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マネージャー育成不要の組織戦略

2007年に創業したクジラ。5人前後の組織規模で、とにかく人の入れ替わりがひどかった。

お金の苦労より人の悩みに苦しんで廃業すら考えた。

2012年に大きな戦略転換を決断し、たくさんの試行錯誤を経て、今では離職率も低く、毎年新卒も採用できるようになった。

2014年に新規事業としてSEKAI HOTEL(旧 Otomari)を立ち上げ、現在は役員・社員・内定者インターンを含めると27名、平均年齢は27歳という若手中心の組織に生まれ変わった。

指示待ち社員を生まない。

今のクジラ/SEKAI HOTELの組織的な特徴はこの通り。

・役員、社員、内定者合計27名
・平均年齢27歳
・5年連続新卒採用
・新人研修ナシ
・新卒組比率52%(内定者含む)

全く違う組織に生まれ変わることができた。新人研修ナシというところにも繋がるが、指示待ちの社員は1人もいない。

毎年行うKUJIRA Dayという入社式は、前年入社メンバーが企画・運営をするので、僕は何もしなくていい。


コーポレートサイトの管理は入社2年目のスタッフがやってくれてるし、

インターン時代に事業開発したスタッフや、入社3年目でSEKAI HOTELの事業責任者になったスタッフもいる。

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“見て盗め“は悪なのか。

「いつまでも古い考えじゃダメだ」という話で必ず出てくるのが“見て盗め“という話。

離職率やパワハラに注目度が高い昨今、いろんな企業が研修コンテンツの見直しやランチ会への経費補助など福利厚生の充実にも力を入れているし、

教える側にもコーチングやマネジメント論を懸命に教えている。

就職した頃の僕は、いわゆる落ちこぼれで全然結果が出なかった。先輩が教えてくれることも大半が根性論であったため、自分が教える側に回ったときはしっかりノウハウを教えようと誓っていた。

しかし、いざ教える側に回ってみると全然うまくいかない。ノートにぎっしりまとめたノウハウもなかなか伝わらないし、「やれば済むこと」も一向に実践されない。

そんなジレンマに悩まされながらも厳しく社員に向き合っていく中で、結果を出すようになったスタッフもたくさんいたが、やはり辞めてしまう。

「やっと感覚を掴んでくれたのに。。」という悔しさを繰り返すうちに、僕が教えてきたノウハウは大して重要でないことに気づいた。

僕のノウハウをきっかけに本人がコツを掴むことで、にわかに輪郭を見せ始めた一人前としての個性がひどく魅力的で、本人にとっても唯一無二の財産であることに気づいた。

愚痴にしたくないから言わないだけで、結局のところ本当に大切なことは人に教えてもらうのではなく、本人が身につけていくモノなのだ。

先輩の引き出しを借りる。

本当に成長を必要とする場面や、自身に経験が無い場面でパフォーマンスを発揮するには先輩(熟練者)の引き出しをうまく活用していくべきである。

後輩から見る先輩とは「好かれる先輩」と「好かれない先輩」に二分されがちだが、好かれる先輩が広く公開している引き出しの中身は、本当に価値の高いモノだろうか。

それよりも、先輩(熟練者)が持っている「鍵付きの引き出し」にこそ自分の成長に本当に必要な情報や、ビジネスにおける的確な判断のヒントが詰まっているはずである。

事実、僕が最初に就職した会社の社長は当時嫌いで仕方なかったのに、今大切にしているノウハウやルーティンのほとんどはその社長から学んだモノばかりである。
※今は一緒に銭湯に行くほど仲良しです。笑

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どんな先輩(熟練者)や上司の下につくかが良く話題に上がるが、自分を助けてくれたり成長させてくれるのは、優しい先輩そのものではなくて、鍵のかかった引き出しに詰まっている様々な知恵だと思う。

鍵の正体。

いかにして、その鍵付きの引き出しを開けてもらうか。

僕は愛嬌こそこの鍵になりうるモノだといつも思っている。

愛嬌と言うと生まれつき持っているというような才能とか向き不向きを連想させるが、僕は努力次第であると思うし、事実努力で解決してきた。

「営業のことを学びたいので、オススメの本教えてください」と言う後輩と、「営業について3冊読んだのですが、●●の部分について3冊とも言っていることが違うのでオススメの本教えてもらえませんか?」と言う後輩と、あなたならどちらに一歩踏み込んだアドバイスをするだろうか?

