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【密着ドキュメンタリー】マーケターの1日・広告代理店1年目編

このnoteは、「マーケターに興味はあるけど、どんな仕事をするのか分からない」という就活生・転職希望者に向けた、「マーケターとして働く」連載記事の第2弾である。

第1弾は、こちらから。

昨日の夜、仕事から帰ってきて、夜ご飯を食べながら観る映画をネットフリックスで探していると面白そうなのを見つけた。

『Mondays/ このタイムリープ、上司に気づかせないと終わらない』

日常系のタイムリープってどうなの?
と思っていたが、想像の3倍良かった。

この作品、泣けるし、笑える。

とある小さな広告代理店で働く女性社員が、同じ1週間を繰り返しているということに気づく。部長にこのことを気づかせなければ、このタイムリープから抜け出すことはできないという物語だ。

主人公はキャリアについて考え、より大きな企業へ転職しようとしている。しかし、あまりにも将来のことや仕事のことに目が行き過ぎて、今一緒に働いている仲間や恋人のことをなおざりにしてしまう。

主人公はこの間違いに気づいて、今を生きるようになる。
そんな見えにくい人生のテーマが、この作品には描かれている。

今回のnoteでは、この主人公のように、広告代理店で働く女性が主役だ。

川崎(24歳女性・仮名)
東京都在住で、従業員数200-300人程度の中規模の広告代理店で働いている。

彼女の会社は、広告代理店の中でもコンテンツ制作に強みがある。
今回は、マーケターの中でも、Webサイトやカタログなど、コンテンツ制作におけるマーケティングを専門とするマーケターである。

このnoteでは、マーケターに”本当の”本音の話を聞き出したいとの想いから、マーケターの名前や顔、企業名を全て伏せさせてもらっている。


プロフィール紹介と就活時代


川崎は就活をしていたとき、
「何かを作る(制作系)の仕事」を探していた。

大学時代、川崎は広告研究会に所属しており、広告の映像制作を行っていた。趣味ではアニメの映像制作、ダンスにも熱中していた。

これからも、何か形に残るものを作りたい
そんな想いから、広告業界など、制作会社をみていた。

就職活動を進める中で、制作を始める前に「誰に、何を、どうやって届けるのか」、調査する大切さに気がついた。

そのうえ、マーケティングはどんな仕事でも必要なポータブルスキルだ。
マーケティングを学んでいたらキャリアの幅も増えるのではないかと思い、
「制作」と「マーケティング」の2軸で就活を進め、マーケティングに力を入れて制作を行う、今の広告代理店へと入社を決めた。

川崎の会社は大きく4つの部署に分かれており、彼女はそのうち大手メーカーの家電の商材を取り扱う部署に所属している。そこで、ディレクターとして、クライアント(顧客となる企業)とデザイナーとの間に立ち、プロジェクトを回している。

1日の流れ

川崎が勤務する広告代理店は、東京・渋谷にある。
自宅から渋谷駅まで電車、駅からは歩いて5分。

途中、コンビニで120円の淹れたてコーヒーと、240円のお気に入りのチョコを買ってオフィスへ向かう。

ビルに2つしかないエレベーター。
9時10分。いつもこの時間は行列ができている。

オフィスにつくと、自分のデスクへ一直線。
席が隣の陽気な先輩が、昨日見たMARVELの話を始める。。。
この先輩は話し始めると止まらない。適当に相槌を打って仕事に取り掛かる。

この日は1日中、あるプロジェクトを進めていた。
クライアント企業が販売している商品と、ある女性向け雑誌とのタイアップ記事の構成案(※)を考える。そして、パワーポイントでまとめる。

午後からは、以前したプロジェクトの振り返り会議
3か月かけて制作した、業務用カメラのブランディングを目的としたWEBサイトの振り返りだ。

業務の間を縫って、すでに出した記事の修正も行う。
やるべきことはたくさんある。

※ 広告のコピーやデザインの概要を示す案となる構成図。誌面のどこにどんな見出し・文章を入れるのか、どんな画像を入れるのかを示す。この構成案を元に、クライアントやデザイナーと検討を進める。今回、川崎はコピーライティングも業務で行っているため、下書きとなるコピーを中心に、タイアップ記事の誌面構成を作成していた。


