と呼ばれる、主に結婚式のときのダンスシーンで演奏を担うことを家業としている家系があります。その家系の出身者がこの Frigg のメンバーにいるんですね。彼らの音楽は、バンド結成時に遡るのではなく、もっともっと長い歴史を持っている訳です。ここまで書くと、もっと彼らのことについて話したいけど、話が逸れていくので断念します。

ステージ近くで観戦しました


今回の Folkets Festival で唯一、彼らだけが MC を英語でしてくれました。他のバンドは Dreamer's Circus も含めみんな、デンマーク語かまたは彼らの母国語(ノルウェーかスウェーデンか、とにかく私が分からない言語)で話しており、私はちょっと疎外感を感じていたので、Frigg のエスコ(Esko、スキンヘッドの人)と、ペトリさん(Petri、シターンの人)が英語で話し出したときは物凄く嬉しかった。

今回はやらなかったけれど、私はこちらの曲が好きです。Frigg の曲は基本的に賑やかなのが特徴です。4本のフィドルが同じメロディを流れるように追うので、音楽に勢いと迫力があります。 


Frigg は2012年に来日しており、私は青山で彼らのライブを見ました。物凄く楽しかった。CDを買って彼らにサインをもらった際、エスコの「ありがとう」という日本語が完璧な発音だったこと、アリーナ(Alina、エスコのお姉さん)が眉ピアスをしていてかっこよかったことを覚えています。

ちょっとまたまた話は飛びますが、このアリーナとエスコという姉弟のお父さんが マウノ・ヤルヴェラ(Mauno Jarvela)という偉大なフィドラーでして、たった一度だけ何かの曲の短いソロパートを弾くのを聞いたことがあるのですが、鳥肌が立つほど美しかったのを覚えています。

話を Frigg に戻します。彼らの定番というか伝説的な曲で、今回もきっとやってくれるだろうと思っていたけど、やらなかったらどうしよう、私はこれを聞きにデンマークまで来たのに、とまで期待していたのが「Keidas(Oasis)」という作品です。Frigg の作品の中では少々異端で、スローペースな曲です。メロディーラインが美しく感動的で、後半には少し驚く展開があります。


もちろん今回もちゃんとやってくれました。デンマークまで来た甲斐がありました。これがまた大盛り上がりでした。後半にコーラス部分があるのですが、それを待たずに観客が歌い出して会場とステージが一体化し、みんなして音楽を作り上げているようでした。ペトリさんが「歌ってくれて嬉しかった」と言うほどでした。会場のみんなが嬉しそうでした。本当に、デンマークまで来た甲斐がありました。

繰り返しになりますが、私の本命は Dreamer’s Circus ではあるのですが、ライブの満足度では Frigg の圧勝でした。彼らのステージを見ているときに、思い切って Folkets Festival に来てよかったと、心底思いました。

アンコール演奏後の挨拶
名残惜しかったけど挨拶の途中で抜けて、次のDreamer’s Circusの会場へ向かいました




Dreamer's Circus


Frigg のライブを再び見ることができたのは、Dreamer's Circus のおかげでした。彼らがコペンハーゲンで Folkets Festival を開催してくれたからこそ。というわけで、本命の Dreamer’s Circus の話をします。

Danish String Quartet と同じく Store Vega が彼らの会場でした。私は2階のシート席の一番前列を狙って早めに移動しました。まだ Dreamer’s Circus がリハーサルをやっている最中に会場に駆け込むと、2階席は既に結構埋まっていました。それでも、ラッキーにも一番前列に1席だけ空きがあったのです。「Excuse me」を連発しながら人を搔き分け、その1席を確保しました。座ってみるとステージのほぼ真正面でした。ラッキーでした!

