見出し画像

「休みやすい環境」と「助け合える職場」が女性活躍のカギ

くればぁでは、この度、「女性活躍推進委員会」を発足しました。これまでも、「あいち女性輝きカンパニー」の認証(愛知県)や「子育て応援企業」の認定(豊橋市)を取得するなど、女性が働きやすい環境整備に取り組んできました。
なぜ、いま新たに女性活躍の取り組みに注力するのか、石橋社長に聞きました。


――「女性活躍推進委員会」とはどんな役割でしょうか?

くればぁは女性が多い会社なのですが、今以上に女性社員の声を反映して制度や仕組みにしていこうと思い、この度、女性活躍推進委員会をつくりました。

結婚や出産、子どもの進学など、人生の中では何度も節目があります。もちろん、男性も女性も同じだけ節目はあるはずなのですが、それによる生活への影響というのは、どうしても女性に偏りがちです。
そうした節目ごとに生活への影響がある中で、仕事か家庭かどちらかを犠牲にして頑張るのではなく、楽しく生き生きと仕事をできることが、家庭やプライベートも充実させる一つの要因になると、私は常々思っています。

でも、ライフステージが変わるたびに仕事を続けられなくなってしまったら、とても残念なことです。子どもが生まれる、孫が生まれるというのは、とてもおめでたいことなのに、それがきっかけとなってキャリアを諦めなきゃいけないというのは、女性にとっては大きな問題です。
仕事を続けたいのに、そこから一旦離れる選択をしないといけないとしたら…… 子どもを持つことが自分の人生の足かせになってしまうというのは、とても違和感があります。
産休育休は当然ですが、一旦仕事から離れたとしても、またすぐに戻ってこられるような安心できる場所として会社が存在できるといいなと思っています。

そのために、会社としてはより多くの社員の意見を聞いていきたいですし、社員自身がそれを自分ごとにして良い職場をつくっていけるといいなと思っています。
それをきちんと仕組みにするために、社員で構成されている委員会を作る必要があるんじゃないかと思って、今回設置しました。

――推進委員になられた社員さんはどんな方でしょうか?

まずは立ち上げなので、社長であり子育て中の私が発起人として委員長となり、他に3名の女性社員が委員になっています。
一人目は、お子さんを出産してからパートで入社し、在職20年以上のベテラン社員です。今はお孫さんが生まれて、同時に自分の親の介護も考えなきゃいけない世代の方です。二人目は、入社5年目で、在職中に2人目の出産があり、産休育休から復帰した方。三人目は、パートで入社されて、お一人目のお子さんが高校生になったタイミングで正社員に転換した方です。10年ぐらい勤めています。

仕事や会社に慣れている人に戻ってきてもらった方が会社としても助かるので、出戻りや復帰の相談をしてくれることが、すごくありがたいですね。

――なぜ、いま新たな取り組みを始めたのでしょうか?

いろいろなライフステージにあるという声が、社内でよく聞かれるようになっていたからです。産休育休を取る社員が増えてきただけでなく、上の世代ではお孫さんが生まれる方が重なるんですよね。介護について考え始めている方もいます。

ライフステージの変化に不安を感じる社員がいる以上、これは制度化した方がいいなと思いました。私個人の意見でその都度いろいろな制度を作るよりも、社員の意見を吸い上げながら作っていった方が、より働きやすい環境が作れるんじゃないかなと思ったので、女性活躍推進委員会を作りました。

また、昨今、「女性活躍」って盛んに言われていますよね。私が社長になった5年前から当社でも意識的に取り組んできて、「あいち輝きカンパニー」や「子育て応援企業」という女性の活躍促進に積極的な企業としての認証を取ったりもしました。
でも、こうした認証や表彰の評価項目を見ていると、世の中で議論されている女性活躍推進のあり方というのは、女性が少ない職場を前提にして、どうやって活躍する女性を増やすことができるかということがテーマになっている印象でした。