色んな人と関われるのが楽しい

川崎は業務中、色んな人と連絡を取っていた。

クライアント
広告代理店で働く川崎の唯一のお客様(企業)だ。クライアント企業の依頼から、企画書やコンテンツの制作、すべてが始まる。

彼女の働く広告代理店のクライアントは大手メーカーがほとんど。そのうち、彼女は1社のクライアント企業を担当している。

しかし、クライアント1社といっても、大手企業ゆえに関わる人の数が多い。PR課の人、宣伝課の人、開発者、、、

グラフィックデザイナー
記事内の画像素材や誌面レイアウトなどの制作を依頼する。

ディレクターという立場上、デザイナーと相談したり、時にはアドバイスをする必要があるが、川崎はデザインの専門知識をほとんど持っていない。

的確に要望を伝えれるよう、今はデザインの知識を勉強している。

カメラマン
商品の撮影や、取材記事の制作の際、一緒に仕事をする。

商品の魅力を的確に伝えるために、ビジュアルにもこだわりたい。

「どうやって、届けるのか」
カメラマンとの打ち合わせにも、密度の濃さを大切にしている。

このように、川崎は色んな立場の人と仕事をする。
これは広告代理店の特徴かもしれない。

川崎は、色んな人と関われるのが楽しい、と笑顔で答えた。
川崎はもともと、色んな人の価値観に触れたり、人のために動くことが好きな性格。この働き方は、川崎にとって合っていたようだ。


事業会社と広告代理店の違い

事業会社のマーケター(PR課、宣伝課)を見ていると、色んな人とのやり取りが膨大で、自分の会社や商品のことをじっくり調べたり、自分で手を動かしたりする時間がなさそうだと言う。

商品を知り尽くし、企画を提案することが自分たちの仕事だと、川崎は最近感じている。

社内の目で自分たちの会社・商品を客観的に見ることが難しい事業会社に代わり、外側からの視点を提供する役割に応えたい。「一般のお客様から、どういうイメージを持たれているのか」という視点を提供することも代理店の仕事である。


積極的な同期たち

川崎がデスクで仕事をしていると、後ろから声をかける人物が。
彼女の同期の田中(仮名)だ。

田中は大の映画好き。
映画を語らせると、社内で彼の右に出るものはいない。
彼と少し雑談をして、また仕事に戻る。

川崎には4人の同期がいる。
入社当初、先輩たちに積極的に質問をする同期たちを見て、焦りを感じていた。先輩から基本は教えてもらえる。しかし、自分からもっと積極的に質問に行かなければ、同期たちに突き放されてしまう。

穏やかなタイプの川崎は、先輩に質問をすることを躊躇してしまっていた。
入社当初は本当にしんどかった。

だが、先輩とも仲良くなった今は積極的に質問ができるようになった。
質問をする。単純だが、人によっては大変なことだ。


撮影や出張

川崎には2~3ヵ月に1度、撮影や取材の仕事が入る。
クライアントの新商品・商品リニューアルのための商品撮影(物撮り)や、インタビュー記事制作の取材だ。

取材の場合、たいていは現地(相手が働いている職場や家など)まで出張だ。社内のチームメンバー2~3人と、社外(協力会社)のカメラマンと共に、現場へ向かう。

直近の撮影出張では、静岡県に行った。
出張に行くときは美味しいものを食べて帰るのがお約束らしく、静岡県の有名スイーツ店でケーキを食べて帰ってきた。甘いものには目がない。


残業が生まれるのは、待つ時間

18時30分。
川崎は待っていた。
クライアントからの連絡を待っていた。
制作した構成案のチェックを依頼しているのだ。

待っている間は余計なことを考えてしまう。
「あのコピー、もっとこうしておいた方が良かったのでは?」
「あのデザイン、やっぱりあっちの方が良かったのでは?」
キリがないと分かっている、でも考えてしまう。

定時は18時。
今業務を終わってもいいのだが、今日中にデザイナーへ連絡をしたい。
だから、もう少し待ってみる。

クライアントは、大手メーカーのマーケター(PR課、宣伝課)。
彼らも日中は多忙なので、20時くらいに折り返しの連絡が来ることもしばしば。そうなると、川崎の残業時間も増えてしまう。

また、待つ相手はクライアントだけではない。
デザイナーに制作を依頼することもあるので、デザイナーの仕事も待つ。

広告代理店のディレクターは「待つ」ことが多い仕事だ。

広告代理店には、繁忙期と閑散期がある。
一般的なクライアント企業の決算期である3月と 9月が繁忙期で、残業が多くなる。川崎はまだ1年目でほとんど残業はないが、先輩のなかには22時ごろに帰る人もいる。


社内コンペの準備

19時にクライアントから連絡が来た。
デザイナーに連絡を入れると、今日の仕事はひと段落つく。

しかし、まだ帰らない。
近々、若手社員向けの社内コンペがある。
社内でチームを組んでお題に沿った企画書を提案する。
だから、最近は業務の後に社内コンペ用の企画書をチームメンバーと一緒に作成する。(川崎の会社では、コンペの準備にも給与が支払われる)