この光景を直接見ることができただけで感無量


Dreamer’s Circus は、基本楽器がフィドル・アコーディオン・シターンという組み合わせのバンドです。こういう組み合わせはケルト音楽や北欧音楽ならでは。日本人が思い浮かべるバンドの楽器構成にはあまりないですよね。

フィドルは、 Danish String Quartet でも紹介したルネさんです。こちらではギターやピアノや謎の楽器も弾きこなします。アコーディオンは、ニコライさん(NikolajBusk)で、彼はピアニストでもあります。そしてシターンは、アレさん(Ale Carr)で、彼はギターもフィドルもカンテレも謎の楽器も何もかも弾きこなします。アレさんがスウェーデン出身なので、Dreamer’s Circus もデンマークとスウェーデンの混合メンバーです。

Dreamer’s Circus の凄いところは、3人のメンバーが持つ強みの多様性だと思います。ルネさんは言わずもがな、一流のクラッシック音楽のバイオリニストであり、北欧の伝統音楽の造詣が深い。ニコライさんは、3人の中で一番現代的な感覚の持ち主で(初来日時は鼻ピアスして、穴の開いた黒い革パン履いて、香水のいい香りがするお兄さんでした)、ジャズ・ピアニストでもあり、物凄く繊細な曲を作ります。アレさんは、スウェーデンの家族でも伝統音楽を演奏していた実績があり、ありとあらゆる楽器を弾きこなし(恐らく)、スケールが大きく情感豊かな曲を作ります。

彼ら3人の強みがはっきり分かるのが「Prelude to the Sun」という作品です。誰もが一度は耳にしたことのあるバッハの曲を、彼らがアレンジした作品です。最近はもうライブで演奏することは無くなってしまったけど、またいつかライブで聞いてみたいものです。



Danish String Quartet はクラッシック曲と伝統音楽のアレンジを演奏しますが、Dreamer’s Circus はクラッシック音楽や伝統音楽などをベースに彼ら自身が創り出した音楽を演奏します。主に作曲を担うニコライさんとアレさんのセンスが素晴らしい。そして何と言っても、ルネさんのフィドルの音色が美しく、彼らが創った音楽を昇華させるんですね。


彼らの代表曲は、間違いなくこちらの「A Room in Paris」です。今回の Folkets Festival でもラストの方で登場しました。観客はもう大喜びでした。これはニコライさんの曲です。アコーディオンとフィドルがところどころメインメロディを取り合いますが、最後はフィドルの見せ場で締めくくっていて、そこがまた痺れるほどかっこいいのです。ルネさんのために書かれたのだなと感じるほどです。


2015年に彼らの来日情報が入ってきた際に youtube でこの曲を聞いて、あまりの良さにびっくりし、すっかり感激し、翌年の来日まで何度も繰り返し聞いていたのを覚えています。

「A Room in Paris」のライブバージョンも紹介しておきます。彼らの凄いところは、オフィシャル音源とライブの演奏が殆ど変わらないことです。ライブの完成度が恐ろしく高い。


はあ、凄いですよね。こういうライブに行ってみたかったのです。このライブをした場所で今回の Folkets Festival が開催されました。彼らの念願だったようですが、私も夢が叶いました。感無量です。

ちなみに年月の関係性も振り返ってみると、上のライブの動画は2016年5月のもので、この年の12月に彼らは初来日を果たしています。続く2017年、2019年、2022年と、過去に4回も来日しており、今年2024年10月にも来日を予定しています。日本には私以外にもちゃんと北欧伝統音楽のファンがたくさんいるのです。

色んな意味で日本を代表する Dreamer’s Circus のファンのひとりが、かの宮崎駿監督です。2016年の初来日時に所沢市のホールで単独公演をした際に、観客のひとりとして宮崎駿さんがおられました。私も東京から駆けつけた公演で、今でも強く印象に残っているのですが、アコースティックライブで本当に素晴らしかったんです。言葉では言い表せないくらい、心揺さぶられる体験でした。宮崎駿さんも間違いなく私の思いに近しい思いを持たれたはずです。なぜなら、翌年以降の彼らの来日では必ずスタジオジブリからのお花が会場に置かれ、更に彼らはスタジオジブリに呼ばれてプライベートライブをすることもあったからです。宮崎駿さんのために作られた「Waltz for Miyazaki」という曲まであります。

なんだかどんどん話が逸れてきてしまいましたが、Dreamer's Circus には、日本にもたくさんのファンが、強力なファンがいるんだということをお伝えしたかったのです。

さて、彼らのライブに話を戻します。今回の Folkets Festival で演奏した曲は、多くが昨年の Shrewsbury Folk Festival (イギリスの音楽フェス)での曲目と同じだったと思います。参考までに動画を紹介します。雰囲気だけでもどうぞ。