某大手企業の会長は、決裁がほしくてやってきたスタッフに対して「このような状況ですが、いかがなさいますか」と聞かれるとその場で帰すそうだ。

「今の状況は●●でして、選択肢はAとBとCがあり、私はBが良いかと思います」くらいの具体性が無いといけないということだ。

特定の分野における一流プレーヤーはステージが上がるほど人数が減るので、高度な議論を引き出そう(引き出しを借りよう)と思ったら、

先輩(熟練者)とのコミュニケーションにもしっかりとした工夫がいるし、相手はいちいち丁寧に目線を合わせてくれるほど暇でもない。

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↑当時内定者からのメッセージ。

では、先輩に好かれるためや気に入られるためのキャラ作りが愛嬌なのか?そうではなくて、僕はこのような行動がすべて愛嬌に繋がるモノだと思う。

・「●●のようにしたいのですが」と先輩に相談する(仮説)
・本の持論を示して、先輩オススメの本を聞く(検証)
・未経験のプロジェクトの下調べをして会議に参加する(予習)
・先輩の仕事の資料を作成する(準備)
・先輩の話を聞くときにメモを取る(姿勢)
・一息ついたタイミングで先輩にコーヒーを出す(気配り)

「先輩の資料作成なんてしたら仕事が増える」と思っている若手もぜひチャレンジしてほしい。

先輩(熟練者)の目線の高さを意識しての資料作成は、成長スピードを加速させるし、その資料を見た先輩もまともな人間であればきっと文句(アドバイス)の一つも言ってくれるだろう。

メモを取る場合はスマホやPCより、実際に書く方が良い。縦横無尽に情報をストックできるし、振り返る時も自分で書いたメモは意外に検索できるものだ。そして何より、教える方はメモを取る姿勢に弱い。

「先輩にコーヒーを出すなんて、媚を売ってるだけ」と思われるかもしれないが、社内の良質な人間関係構築は立場に関係なくみんなで取り組むべきだし、そもそも同僚に敬意や感謝を行動で示すことができない人には成功も成長もたいして訪れない。

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先輩とは違うことを言うもの。

高いステージに存在する鍵付きの引き出しの中身なんて、みんな違うに決まっている。

いくら社内とはいえ、先輩(熟練者)が後輩に教えることを揃えていくことなんて難しすぎる。

自分なりの知恵を蓄積してきたからこそ、教える側にたどり着いた先輩(熟練者)のノウハウは違って当然である。

新卒のスタッフに「クジラでDIYのYouTubeチャンネルつくりたいなぁ」と頼んだら、動画編集初心者とは思えないクオリティで提出されてきてびっくりしたことがある。

本人に聞くと「良さそうな動画を探して、編集方法も調べて、とりあえず一つ作って、●●先輩に聞きました」と言う。

つまり、

仮説:検索ワードの選定
予習:編集方法を調べる
準備:とりあえず作る
検証:先輩に聞く

というプロセスを取ったわけだ。きっとWEB上で学んだことと先輩がくれたアドバイスは違っただろう。

しかし、混乱することはない。先輩は正解を持っていないのだから。

大切なのは、世の中に無数にある先輩(熟練者)の鍵付きの引き出しをいかに自分の仮説と組み合わせて使っていくかであり、使用料も0円で使い放題なのだから。

大切なのは教える側のノウハウではない。

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僕は教える側のノウハウを重要視することを止めて、“教わる側の礼儀”と称して、この愛嬌スキルを伸ばす努力を推奨している。

僕自身も先輩経営者にアドバイスもらう時は、いかに貴重な体験談を引き出すかを考えて、愛嬌たっぷりの戦略を立ててアポイントを取るようにしている。

クジラ/SEKAI HOTELの教える側のスタッフも時折「こういう部分教えるのって難しいですよねぇ」と失敗談(検証)を持ってくる。高いステージでの議論がスタートする瞬間だ。

先輩だって同じ人なんだから、等しく後輩を導けるわけではない。

どうせなら、失敗談を披露してもらって、大切にしている人脈・人財も紹介してもらって、メシも奢ってもらうくらいで丁度良いと思う。

すべて愛嬌という“教わる礼儀”が為せるモノばかりである。

個性も違う、特定スキルも違う、世代も違う“教える側”を揃えることに躍起になるよりも、世の中に存在する鍵付きの引き出しを使い倒せる愛嬌スキルを伸ばしていく努力を組織全体で奨励していく方が、組織戦略としてもはるかに効率的ではないだろうか。

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