一方、くればぁはもともと女性社員の方が多くて、特に縫製の製造現場では、ほとんどが女性スタッフです。なので、世の中の女性活躍の議論の前提となっている状況や課題とは異なる部分があり、推奨されている取り組みや制度などについても、そのまま当社に当てはまるわけではないケースもあります。

だったら、うちはうちにあった女性の活躍の仕方というのがあるんじゃないかと思うようになりました。世間で言われている女性活躍推進のやり方に当てはめていくのではなく、くればぁ独自の女性活躍の仕組みをきちんと整えた方がいいなと思っています。

――女性が多い会社の女性活躍の特徴……それはどういうことでしょうか?

たとえば、成果とか数字的な目標をモチベーションにした組織づくりというのは、あまり合わないなっていうのを感じたんですよね。

営業部では売上や商談の目標数字っていうのはあります。仕事の性質的にもそうですし、男性メンバーの比率が高いので、その方が風土的に合っている部分もあります。一方で、製造に携わるスタッフは多くが女性ですし、会社全体としても女性の比率が高いのがくればぁの特徴です。

女性ならではなのかもしれないですが、働きやすさとか仕事のモチベーションというのは、仕事の結果よりもプロセスの方に求めている社員が多い印象です。同僚との一体感だったり、何のためにこの仕事をしているのかというやりがいだったり。
特に製造の現場にいるスタッフの場合、お客様と直接接する機会がほとんどないので、誰かの役に立っている実感が持ちにくいという事情もあります。やっぱり、感謝されることって、モチベーションにはすごく重要だと思うんです。

女性が多い会社だからこそ、そういった女性ならではの感覚というのも大事にしていきたいと思いました。

――石橋さんが社長を継いで、女性目線で意識したことなのでしょうか?

私の父や兄が会社を引っ張っていた頃は、目標に向かって突き進んでいくようなリーダーシップで、経営や組織づくりのスタイルも男性的な雰囲気があったように思います。

私が社長に就任する前から現場のスタッフは女性が多い会社でしたが、社内のムードとしては仕事の成果を追い求めるというより、みんなが働きやすいようにというのを考えて、その結果いい仕事ができているという雰囲気を感じていました。

それに、私は経営の経験もなく、自分だけの力ではどうにもできないというのは自覚していたので、支え合える、助け合える会社にしたいと思っていました。

だから、みんながどんな顔をして働いているのかを意識していました。楽しんでいるのか、やる気になっているのか、そういった職場の雰囲気やモチベーションが大事で、そこがちゃんと伴った形で目標を達成できる会社にしたいと考えました。

――具体的にはどんなことに取り組んだのですか?

社長になってからは、もともと多くいる女性のポテンシャルをもっと引き出すような仕組みやカルチャーをつくるよう意識してきました。

例えば、530(ゴミゼロ)運動という地域の環境美化活動に社員で取り組んだり、豊川リレーマラソンへの協賛や出場、豊橋総合動植物公園の動物スポンサーになるなど、地域貢献の取り組みを充実させました。
自分のいる会社が地域から頼りにされているという実感を持てる機会になっていると思います。

また、新たにミッション・ビジョン・バリューを策定しました。「地球に優しく、街に優しく、人に優しく。」というミッションに表現したように、モノを作って売るだけの製造業ではなく、世の中に価値をつくる仕事なんだという意識を持てるような言葉にしました。

昨年発売した「魔法のポケット」「魔法の防水シート」についても、社会に役に立つ商品をつくるというコンセプトから、防災商品の新規開発に取り組みました。試行錯誤の開発でしたが、苦労しながらも生き生きと仕事をしている様子が感じられました。

それらの成果もあってか、実際に定期的に行っている従業員エンゲージメント調査でも、やりがいや社会貢献の意識は年々高まっています。

もちろん、割合としては少ない男性社員が活躍しづらい雰囲気になってしまっては意味がないので、女性だから・男性だからということにとらわれず、一人ひとりのモチベーションの源泉を大事にしていきたいと思っています。
女性社長である私の場合は、世間で言うところの女性活躍とは逆の意識を持つように心がける必要がありますね。

――休暇制度などの働き方の柔軟性についてはどう考えていますか?

