あなたの全てを愛してもらえなくても、いいんです。
女性加害者のための自助グループCo3(シーオースリー)代表・さりたもです。noteでは、暴力に頼らないコミュニケーションを身につける方法や、DV加害者が日々を生きるヒントについて考えています。
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ドラマや漫画で、こんな言葉を目にしたことはありませんか。
「私の全てを受け止めてほしい」
「私の綺麗なところだけではなく、汚いところも愛してもらった」
世間にはこういった言葉が「ポジティブなメッセージ」として溢れかえっています。こういう言葉を聞くたびに、私はこんな疑問が頭をよぎるのです。
「全てを愛してもらっていないなら、それは"真実の愛"、"正しい愛"ではない、ということなのだろうか」
きょうはこの疑問について、考えてみたいと思います。
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正しく愛されてこなかったという思いがあるからこそ、「正しい愛され方」にこだわりをもつ私たち。
それゆえ私たちは、自分の「汚さ」を相手に理解させようと必死になります。パートナーが自分を理解し、慈しんでくれないのなら、それは相手の「愛が足りない」からだと思ってしまいませんか。
私たちが相手に見せたくなるのは、たとえばこんな「汚さ」かもしれません。
生理前後、PMSでイライラし、パートナーや子供に暴言をぶつけてしまう私
仕事でしんどい思いをしたとき、いつも通りの笑顔でいられない私
空腹、疲労、睡眠不足などの際、相手にイライラをぶつけてしまう私
たとえば、韓国ドラマのヒロインはしばしば泥酔し、恋人を罵倒し、全力で殴りますよね。恋人役の男はそれを優しく受け止め、抱きしめ、主人公を落ち着かせてくれます。君のことは全て分かっている、と。
「これこそ本当の愛!」
「それに比べてうちのパートナーは度量が足りない」
そう思ったことのある人、少なくないのではないでしょうか。
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でも、本当に、これらの「汚い」私ごと愛してもらうべきなのでしょうか。私は、違うと思います。
逆にして考えてみると、分かりやすいのではないでしょうか。以下のような夫や彼氏を、あなたは受け入れられますか。
元々の気質や育った環境から、怒りっぽく攻撃的で、DVやモラハラをする男
仕事のイライラを妻や彼女で発散させるため、殴ったり怒鳴ったりする男
お腹がすいた、疲れた、眠い、といった理由で不機嫌になり、育児や家事を担当せずにゲームばかりしている男
泥酔して前後不覚になり、周囲とトラブルを起こしたり、吐瀉物などの片付けを妻にさせたりする男
もしも周囲から、「あなたは、こういう男を受け入れ、我慢し続けることで一生を終えるべきだ」と言われたら、私は絶望します。耐えられません。自分は何のために生まれてきたのだろう、と思います。
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それから、もし私の友人で、こういった言動をする夫や彼氏をもっている人がいたらどうでしょうか。
私なら、口には出しませんが「そんな男とは別れるべきだ」と感じると思います。
というより、何がしたいんだろう、と思うかもしれません。
きっとその人は、パートナーのお世話にいっぱいいっぱいになってしまい、その人自身の人生を歩めるようなパワーが湧いてこないまま一生を終えることでしょう。
彼女のパートナーはきっと、大人になれないまま、体だけは大人になってしまった人間なのです。そういう人間を甘やかし、子供のままでい続けさせることに、自分の人生を投じる人。
その間、周囲の人や、何より自分の子供が犠牲になっても構わない、と思う人。
正直、そんなことに頑張るなんて、変な人だな、と思ってしまうのです。
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男→女でも、女→男でも(女→女でも)、本質は同じこと。
「汚い自分も愛してほしい」。そうあなたが思い、あなたの汚さを見せるとき、誰かが傷つき、誰かが犠牲になっているのです。
あなたはきっと、犠牲になることの辛さを、誰よりも知っているはずです。だからこそ、辛かった自分を誰かに認めてほしいのですよね。それが「汚い自分を愛してほしい」という気持ちの本当に意味するところだと思います。
でも、辛かった自分を認めてもらおうとするあまり、目の前にいるパートナーが自分を諦めてしまうとしたら、どんな気持ちになりますか。
「これでもう誰のことも失わなくて良くなった」「どうせ運命の相手じゃなかった」とせいせいしますか。
でもきっとそんなことを言いながら、あなたは性懲りも無くマッチングアプリをダウンロードしようとしたりしていませんか。
その苦しみを死ぬまで続けるとしたら、どんな気持ちになりますか。
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あなたの全てを愛してくれる人は、存在しません。もしも愛してもらえていたとしても、それは長続きさせてはいけません。
でも、これって残念なことなのかな、と思うのです。
というのも、イライラ、モヤモヤして、暴力や暴言が出てしまう自分のままでずっと一生を送るのって、それはそれで辛いものだから。
誰かへの呪詛をずっと吐き続けているおばあちゃんのことを考えてみてください。あれがあなたの「憧れ」ですか? 違うと思うのです。
パートナーのためというよりは、そもそも自分のために、イライラやモヤモヤにコントロールされる自分を脱する。そういう方向転換が、私たちには必要なのではないかと思うのです。
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そもそも、あなただってきっと、パートナーの全てを愛したいとは思っていませんよね。イライラすることも、腹が立つこともあるし、変えてほしいところもたくさんある。
「愛」って、そういうものなのだと思います。
「私には、汚いところもある。ときどきは、そんな私を見せてしまうことがあるかもしれない。
でもあなたには、私が好きな、私の部分をたくさん見せてあげたい。あなたにも、あなたが好きな、あなたの部分をたくさん私に見せてほしい」
そんなふうに思うことが、きっと「愛」なのではないかと、私は思っています。
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「じゃあ、私の悲しかった記憶は、どうすればいい?」
そう思われることと思います。
大丈夫。「汚い自分」は、誰かに許してもらわなくとも、自分で認めてあげられます。
私たちは幼い頃、誰からも「汚い」自分を肯定してもらえることはありませんでした。だからこそ、誰かに肯定してほしくて、もがいてしまう。
でも、私たちの「汚さ」は、これまでも肯定してもらえていなかったし、これからも肯定してもらえることはありません。もう「可愛い赤ちゃん」ではないのですから、仕方のないことです。
叫び出したくなるほどの寂しさ、理不尽さ、生まれてこなければよかったと思う気持ち、きっとありますよね。
だけど、そのままならなさを抱えたまま、それでも生き延びようと歯を食いしばる自分のことを、いつか誇りに思える日が必ずやってきます。
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パートナーから、思った通りに愛してもらえなくても、大丈夫。全てを許してもらえなくても、大丈夫。
でも、現時点では、分け合うことのできない寂しさや孤独が、きっと辛く、しんどいことでしょう。
だからこそ、自助グループでその傷は共有しあいましょう。「分かるよ」と言い合える仲間がいることで、あなたの心はもっと軽くなっていくはずです。
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