あと、久しぶりにライブで聞くことができて嬉しかったのが、「Clog-Fiddle & Polska」という曲です。これはアレさんがバイオリンの原型みたいなクロッグ型(シューズ型)の楽器を操る曲です。何とも言えない音ですが、しっかりとメロディを奏でるのを聞くことができます。追ってメインメロディをルネさんがフィドルで演奏するのですが、それがまた美しくて(クロッグフィドルとの対比せいかな)感動します。

私がずっと行きたいと思っていた Tønder Festival というデンマークの音楽フェスでの動画を紹介します。面白いので冒頭だけでもどうぞ。


Tønder Festival はデンマークとドイツの国境付近の地で開催される音楽フェスで、いつか行ってみたいと長らく憧れていたのですが、交通手段や宿泊手段の確保が外国人の私にはハードルが高く、ずっと断念していたのでした。

ああ、こうして振り返ってみると、やはりコペンハーゲンでの Folkets Festival 開催に本当に感謝です。Dreamer’s Circus に大感謝です。

さてさて、ついでに Dreamer’s Circus の youtube チャンネルのリンクも貼っておきます。これまでリリースされた CD の曲を全て聞くことができるという太っ腹なサイトです。


初期の頃の作品は、ルネさんの Danish String Quartet が参加している曲も多いです。今回の Folkets Festival でも、Dreamer’s Circus とDanish String Quartet との共演を密かに、いや、大いに期待していたのですが、残念ですが実現ならずでした。

Dreamer's Circus のステージの後半は、Danish String Quartet の登場は無かったものの、他の複数のアーティストとの共演がいくつかありました。これがまた盛り上がっていました。1階のスタンディングの観客は大勢で手を繋いで踊ったり(まさにフォークダンスのように)していて物凄く楽しそうでした。そんな光景を見ただけでも、デンマークまで来た甲斐があったと思いました。

もう最後は、お腹いっぱいというか、感受性がいっぱいいっぱいでした。

最後は Frigg のエスコも登場


Dreamer’s Circus の終演後、少し驚いたのが、観客がみんなして席をささっと立って一気に出口に向かったことです。もう既に深夜0時を回っていたからでしょうか。確かに私も眠気を感じ、かなりくたびれていました。プログラム上では、その後深夜3時までダンスやらセッションやらが企画されていましたので、それが気にはなりつつも、みんなの流れに逆らわず、そのまま帰途につきました。




おわりに


Folkets Festival に来場していた観客はほとんどが地元デンマークか、または北欧のいずれかの国の方ばかりのようでした。私のようなアジア系の方を見かけることはありませんでした。日本ではまず味わうことのない「アウェイ感」または「エイリアン感」のような感覚を味わったものです。これも貴重な経験でした。

一方で、年齢層は様々でした。まだティーンネイジャーと思われる年代の子たちもいましたが、多くは恐らく30代、40代、そして少なからず見かけたのは60代、70代だろうと思われる年配の方々でした。物凄く幅広かった。ただ、英語で言うと「mature」な、つまり成熟した大人たちが多かった気がします。

ここでふと、Folkets Festival の HP の言葉を思い出します。「the younger generation」に Folk Music を届けるべく、首都コペンハーゲンにある VEGA というポピュラー音楽を広めてきた拠点において Folkets Festival の開催を企画した、Dreamer’s Circus のまさに Dream(夢)を応援したいなと強く思いました。きっとまた、開催してくれるでしょう。

詳細は省きますが、Dreamer's Circus も Danish String Quartet も音楽活動の範囲はとても広く、こうした演奏活動だけでなく、学校で指導したり、また別のフェスを開催したり、子どもたちの音楽教育に協力したりしています。音楽というものに本当に真摯に向き合っているのだなと、強く尊敬の念を抱きます。




ここまで読み進めてくださる方がどれだけいらっしゃることか。うっかり12000字を超えてしまいました。途中飛ばさずにここに辿り着いた方に感謝です。ありがとうございます。

デンマーク旅行から帰国してちょうど2週間が経ちます。この note をここまで書き上げて、やっと旅行を終えたような気持ちになりました。Folkets Festival 以外の諸々も別途記録に残しておくつもりです。また読んでくださると嬉しいです。


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