休みやすい環境は重要だと思っています。女性の場合は特に、家庭の事情による急なお休みってよくありますよね。
うちの社員でも子育てや介護をしながら勤務しているスタッフは多いです。乳幼児の頃は頻繁に病気になって保育園に預けられないということもありますし、小学校に上がったらPTAなどの学校行事で仕事を休む必要が定期的にあったりします。
私自身、二児の子育て中で、この 4月には子どもの病気などで2週間ぐらいお休みしました。

休みやすい環境というのは、休暇制度が整っているかどうかだけのことではないと思います。休む際に仕事をカバーし合える仕組みになっていたり、休むときに心理的な負担がないようになっていることが大事です。
さっき話した「助け合える会社にしたい」というのは、仕事のときも休むときにも必要なカルチャーだと思っています。

ちなみに、くればぁでは有給消化率はほぼ100%です。正社員もパートも、子育て世帯も独身の方も、気兼ねなく休みを取っています。「何で休むの?」という反応が出ることは全くないですね。社員に与えられている当然の権利なので、コンサートに行くとか友達と旅行するとか、みんな自由に休んでいます。

――誰かが休むと仕事が止まったりしませんか? 納期に合わせたスケジュール管理もされていると思いますが…

あらかじめ、誰かが休んだときでも仕事が回るような人員配置になっています。製造、営業、事務などの部署内ではカバーし合える体制になっています。
製造現場を止めることはできないので、「もし2人同時に休んだら回らないので、その時はこっちからフォローを入れるね」という感じで、部署をまたいで柔軟に対応できるようにもしています。

そのために、営業や事務のスタッフでも、入社した最初の3ヶ月間は製造部の現場仕事を経験してもらっています。職人仕事の部分は代わりをすることはできませんが、検品や出荷などの製造サポートの仕事であればある程度はできるようにしています。
それに、製造の現場を知っていたほうが、営業の商談の際にも生きるというのもありますね。

――最後に、休みやすい環境、助け合える職場にするためのコツは何かありますか?

改めて聞かれると、難しいですね(笑)
確かに、私が社長になる前は、こんなふうに休みやすい環境ではなかったように思います。
でも今は、みんながみんな、自分が休む時は自分の仕事を代わりに誰かにお願いして休みます。周りにも「何かあったらこの人に聞いてください 」って言って休んでいっています。

コツではないですが、これって、私がいつも誰かに頼っていることが多いから、自然とそういう雰囲気になったのかもしれません。
私は仕事が進むことが何より大事だと思っているので、苦手なことは得意な人にお願いするし、忙しいときは誰かに手伝ってもらうことに何の躊躇もないんですよね。
それは家庭でも同じで、完璧な母親なんて目指していなくて、夫や双方の両親、家事サポートサービスなど、いろいろ頼りながら子育てしています。

決して意識的に率先してやっているということではないですが、「自分も誰かに頼っていいんだ」という雰囲気の職場になっていけば、私の理想である「助け合える会社」に近づくかもしれません。

最初のうちは、ベテランの女性スタッフが多い製造現場の方で、「ちょっと、手伝ってー!」という声がよく聞こえていました。それがだんだんと、部署をまたいで「手伝ってー!」と声をかけるようになって、そのうち、事務所メンバー内でもそういう声かけが出てくるようになりました。

誰かを頼れるって、ある意味ではスキルだと思うんですよね。誰かを頼る人って、誰かから頼られもするので。そういう関係性の築き方は、チームで仕事をする職場においてはすごく重要かなと私は思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?