川崎は同じ部署の2年上の先輩と5年上の先輩とチームを組んでいる。今回のお題はペット製品。初めてのコンペ参加だけあって身が入る。

2年上、5年上の経験の差は大きかった。
お題となる商品への徹底的なリサーチ、鋭い切り口からの市場分析。先輩たちについていくのは大変だったが、とても勉強になったそうだ。

<後日談>
川崎のチームは見事社内コンペで優勝し、賞金を獲得した。


将来の夢

20時30分。
川崎は退勤を記録して、オフィスを後にする。
最後に、将来の夢を聞いてみた。

「誰かの伝えたいを広めるお手伝いができるようになりたい」

いい商品なのに伝わっていない、これが色んな分野で起こっている。

今は自分ひとりで出来ることが少ないけど、最終的にはひとりでディレクション(※)を回せるようになりたい。

※ 広告制作における品質や進行全体の管理を行う業務。川崎の職場の場合は、デザイナー、カメラマンなど各スタッフの仕事の内容のチェックや進行管理のほか、クライアントに対するプレゼンや説明資料作成、予算の調整などを一手に担う。これらが一通りできるようになると、ようやく一人前といえる。

そのために、今は業務の中で、積極的に色んなことを学んでいる。
例えば「ラフ(大まかな画像イメージのこと)をどういう風に見ればいいのか?」といった手法を知ると、成長を実感できる。

小さなことでいい、
昨日の自分よりも、今日の自分。

毎日、確実に、成長しているという実感を得ることができている。
それが、学ぶことがたくさんある今の仕事のやりがいだ。

もっとインプットをしたいと思っているが、
研修が終わって業務に入ってからというもの、インプットをする時間があまり取れない。最近はそういうインプットの時間を計画に組み込もうとしている。

ただ、仕事だけでは得ることのできないインプットもある。
特に、企画を考える今の仕事なんて、なおさらだ。

だから、休日はよく遊ぶ。
平日も残業はあまりしたくない。
趣味のダンスレッスンに参加したり、新しい場所へ遠出したりするのも、
最終的には仕事につながると考えているからだ。

就活生に向けて


自己分析って、どうすればいい?


自己分析。
考えれば考えるほど、自分が分からなくなっていく。
多くの就活生が一度は頭を抱える悩みではないだろうか。

悩んでいるときには、周りに相談するのも手だ。
案外、周りの方が自分のことを客観的に見てくれている。

事業会社が広告代理店やコンサル会社にアドバイスを求めるのも、自社のことを客観的に捉えることができるから。

自分の外側からの視点で自分のことを分析することが、就活でも大切だと言えそうだ。

マーケティング職の企業をどう選ぶべき?


マーケティングができる企業は、大きく分けて事業会社と代理店がある。
自分の適性に合わせて、どちらの企業で働くのかをまず考えるといいそうだ。

事業会社は、1つの商品やブランドについて、何回も何回もマーケティング施策を回して、という仕事のやり方。何かのプロフェッショナルになりたいという人は、事業会社の方が向いているという。

代理店は、色んな商材を、色んなマーケティング手法を取り扱う。幅広くマーケティングというものに携わりたい人は、代理店の方が向いているという。

さいごに

本記事を読んで、就職先・転職先としてマーケティング職に興味がわいた人もいるかもしれない。現場の実態を知ってイメージと違うと感じた人もいるかもしれない。これは、あくまでも一人のマーケターの例であるが、嘘のないリアルでもある。ぜひこの記事を通じて、マーケティング職やマーケティングとは何か、について考えるきっかけになれば幸いだ。

もっとマーケティングのことが知りたい、マーケターやコンテンツクリエイターの現場を詳しく知りたいといった方におすすめなのが、12月4日から12月10日まで開催される「CONTENT MARKETING DAY2023」だ。

ここでは、すでに様々な業界で活躍しているマーケターの話が期間中ならいつでも聞くことができる。このnoteの読者におすすめのコンテンツがある。

・「めちゃコミック」で漫画コンテンツの販売や制作を行っている「株式会社アムタス」のマーケティング担当者が語る、漫画業界のマーケティング

・フリーランスで活躍する女性コピーライターが語る、AI時代でのコピーライティング仕事論

・マーケティング業界を代表する専門誌「Web担当者Forum」と「MarkeZine」の女性編集長2人が語る、生成AI記事の「今」と「これから」

・最先端のAIテクノロジー製品のマーケティングを担当している「日本マイクロソフト株式会社」のマーケティング担当者が語る、マーケター向け最新のAI機能

さらに、マーケティングに興味のある学生に向けたコンテンツも充実している。これもいくつか挙げてみると、

・累計600人の就活生の相談実績のあるキャリアコーチによる講義
・仕事のやりがいや楽しさについての、業界先人のインタビュー
・自分に合った企業の選び方 

効率的に多くのマーケターの話が聞けるチャンスだ。
企業選びにおける自分の切り口を見つけよう。


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