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読んで良かった本5冊(ミステリー編)


本の魅力は、本来であれば出会う/経験するはずのない人生/感情を疑似体験できるところだと思う。
友達が少ないあまり全校生徒800人の小学校で当時小学二年生にして図書貸し出し数トップになってしまった私が、最近読んでよかった本を紹介する。
ジャンルは主に小説/エッセイ。

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百年法(角川文庫)
山田 宗樹

とってもおすすめである。
原爆が6発落とされ敗戦した日本は、アメリカ発の不老技術“HAVI”を導入。“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は寿命が100年に制限される“生存制限法”も併せて成立していた。いよいよ100年目の“死の強制”が間近に迫る。
死にたくない。死にたくない。もっと生きたい。
永遠の若さと共に生きる権力者のエゴ。未来の日本のために人口の代謝を望む一部の人々の思い。
経済衰退、少子高齢化、格差社会…現実世界でも目を背けたい問題を真正面から突き付けられる。先送りのツケが回ってきた我々は、問題にどう向き合うべきなのか。生きるとは何か。人生の目的とは何か。

向日葵を手折る
彩坂 美月

季節と情景の描写がすがすがしいほどにリアル。緊迫した場面の筆致が鮮烈である。ミステリーとはいえど、登場人物間の関係の展開も見もの。
父親の突然の逝去をきっかけに山形の集落に引っ越した小学校6年生の高橋みのり。学校にも慣れてきた。男子がふざけて女子がきいきいと注意する。そんなありきたりな掃除の時間。クラスメイトの女の子が怒った勢いで言った「そんなことしてると向日葵男がくるんだからね!」。この一言で教室中の時間が一瞬止まり、みんながおびえた表情になる。この不穏な空気の理由を転校生のみのりは知らない。心にモヤモヤを抱えたまま迎える夏。みのりに迫る暗い影。
思わず後ろを振り返りたくなる。

ファーストラヴ (文春文庫)
島本 理生

最近映画化されたらしい。法廷ものにちょっぴりロマンス。展開と登場人物の内省のバランスがちょうどよい。登場人物のパーソナリティや生き方がありありと浮かんでくる。
父親殺害の容疑で逮捕された女子大生。検事に発した言葉は「動機はそちらで見つけてください。」。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?彼女の痛々しい生い立ちと確執が明らかになってもなお、彼女は本当に殺人罪に問われるべきなのか?主人公は臨床心理士の立場から事件を追う。

盤上の向日葵
柚月裕子

気味悪さ・焦燥などの感情描写がとてもリアルで迫りくるものがあった。マイナスな感情を持った時の心臓の感覚を思い出す。
埼玉県の山中で白骨死体が発見された。そこに残された遺留品は名匠の将棋駒。一方で、将棋界では、ビジネスマンから転身した天才棋士が、世紀の一戦に挑む。最後ぎりぎりまで、もどかしいほどに結末の予想がつかない。人間の醜さ。欲望。才能。嫉妬。軋轢。憎悪。
衝撃のラスト。衝撃と切なさが混じりあう。

イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ

「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)でもう一度読み返したくなる!」がウリのロマンス兼サスペンス小説。実際読み返さなかったが、読み終わってからしばらくは、あっ、これも伏線だったのか、これとこれがつながってたんだ、と新たな発見があってするめのような本である。
数合わせでいやいや参加した合コン。そこで出会った子への一目ぼれ、一緒に過ごす幸せな日々。一時交わって並行に走っていたかに思われる運命のレールは時間がたつにつれて離れていく。
恋愛とは、恋愛それ自体に価値があるのか。それとも、大人になっていく上での単なるからっぽなイニシエーション(通過儀礼)なのか。



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