Clytie

大学生 周りの人たちが大好き

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最近の記事

日曜夜、月の見える東京駅丸の内駅前広場で

TGIF、そんな気分じゃない。 三時間前に届いたメールで、第一志望の企業の最終面接に落ちたことを知ったばかりの今夜だった。 乗り越えるべき障害が多いほど人生は面白くなる、そういう人もいるけれどそんなのは所詮成功しかしなかった人の高みの見物だ。 大学四年生五月の今まで、おおむね上手に生きてきた方だと思う。 首都圏ではないけれどド田舎でもない、都会の波にもまれないながらにもある程度の教育と教養を得られるような、ちょうどいい地方都市で育った。 人とかかわるのも得意だったので

    • 恋人がいない状態は不十分な状態なのか~ひとりのアセクシュアルとして~

      大学にも慣れてきて、仲の良い友達が次々と恋人を手に入れている。 親友に至っては、ターゲットの子を手に入れるため飛ぶ鳥を落とす勢いで垢抜けており、周りを驚かせている。長年側で見ていてもびっくりするほどだ。 最近、原宿のカリスマ的ポジションの美容室でイメチェンしてきたらしく、周りからの評判も上々である。本気で頑張っているのを知っているので、実ったらいいなぁと応援している。 友達との夜の電話でみんなのうわついた話を楽しく聞いていると、自然と自分にも番が回ってくる。 自分は特

      • 母の日に母が濃厚接触者になった話~美しい惰性~

        応援していたネットメディアの代表理事がセクハラ・性加害で解任された。 Twitterやネットニュースをひらくと、自分なりの正義を振りかざした人たちによる火まつりが行われている。 人を信じたくない。信じられない。 ああ、どうにも、不安定だ。 いつもちょっと届かなくて いつもちょっと間に合わなくて 風に吹かれて/クリープハイプ 世は母の日。 不景気な顔をした百貨店諸々が、売れ残った薄桃色から紅の商品に片っ端から紅白の割引シールを張り付けている。 コロナをうつせない

        • 読んで良かった本5冊(異性とのかかわり編)

          Photo by yuriponzuuさん 恋愛・性という言葉がうまく説明できないので異性とのかかわりを主に描いた本、というカテゴリで紹介する。 ※Amazonのハイパーリンクを埋めてあります。 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 森見 登美彦古風な文体と物語の軽快さが非常にくすぐったく、読んでいて楽しい。 人間のしょうもない煩悩をここまでやるかというくらいに難解に表現する。カオスである。 ”侃侃諤諤(かんかんがくがく)”という単語が小説の中で使われているのを初めて見て興奮

        日曜夜、月の見える東京駅丸の内駅前広場で

        • 恋人がいない状態は不十分な状態なのか~ひとりのアセクシュアルとして~

        • 母の日に母が濃厚接触者になった話~美しい惰性~

        • 読んで良かった本5冊(異性とのかかわり編)

          読んで良かった本3冊(静謐な小説編)

          簡潔に。 ※ハイパーリンクを埋め込んであるのでAmazonに飛べます。 ユリイカ―EUREKA 青山 真治 決して派手ではないが異様にリアルで、美しい。 バス運転手とひと組の兄妹はバスジャックに遭遇し、3人で生き残った。しかしそれぞれが事件で心に深い傷を負う。 傷によって綻んで、崩れていく家庭。ひとりぼっちで生きていく。あの事件のことは何もかも忘れたい。でも、世間が忘れても、時代が変わっても、傷は癒えずにふとした瞬間にうずく。 人の痛みに寄り添うこと。人の痛みがわかること

          読んで良かった本3冊(静謐な小説編)

          読んで良かった本5冊(ミステリー編)

          本の魅力は、本来であれば出会う/経験するはずのない人生/感情を疑似体験できるところだと思う。 友達が少ないあまり全校生徒800人の小学校で当時小学二年生にして図書貸し出し数トップになってしまった私が、最近読んでよかった本を紹介する。 ジャンルは主に小説/エッセイ。 ※Amazonへのハイパーリンクを埋め込んであります。 百年法(角川文庫) 山田 宗樹とってもおすすめである。 原爆が6発落とされ敗戦した日本は、アメリカ発の不老技術“HAVI”を導入。“永遠の若さ”を得た日本

          読んで良かった本5冊(ミステリー編)

          かっこ、カッコ、()

          もともと何もなかったはずのところに、 【】 囲いができる。 すると何もなかったはずの囲いと囲いの間に、 空間が生まれる。 内容がないだけで、空白が存在するようになる。 空気しかなかったはずなのに、ドーナツがあるだけで、一部の空気は穴になる。 穴とは何か、みたいな論争があったような気もする。 もともと何もなかったはずなのに、 囲いの種類によって生まれた空間の雰囲気も違うのは面白いと思う。 【 】 ( ) [ ] 《 》  「 」

          かっこ、カッコ、()

          だけかしら

          私の住むアパートはすぐにブレーカーが落ちる。 ドアへと続く階段の手すりが錆び切った昭和建築、隣人の観ているCMがわかるほど壁の薄い木造住宅の運命だろうか。 同時に使える家電は3つまで。キッチンの照明、IH、炊飯器。これにケトルを追加しようものならすぐにガシャンと全てが落ちる音がする。そしてすぐ闇だ。気をつけてはいるのだけれど結構な頻度でやらかしてしまう。 なぜかそのたびに、 自分が全部否定されたような、自分の無力感を突きつけられるような気持ちになる。 こんな小さなこ

          だけかしら

          自分は人とは違うのかもの気持ちととみんなと一緒にいたいの気持ち

          マイノリティであること マジョリティもマイノリティも、多様性を形作る大事なピースである。性別・人種・門戸にかかわらずインクルーシブな社会であってほしいし、そういう社会を作っていきたい。 なんかずっと変だな、合わないな、と思っていた。 いざ自分がマイノリティ、多数ではないタイプだと気づくと、大きな疎外感と不安感に襲われた。生きづらさに気づいた。 この生きづらさを抱えながら懸命に生きている人は美しいと思った その必死さを決してへし折ってはならないと思った 自分が誰かを

          自分は人とは違うのかもの気持ちととみんなと一緒にいたいの気持ち

          another choice

          大学受験で、幸運なことに、いくつかの魅力的な合格校から進学先を選ぶことができた。そして最近、内省する時間が多いので過去の”選んでこなかった”選択肢について考える。 もし。 今進んでいる道と違うものを選んでいたら。 私は今どんな人間になっていただろうか。 中学二年生。 水泳で関東大会の出場権を得た。嬉しかった。しかし私は同時に、同時期に行われる市のオーストラリア研修にも合格していた。本格的に水泳を始めたのが中学に入ってからだったので、幼少期から続けている子よりも水泳に

          another choice

          祖父の話

           父方の祖父は、一緒に外食するたび、会計のおばちゃんに「この子、市の広報に載った子だよ」とさも自分が特集されたかのように話しかける。この慣れた物言いから推測するに、きっと私のいないジムでも、行きつけのコメダ珈琲でも、会う人会う人に言っている。二年前からずっと。買いたてのスマホで誌面を撮って、わざわざL版印刷して額縁に入れてくれた。雑誌の予備、手元に5冊も残ってるんだけどね。    母方の祖父は野球と囲碁が好きだ。最近Youtubeを楽しんでいるらしいのでパソコンのブックマーク

          祖父の話